ようやく8%の消費税に慣れたこの時期、給料が上がっている実感もなく、お金がない! と切実に感じている人も多いはず。そこで注目を浴びているのが、サイドビジネス(副業)だ。
しかし、「おこづかい稼ぎ」くらいに軽く考えていると痛い目にあうかもしれない。税理士の田中卓也氏が解説する。
「副業で儲けた場合、税務上は雑所得の扱いとなり、所得税がかかります。ただし、ネットオークションやフリマなどには例外があります。ガンプラやフィギュア、ブランドバッグなど嗜好性の強いものは課税対象となりますが、いらなくなった衣服や食器などを売る場合は課税されません。それは税務上、生活用動産の売却は非課税という規定があるからです」
では、どれくらいの税金がかかるのか?
「年収400万円の会社員が副業で年60万円を稼いだ場合、細かな計算は省きますが、所得税負担は15万8500円になります。各種の控除額によって納税額は上下しますが、この額がひとつの目安にはなるでしょう。ちなみに副収入が年間20万円以上なら確定申告をしなければなりません。期日を守らないと本税に加えて無申告加算税と延滞税が課されます」(田中氏)
次に、知っておかなければいけないのは、職場バレだ。 「最悪の場合は懲戒解雇です。副業を始める前に、会社の就業規則をチェックしましょう」と言うのは『ど素人でも稼げるネット副業の本』の著者・中野貴利人(きりと)氏だ。
副業に関する規定は、会社や組織によって異なる。
「例えば、公務員は公務員法によって明確に副業を禁止されています。銀行員も『在籍中にほかの雇用主に雇われたときは懲戒解雇に処する』とハッキリ書かれているケースが多い。一般的な会社員の場合、少し古いデータなのであくまで目安ですが、09年に労働政策研究・研修機構が実施した副業調査によると、就業規則で副業禁止に言及している企業は43%。ただし、『副業禁止』と明記されていなくても、罰則規定が具体的に記載されていたら、それは副業を禁止している証拠となります」(中野氏)
所得税で職場バレ? バレないための対策とは
もしバレて懲戒解雇を免れたとしても、禁止されている会社なら「減給や停職処分。その後のキャリアにも悪影響が出ます」と中野氏は警告する。しかし、それでも副収入が欲しい場合、副業がバレない方法はないのだろうか?
「接客業などのオープンな仕事はせず、勤め先の社員と接点のない在宅ワークなどを選ぶこと。あとは副収入があることを他人に公言しないことです」(中野氏)
どこから漏れるか分からないのが、人の秘密。他言NGなのは当然だが、黙っていてもバレてしまうことが。それが、先に挙げた所得税だと中野氏は続ける。
「副収入が年間20万円以上なら所得税を申告する必要があります。申告すると翌年度の住民税が増え、会社の給与明細の住民税が増額し、不審に思った経理担当に副業がバレます。住民税の特別徴収(会社が従業員の代わりに納める方式)から普通徴収(自分で納める方式)に切り替える対策も必要です」
最後は、資格の有無。実際に始めよう! となった場合、闇雲に始めればいいわけじゃない。サイドビジネスによっては、資格が必要な場合もある。
「中古品を扱う場合に持っておくといいのは古物商免許。地域によって手数料は異なりますが、自分で手続きすれば約2万円で比較的簡単に取得できます。美術品、衣料、金券など、取扱品目によって13項目あり、それぞれ登録しなければなりません。そのうちのひとつ『自動車商』が取れれば、中古車ディーラーとして開業可能ですが、登録には2台以上の自動車保管場所の証明が必要になります」(ヴィンテージ品を売るM氏)
また、前出の中野氏はこう指摘する。
「ライティング、翻訳、タイピングなど副業に有効な民間資格もありますが、いくら資格や専門スキルを持っていても、自分で案件を取ってくる能力や人脈を広げる行動力がないと仕事になりません。資格を取得することと、資格を生かせる場所をつくることは別の能力であることを理解しておくことも大切です」
ちょっとしたおこづかい稼ぎのつもりで始めた副業で、余計に税金を徴収されたり、本業を失ってしまったら全てが台無し。きちんと調べてから始めることをオススメする。
(取材/奥田圭三郎、頓所直人、興山英雄)
■週刊プレイボーイ19・20合併号「総力特集15ページ やってる人がコッソリ教えるサイドビジネスの表と裏」より