未来は快晴か? それとも土砂降りか? 転職先として気になる各業界の現状と先行きをインサイダー&専門家の声を聞いて予測する!
アベノミクスの公共事業、東日本大震災からの復興事業、さらには2020年に向けての東京オリンピック特需も確実に見込まれるとあって、あらゆる業界のなかで最も景気回復が明らかになっているのが建設業界だ。
長年にわたって業界をウォッチし続けている『日刊建設新聞』の中島善明副社長は次のように明言する。
「スーパーゼネコンを中心に、景気は確実によくなってきています。やはり、第2次安倍晋三政権の影響は非常に大きいですね。民主党政権は『コンクリートから人へ』ということで実際に公共工事を抑制しましたから、建設業界はかなり厳しい状況に追い込まれていました。その頃と比べると、かなり回復したのは間違いありません」
民主党政権時代には公共工事の削減と、リーマン・ショックによる景気停滞という強烈なダブルパンチをモロに浴びた建設業界。バブル最盛期に84兆円ほどあったといわれる建設投資額が、2010年は42兆円にまで落ち込んだ。
大手ゼネコンのひとつ、竹中工務店に勤務する中堅社員が苦しかった頃を振り返る。
「ゼネコンといっても、うちはもともと公共工事が少ない建設会社ですから比較的影響が小さかったと思いますが、それでも数年前はとにかく仕事がありませんでした。営業部門が死に物狂いで仕事を取りにいきましたが、その大半は赤字工事。2012年度、うちとしては戦後初めて赤字を計上したほどでした」
バブル期以来の高級割烹接待も
そんな暗黒時代が、自民党政権の復活とともにあっさり終焉(しゅうえん)を迎える。公共工事が戻り、景気回復で民間投資も拡大したのだ。
なかでも、戦後の高度経済成長期に整備した道路や橋、上下水道などのインフラを再整備する需要が高まっている。億単位の高級物件にも買い手がつくマンション建設も好調だ。
「今は仕事がありすぎて、お断りすることもあるくらいです。先日は下請業者から高級割烹(かっぽう)で接待を受ける機会がありましたが、その店を接待に使うのはバブル期以来だと言ってましたよ」(前出・竹中工務店社員)
このような状況に加え、オリンピック特需がさらに建設業界を勢いづかせている。新国立競技場をはじめとする関連施設の建設、道路の整備、観戦客を当て込んだホテルや商業施設など民間投資が増えるのも間違いない。
すでに大手ゼネコンは目の色を変えて、事業獲得の激しいバトルを繰り広げているという。
「大きなものばかりに目がいきがちですが、案内板の設置などもバカになりません。空港や駅、競技場の周辺はもちろんですが、東京に限らず外国人観光客を呼び込みたい観光地でも整備されますから、それらを含めるとかなり大きな需要になります」(中島副社長)
このようにバラ色に染まっている建設業界だが、先行きに懸念材料がまったくないわけではない。
人手不足が深刻に
特に指摘されているのが人手不足だ。技術者を中心に働き手が足りなくなり、将来的にはより深刻な事態になることが予想されている。
「現状ではリタイアした団塊世代が活躍しているので、それほど深刻な問題にはなっていませんが、熟練の技術者が高齢化しているのは紛れもない事実。5年後、10年後となるとかなりの不安があります」(中島副社長)
ある中堅ゼネコン社員は転職先としての建設業界について、こう解説する。
「弊社は今後、新規、転職を含めて従業員を増やしていく方針です。ですから、この業界に転職を考えている人には絶好のチャンスだと思いますよ。ただし、あまり人を増やしすぎるとオリンピック後に不安がないわけじゃないんですけど……」
将来に一抹の不安があるとはいえ、それはどの業界でも同じこと。少なくとも、2020年のオリンピックまでは間違いなく安泰といえるのが建設業界だ。しばらくは日本晴れが続くだろう。
■週刊プレイボーイ36号「総力特集13ページ! リベンジ転職のための業界天気予報」より