不況を脱し、好転したといわれるニッポン経済だが、未来は快晴か? どしゃ降りか? 転職先として気になる各業界の天気予報をインサイダー&専門家の声を聞いて予測するシリーズ第6回!
2013年、日本自動車工業会の発表によると、円安による海外市場の好調もあり、国内6社が大幅増益を達成した「自動車業界」。
その勢いは年が改まっても続いているが、キャリア25年を誇る自動車評論家、岡崎五朗氏は次のようにコメントする。
「確かに、グローバルに見ると各社とも目を見張る好業績を残しました。しかし、国内市場は消費増税前の駆け込み需要で盛り上がったものの、それ以降は相変わらずの低空飛行状態。若者のクルマ離れに加え、人口動態から見ても、今後、日本で販売台数が増えていくとは考えにくいですね。
最大手のトヨタがCMで若い人に運転免許証の取得を呼びかけたり、スポーツカーを投入してクルマの楽しさを伝えようとしていることこそ、自動車メーカーが抱いている危機感の表れです。それでも、2015年10月に予定される自動車取得税廃止後、エコカー減税がどうなるかはわかりませんが、なんらかの形でエコカーの普及を後押しする政策は必ず出てくるでしょう」
実際に、景気を肌で感じている現場はどのようにとらえているのか。神奈川県内のホンダ系列販売店に勤める営業マンは、ポジティブに話す。
「今は軽自動車やコンパクトカーの売り上げが絶好調。まぁ、何台売っても利益はわずかですが。メーカーからは人気のハイブリッドカーのほか、刺激的で利益率もいいスポーツカーも発表されると聞いているのでワクワクしています」
クルマ好きにはたまらない職場
2015年のF1復帰も決まり、「イメージアップは確実」と興奮気味に話す彼は勤続20年の主任クラス。給料についても不安はないようだ。
「同世代の平均年収は560万円くらいだと思いますが、それと比べて悪くないし、これまで勤続年数に応じて少しずつ上がってきて、下がったことは一度もありません。そりゃ、残業はありますし、仕事柄、休日出勤もありますが、それって当たり前でしょ」
転職先として考えるとき、自動車のディーラーは魅力的なのか。
「ノルマがあり、セールスはやっぱり難しい。でも、最新モデルにいち早く触れられ、いろいろ乗れるのでクルマ好きにはたまらない職場です」
顧客からの相談にしっかり応えられる知識を身につけ、コミュニケーション能力を磨くなど、がんばり次第で収入アップも期待できそうだ。
一方、クルマを造るメーカー側も絶好調。トヨタは2014年3月期連結決算で世界でのグループ総販売台数が1000万台を超え、過去最高益を更新した。
岡崎氏がその理由を解説する。
「収益の面では、円安のメリットが大きかったですね。販売台数の伸びについては、強力な販売力と信頼性の高さがトヨタの大きな武器になっています」
価格を抑えたエコカーの開発が急務
だが、安心してばかりもいられない。岡崎氏は、同時に警鐘を鳴らす。
「得意のハイブリッドカーの販売比率は、国内市場に比べると海外ではまだまだ。ディーゼルや小排気量ターボといったエンジン技術でドイツ勢に後れを取っているのも気になるところです。高騰するガソリン価格に合わせて、エコカーへのシフトが加速していますが、問題は、爆発的に需要が伸びている新興国マーケットでの海外勢との勝負。
勝ち残るためには価格を抑えたエコカーの開発が急務です。それゆえ、慢性化したエンジニア不足を解消するため、スキルの高い人材を確保することはメーカーにとって最重要課題です」
今後、国内工場の期間従業員募集は増えるだろうが、正社員となると、進出先の外国語能力や技術系の高度なスキルが求められる。
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