ふるさと納税の情報を網羅した人気サイト「ふるさとチョイス」。寄付したい自治体、欲しい特産品などから寄付先を選べる

増税に円安など、日本経済が劇的に転換した2014年は、各業界の激しいバトルのなかで値下げ競争はほぼなかった。アベノミクスの登場以来、物価上昇と円安が続き、消費税もアップ。それでは、今後の消費はどうなるのかーー。経済評論家の平野和之氏に聞いた。

「外食を例に取れば、2014年業績を上げたのは、安さ以外の付加価値をつけることでメニューの値段を上げ、客の滞在時間を長くすることに成功した企業です。つまり、価格を下げ、客の回転率を上げるという今までの手法からうまくシフトチェンジできたところ。

そもそも円安が続き、輸入価格が高騰していますから、値段で勝負することはもうムリなのです。早くから高級路線に変えた『ロイヤルホスト』などは好調を維持していますし、ロッテリアも数量限定ながら1500円もする『松阪牛ハンバーグステーキバーガー』などの販売に踏み切り、結果を出している。以前なら、こんな高価格帯のハンバーガーをチェーン店で出そうなんて思いもしなかったはずです」

庶民にとっては安い店のほうがありがたいんですけどね…。

「一方で、ファストフード店チェーンは全体としては苦しい。例えば、牛丼チェーンは牛すき鍋やちょい呑みなどの話題はありましたが、狭い店内や座り心地の悪いイス、申し訳程度に備えつけられたトイレなど客が長時間滞在できるような造りではないですから。いずれメニュー全体の価格を上げるための店舗の改装も始まるでしょうね。駅前にある店が多く立地は悪くありませんから、やり方次第では業績が上向く可能性は大きいと思います」

付加価値をつけるための値上げは多くの業界で今後も続くというが、では2015年以降、勢いを増す業界はどこだろう?

自分にも見返りがある“エシカル消費”とは?

「円安が続けば、単純に外国人観光客が増えますから、彼らをターゲットにした商売は元気があるでしょうね。それから東京オリンピックが開催される2020年まではスポーツ関連の需要が伸びる。また、オリンピックによって日本の注目度や知名度も上がりますから海外向けのネット通販なども狙い目。

『今を楽しみたい』という傾向が強い、若い世代を中心に、モノを買い、所有したい欲求を満たす“モノ消費”より、経験や体験、思い出づくりなどの欲求を満たす“コト消費”がさらに広がると思います。2014年、東京ディズニーランドなどが話題になり客足を伸ばしたのは、そのひとつの表れです」

さらに、平野氏は“エシカル消費”も伸びると予測。エシカルって?

「もともとは“倫理的”とか“道徳的”といった意味のある形容詞ですが、最近では“社会貢献”という意味合いが強くなっています。代表的なのは2014年に話題になった『ふるさと納税』。自分の好きな自治体に寄付することで、その土地の特産品などがもらえ、さらに寄付した額のほぼ全額が税額控除される制度です。

簡単に言えば、この“社会貢献しながら自分にも見返りがある”というのがエシカル消費。東北を応援するクラウドファンディング(不特定多数からネット経由で資金を調達する)のサイトも誕生していますが、こういった消費の仕方はこれからも増えていくと思います」

社会状況とともに、企業の争い方は変わり、新しいサービスも誕生する。それらが健全で正しいのか見極める目が、ますます消費者に求められるのかもしれない。

(取材・文/井出尚志、渡辺雅史、高山 恵[リーゼント] 鈴木晴美)

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