不況を脱し、人手不足が深刻になっているという。そこで“下り列車”にしがみついてる人は、思い切って“上り列車”に乗り換えたほうが幸せになれる? そこで、転職先として気になる各業界の現状と先行きをインサイダー&専門家の声を聞いて予測するシリーズ第4回!
よくいわれるように、テレビ業界で働く者は二層に分かれている。テレビ局の正社員と下請けの制作会社スタッフ、両者の待遇は天と地ほど異なっているというのが現実だ。
キー局の社員は平均年収1000万円をラクに超えるが、25歳の制作会社社員は年収250万円。
「朝から夜中までこき使われても、僕らが生み出した利益は正社員の給料にはね返るのみ。このまま30歳になったらどうなるのか、身の振り方ばかり考えていますよ」
そう嘆くのは、テレビ朝日系の制作会社社員。
「番組の制作費は削られる一方です。4月までは僕にも弁当が支給されていましたが、それも削減されました。スタッフの数が減り、それに比例して睡眠時間もどんどん減っていきます」
仕事はハデで楽しいが、激務&薄給で30歳を前に職場を去る者も少なくない。前出の制作会社社員が一縷(いちる)の望みを託すのは“東京脱出”だ。
「つぶしが利かないので、この先もテレビ業界で生きていくしかありません。考えられるのは地方へのIターン。東京での実績があれば、地方局が正社員として採用してくれるかも。地方で古瀬絵理アナのようなスイカップでも嫁にできれば、ウハウハなんですけど」
現実的には難しいテレビ業界より芸能界?
一方、キー局の場合はどうか。35歳のNHK職員が実情を明かす。
「給料の上がり幅が減り、コンプライアンスが厳しくなって経費も自由に使えません。民放さんはもっと大変でしょうね」
ネット社会の到来で、テレビ業界の成長が見込めないなか、天下のNHK職員といえども、危機感はマックスだ。
「テレビ業界は考え方を大転換しないと、先細りするばかりでしょう。テレビにしかできないことを真剣に考えないと。転職? オススメできません。どうしてもテレビ業界で働きたいなら、新卒でキー局社員を目指す。それが叶(かな)わなかった時点で、ネット業界に絞ったほうがいいと思いますね」
このように、テレビ業界への転職は現実的には難しいようだ。それならいっそのこと、テレビに出演する側の「芸能界」はどうだろう?
とんねるず、おぎやはぎ……。人気芸人に脱サラ転職組は意外に多い。ただ、成功をつかむのはほんのひと握り。「無戦RUN」も、頂点を目指して脱サラした結成3年目の若手コンビだ。
阿部篤史さんは元銀行員で、「芸人になって、年収がマイナス300~400万円になりました(笑)」。元工場勤務の武田大知さんも、「バイトしながらなので、収入はフリーターと変わりません」と、やはり金銭面は厳しい様子。
さらに、「今はお笑いブームもどん底に近い状況。ネタを見せるお笑い番組がひとつもないし、ライブも半分近く席が埋まりません」(ホリプロコムのマネジャー・福嶋麻衣子さん)と、業界自体に勢いがないのが現状だ。
8年周期の上昇気流に期待?
そんななか、お笑い芸人を目指すなら、まずは芸能事務所主宰の養成所に通うのが最近の主流。
「僕らも1年間通いましたが、入学時に70人いた同期が卒業時には30人まで減った。人前でネタを披露して、先生から『面白くない』とハッキリ言われるのはすごく恥ずかしいんですよ。でも僕らはサラリーマン経験で怒られ慣れている(笑)。若いコのほうが、辞めるのは早いです」(阿部さん)
脱サラ組ならではの利点は、ほかにもある。
「先輩からは、『今はネタ番組が少ないから、何かキャラクターがついている芸人じゃないとダメ』と言われます。それで今、“元銀行員芸人”というキャラでいこうと、ファイナンシャルプランナーや金融の勉強をがんばっています」(阿部さん)
過去の仕事を、キャラづけやネタに生かすことができるというワケだ。
さらに、今後の業界には明るい光もなくはない。
「来年M-1グランプリが復活するのは明るい話題ですね」(武田さん)
「先輩からは、『お笑いブームは8年に1回くる』とも聞きました。今はブーム後1、2年目。6年後に向けてネタを作りなさい、と」(阿部さん)
6年後といえば、東京オリンピック。関連番組に芸人が出まくるブームも来るかもしれない?
■週刊プレイボーイ36号「総力特集13ページ! リベンジ転職のための業界天気予報」より