島谷ひとみは「泣きメシ」PRにとどまらず、出身の倉橋島を「人よし、味よし、景色よし。三拍子揃っています。観光スポットもたくさんでオリジナルの食があって瀬戸内にしかない景色がある」と大絶賛

広島カープに「カープ女子」、さらに県が発行した無料の究極ガイドブック『泣ける!広島県』がPerfumeの表紙でも話題となるなど、今年なにかと注目を集めている広島県ーー。

そこにきて、なぜか居酒屋チェーン『和民』がコラボを組んだ!? 全国325店舗の『和民』と『坐・和民』で10月29日より「泣けるほどウマイ!広島泣きメシ」を販売開始。

和民といえば、ここ最近イメージは下降する一方……昨年は業績下方修正で株価最安値を叩き出し、手放すタイミングを逸している本誌記者を号泣させてくれたが(マジで!)、このコラボでイメージ回復、今度は喜びの涙で泣かしてくれるのか?

というわけで、その販売に先駆けて開催された全国展開発表会をチェックすべく、10月21日、東京・銀座の広島ブランドショップ『TAU』に向かった。

冒頭の会見には、広島県呉市倉橋島出身で実家が牡蠣(かき)養殖業という歌手の島谷ひとみが出席。

「秋頃からはずっと家業を手伝っていて、誰よりも牡蠣を食べていました。私が東京に来た頃は広島の牡蠣は少なかったけど、最近見かけることが多くなりましたよね。広島の牡蠣のブランド価値が上がってきた成長を、私は見続けているんです」と、地元愛炸裂のアピールで幕を開ける。

また、「カープ女子」代表で天野恵、古田ちさこ。さらに昨年、「第1回ご当地女王決定戦」で16万7876票を獲得、全国1位になった広島県呉市の名物・がんすを広める活動中の“生きるゆるキャラ”がんす娘。も登場。全員で今回提供されるメニューを試食することに。

カープ女子の古田(左)は広島出身。「カープのおかげで広島県のファンも増えたみたいで、広島の食べ物を東京でも食べてもらえるのは嬉しい」。天野(右)は千葉県出身で“にわか”と思われがちだが「父の影響でカープ好きになりました」という筋金入り!

新メニューを試食も最後に泣く泣く…

派手な帽子(?)は「バス停のイメージです。立ち止まってもらえたら『ちぃと食べて』ってがんすを出します」と広島弁のマシンガントークで喋る、がんす娘。だが、実は呉の老舗「三宅水産」のお嬢さんとか!

『焼き牡蠣 醤油バター』(1個190円)は、身のついてない方の殻で小柱を外して食べるというテクを見せた島谷さんが「個人的な泣きメシです」と絶賛。

一方、がんす娘。は「がんすには生姜醤油が合うんです。しそもちらして!」と、老舗の三宅水産と和民がこのために共同開発したという『和民のがんす』(360円)についてバリバリの広島弁でレクチャー。

そして会見終了後、記者たちにも試食が振る舞われ、早速、その謎の名物・がんすから味見してみることに…。魚のすり身に玉ねぎと唐辛子を混ぜて、パン粉をまとわせ揚げたものだが、揚げたてサクサクでパン粉がうまい! ビールに合いそうだし、サイズ的にもコスパもいいぞ!と好印象。

記者向けの試食で提供された『焼き牡蠣 醤油バター』と、がんす娘。曰く「3倍の厚み!地元の人も和民じゃないと食べられない」とPRする『和民のがんす』

続いて、『カキフライ』(530円)は牡蠣のうまみがギュッ!と濃厚だが、まぁ普通にカキフライ。そして今回発表されたメニューのシメによさげな『和民の汁なし担々麺』(590円)にありつくと、流行の火付け役である広島の『中華そば くにまつ』店主が「食べる前に30回は混ぜてください」と混ぜ技を披露。花椒が効いているが、そこまでは辛くないので激辛好きなら思う存分、ラー油をぶっかけるのもオススメ。

数年前から『辛辛つけ麺』など辛麺ブーム発祥地に広島がなっており、『和民の汁なし担々麺』も満を持しての全国展開か

さて、好きなものは最後にとっておくタイプの記者が、最も楽しみにしていた『焼き牡蠣 醤油バター』のテーブルに向かい、手にとろうとしたら……お皿の上はすべて殻のみっ! 撮影して出遅れた自分が悪かったけど、ここでも泣かされるとは……(涙)。

広島県民は和民とのコラボをどう思う?

さんざん試食させていただき、そのメニューの頑張りは評価しつつも、広島県民は和民とのコラボをどう思っているのだろう? そもそも繋がりも唐突だし…と、地元・世羅町出身の会社員(男性・36歳)に聞いてみた。

「牡蠣や汁なし担々麺は有名ですけど、浅い気がします。というより、“泣きメシ”の意味が理解できないんですけど(笑)」

…県が力を入れて出したガイドブックのことを、まず知らなかった(泣)。続いて、広島市出身のライター(女性・39歳)にもご意見を。

「和民でもなんでも広島のことが広まるなら嬉しいです~。ところで、がんすってなんですか? え、呉市の? 聞いたことないですし、行かないですよ~。だって、“仁義なき~”の菅原文太さんみたいな人がいっぱいいるんですよ。怖いんですっ」

呉市の人に謝れっ! どうも、和民が広島とからむことに関心も盛り上がりもないようなのはわかった。

しかし、なぜ広島なのか。2012年、2013年と取締役会長(当時)の渡邉美樹氏が湯﨑英彦広島県知事と対談したことをきっかけに、県産のタコや牡蠣を使用して人気を博したメニューを提供した縁はあったようだが…その効果の甲斐なく昨年は業績下方修正。

それでも広島ブームに“泣ける”便乗するしかなかった? イメージをなんとか回復したい和民の涙ぐましい戦略こそが一番泣けるかもしれない。

広島パワーに後押しされ業績回復となるか?

(取材・文・撮影/渡邉裕美)