不況を脱し、好転したといわれるニッポン経済だが、未来は快晴か? どしゃ降りか? 転職先として気になる各業界の天気予報をインサイダー&専門家の声を聞いて予測するシリーズ第8回!

ひと口に「不動産業界」と言っても、仕事内容、扱う物件、規模など実にさまざまだが、取材した全員が口をそろえるのは…「動いている」。景気が低迷して閉塞(へいそく)状況が長く続いていたが、昨年からは活況だ。

新宿・歌舞伎町のビル管理会社に勤務する男性社員によれば、テナントはどこも満室。強気に条件を上げても借り手はいくらでもあり、人気の物件は空き待ち状態。駐車場も昼は工事車両、夜は遊びに来た人でいつも満車だ。

話はそれるが、風俗業界も景気が回復。前出のビル管理会社の男性社員が景気のバロメーターとしているのは、妖艶なコロンビア女性の数なのだという。

「今、歌舞伎町にはコロンビアの女性があふれています。彼女たちは景気にものすごく敏感で、少し前まではほとんどいませんでした。それが、いつの間にか帰ってきてバブル期のように増えている。景気がよくなった証拠ですよ」

大手マンションデベロッパー社員からは、とんでもなく景気のいい話も飛び込んできた。

「東京・文京区の一等地に建てた億ションが販売開始後、アッという間に完売しました」

今、最も売れているのは8000万~1億円のマンション。頭金3000万円をポンと入れる客がほとんどだ。

「購買層の資金が伸びています。背景としては、住宅ローンの金利が下がり、融資額が増えたこと。親からの贈与が増額したこと。都市居住者のなかには、ライフスタイルを変えてクルマを持たなくなり、クルマ関連の出費を住宅に振り替える方も多いようです」

活況ゆえの不安材料も…

また、神奈川県相模原市の不動産業者も明るい表情でこう話す。

「景気の好転やインフレへの期待から地価上昇地点が増加。大企業のサラリーマンを中心に多少なりとも給料が上がったことで、住宅購入を前向きに検討する人が確実に増えています。外国人投資家が積極的に国内の不動産取得に動いているという話もありますしね。なんだかんだで忙しくなってきましたよ」

ただし、活況ゆえの不安材料も出てきている。前出のマンションデベロッパー社員が表情を曇らせながら次のように語ってくれた。

「今、物件を持っているところはいいんです。うちも2年前ぐらいまでに土地を手に入れ、建設会社と契約している物件は問題ない。でも、これからが大変。地価が上がり、復興需要やオリンピックに向けての公共事業需要によって人手が不足し、建築費が高騰しています。その分、値上がりした販売価格に市場がついてこられるか。かなり厳しくなるでしょうね」

不動産鑑定士として全国を飛び回る太田謁八(えつや)氏によれば、不動産の二極化は今後ますます進んでいくという。

「東京周辺でいえば、都心・湾岸地域と郊外。立地がいい所の地価はしばらく上がり続けるでしょうが、郊外は下がる一方。それでも住宅地は全国的にまだいいでしょうが、地方の商業地は下落が止まりません。

建築費も人件費、資材代が値上がりし、30%以上アップしているとの声もあります。あまりの建築費高騰に、役所の入札が流れたケースも出てきました。土地を高値買いした不動産会社はこれから大変でしょう」

もともと不動産業界は、他業界からの転職も業界内での転職も多いのが特徴。今回、話を聞かせてくれた方々のなかにも他業界から転職してきた人が多かった。

転職後、しっかり勉強して資格を取れば、さらなるキャリアアップも独立も見込める。バイタリティがあり、それを営業に生かすことができる人には、転職するのにうってつけの業界といえそうだ。