一流企業の社員を長らく見てきた安田氏が明かす「出世する社員」、そして今年の新入社員の特徴とは?

NTTドコモ、バンダイナムコHD、RICOHなど大手企業を中心に数多くの会社で研修を行なってきた株式会社パンネーションズ・コンサルティング・グループ代表取締役の安田正氏。

今まで、日本全国57万人の会社員、さらに1000人以上の役職者に接してきた彼が先月、軟弱若手社員必読のビジネス書『一流役員が実践してきた 入社1年目から「できる人になる」43の考え方』(株式会社ワニブックス)を上梓した。

伸び悩む20代の若手社員は、どうすれば「できる人」になれるのか?  “社員教育のプロ”安田氏にズバリ聞いた。

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―――本、面白かったです! 一流のビジネスマンが新入社員の時から実践していたというルールや習慣がどれもインパクトがあって、かなり刺激を受けました! 中でも、“学生時代より睡眠時間を3時間削れ”“スーツを着てから朝ごはんを食べろ”“ブラック企業でもいいので正社員になれ”といった提言は、いい意味で、今の時代に逆行していて、背筋が伸びる思いがします!

安田 ハッハッハ! たしかに、この本で書かれてあることは、多くの若い社員にとって説教じみた話に聞こえるかもしれませんね。今、世の中に自己啓発系の本って溢れているじゃないですか。そういう本を片っ端から読みましたが、どれも結局は“敗者にならないための本”なんです。でも、私が書いた本は似ているようで違う。あくまでこれは“成功者になるための本”。本当に成功者になりたいのなら、この本を手に取ることをオススメしますよ。

―――なるほど! 実際、成功者はこの本で書かれてあるようなことを実践してきたんですか?

安田 もちろんすべての一流役員にあてはまる話ではありません。一流のビジネスマンに話を聞くと、それぞれ違う考え方、ルールを持っていますからね。だから絶対的な決まり事なんてないんです。ただ、彼らには共通した点がひとつだけある。それは20代の時に、自分の「強み」を自分自身で発見し、それに沿って自分なりにルールを作っていたということなんです。

―――ということは、この本で書かれている「43の考え方」は、そのルールの平均値みたいなものなんですね。

安田 そういうことです。

若いうちに“一流”を知ることが重要

――― 一方で、本に書いてある“今すぐ「レクサス」を試乗しろ”“出張先でまず美術館に寄れ”“メニューのない寿司屋に通い続けよ”という安田さんの提言には、どれも「若手社員よ、無理してでも一流を知れ!」というメッセージが込められているように感じたのですが。

安田 そうですね。若いうちに一流を知っておくことは、すごく重要だと思います。車でも食事でも聴く音楽でも。特に車はね、そういう要素が強い。今、車を持たない人も増えているようですが、「なくてもなんとかなる」という考え方の人であったり、「ファミリーカーで十分」という人は、まず出世はできません。

―――うっ……グサっとくるお言葉です。ただ、入社数年の若手社員で最低でも4~500万円するレクサスに乗れっていうのは、ちょっとハードルが高いような気もしますが(苦笑)。

安田 それは「知らない」からそう言うんです。本当にいいものとそうでないものは、本質を知らないと判断できない。そしてその本質であったり、違いを、若いうちからちゃんと知っておいて欲しいんですよ。レクサスだって、無理すれば決して買えないものでもないでしょう? 世の中にはローンだってあるわけですよ。とにかく私は、もっと無理をしてほしいと思ってるんです。

―――高いハードルでも無理すれば越えられるだろうと。

安田 そう。で、無理していると、徐々にそれが無理じゃなくなってくる。僕は身体がすごく硬かったですけど、毎日、ストレッチをやっていたら、いつの間にか床に手がつくようになっていた。それと同じです。無理してレクサスに乗っていたら、それが自然と板につくようになるわけです。

―――上質なものに自分が追いついていくわけですね。

安田 そういうことです。ちなみに、僕はテニスをやっているんですけど、自宅からテニスコートまで徒歩5分で着いちゃうくらいの距離で、オープンカーに乗ってエンジンを鳴らして行くようにしています。

今年の新入社員は、去年とまったく違う人種

―――あえて、そうしているわけですか?

安田 ええ。結局、そういう「無駄」が人生を豊かにするというか、モチベーションを上げてくれるということです。20代の時から「こんなんでいいや」と現状維持に甘んじる精神が身に付いてしまうと、仕事に対しても向上心が湧いてこない。

―――若手社員のみなさん、聞きましたか! 現状維持は甘えですよ!

安田 最後に、興味深い話を教えてあげましょう。実は、今年の新人は昨年までとまったく違う人種なんです。

―――どういうことです?

安田 とにかく出世欲が全然違うんです。ここ数年、ずっと新入社員の出世欲は低空飛行を続けていました。私の研修で実施したアンケートでは、出世欲のある新入社員は1割程度に過ぎなかった。しかし、今年の新入社員は8割もの人間が出世したいと思っている。

―――同じ質問、同じデータの取り方をして、そんな違いがあるんですか?

安田 ええ。たった1年で、日本の新入社員の意識はまったく変わってしまった。

―――今年の新人、意識高すぎじゃないですか! 先輩社員からすれば眩しすぎますよ。

安田 眩しいくらいで済めばいいですけど、30代前半くらいまでの若手社員にとってはものすごく脅威になると思います。正直、うかうかしていたらすぐに逆転されるでしょう。仮に、これから若い社員がみんな今年の新入社員のような人間ばかりだとしたら、今の20代から30代前半の人間は追い越されてしまいます。それでも、「出世なんかしなくてもいい」と達観できる人はなら、構いませんけど、そうでない人はもっと欲を持つべきだし、高みを目指すべきだと思いますよ。

(取材・文/コバタカヒト)