「金の食パン」「コンビニコーヒー」など次々とヒットを飛ばすセブン-イレブンは国内だけでも1万7000を超える店舗数が強み。ミニストップは飲食コーナーを設け、ファストフード店的な色合いを濃くしている 「金の食パン」「コンビニコーヒー」など次々とヒットを飛ばすセブン-イレブンは国内だけでも1万7000を超える店舗数が強み。ミニストップは飲食コーナーを設け、ファストフード店的な色合いを濃くしている

コンビニ、ファミレス、スーパー、銀行…など多くの分野でライバル関係にあるセブン&アイグループvsイオングループ

2014年2月期の決算で発表された売り上げは、セブン&アイが5兆6318億円で、イオンが6兆3951億円。あまりにも巨大すぎてピンとこないが、まさに両者とも日本を代表する小売業グループだ。

大げさではなく、コンビニで朝食を買い、それを車内でパクつきながらデパートへ出かけ、買い物や昼食を楽しみ、たっぷり遊んだ帰りにファミレスで夕食を食べたら、すべて同じグループ内の企業だった…なんてことも起こり得るのが今の日本。まるでお釈迦(しゃか)様の手のひらから逃げられない孫悟空のようだが、それだけ我々の生活にどっぷり浸透しているともいえる。

14年9月、イオングループが大手総合スーパーの「ダイエー」を完全子会社化することが大きなニュースになったが、基本的に両グループの巨大化の流れはM&A(企業の合併・買収)の繰り返しにある。ここ数年の動きだけを見ても、イオンがスーパーの「マルナカ」や「ピーコックストア」、ドラッグストアの「ウエルシア」、セブン&アイは「ロフト」「赤ちゃん本舗」といった具合に激しいM&A合戦が行なわれている。

巨大化の目的は主に生産性や経営効率の向上。例えば、両グループとも「トップバリュ」と「セブンプレミアム」というプライベートブランドを持つが、グループ内のどの店でも買うことができれば、認知度も売り上げも上がる。名前の違うスーパー同士でもポイントを共通にすれば、客の囲い込みが可能だ。

「そこで最近、セブン&アイが確立しようとしているのが『オムニチャネル』です」と解説するのは経済評論家の平野和之氏。

「“オムニ”には“あらゆる”という意味があり、“チャネル”には“経路、手段”といった意味があるのですが、簡単に言えば、同じグループ内の商品がどこからでも買える仕組み。例えば『セブンネットショッピング』から、西武やそごうでしか買えない商品を注文し、セブン-イレブンの店頭で受け取るといったことが可能です」

コンビニ、ファミレス…業態ごとに強いのは?

確かにそれは便利そうだが…。

「ただ、高級ブランド品をコンビニで受け取る人はあまりいないわけで、実際には持ち帰るのには重いものの注文が現実的。例えば、米や飲料のケース買いなどです。するとそこには『Amazon』や『カクヤス』などの競合企業がありますから、ネットスーパーの域を超えるのはもっと思い切った組織改革や投資が必要です」(平野氏)

いくら巨大でも新規事業を立ち上げるのは簡単ではないのだ。

では、ざっくりと両グループの現状がわかったところで、われわれの生活に関係の深い4業態を、本誌的な観点から比較してみよう。

■コンビニ セブン&アイの「セブン-イレブン」は1973年の創業以来、常に業界1位に君臨。対するイオンの「ミニストップ」はローソンやファミマなどの後を追う第5位だ。国内の店舗数を見てもセブン-イレブンが約1万7000店に対し、ミニストップは約2100店。セブン&アイの7割以上がセブン-イレブンからの収益ということを考えても圧勝だろう。

■ファミレス イオングループのファミレスと聞いても思い当たらない人も多いかもしれないが「れすとらん四六時中」「おひつごはん四六時中」(計約310店)などをイオン内に出店。イオンによく行く人にはおなじみだが、それ以外では見かける機会は少ない。しかし、セブン&アイの「デニーズ」(約470店)も首都圏と中部が中心で、それ以外ではまったく展開していない地域もある。この勝負は引き分け。

イオンの勝利はダイエーの立て直しがカギに

■スーパー 「イオン」(約611店)、「イトーヨーカドー」(約185店)など全国的にも有名な総合スーパーを擁する両グループだが、やはりこの分野に、より力を入れているのはイオングループ。買い控えを招くため、値上げもできず、苦境が続くスーパー業界でダイエーの買収は吉と出るか。イオングループの勝ち。

■銀行 365日24時間利用できるATM、預け入れや引き出しの手数料が無料(セブンの引き出しは時間による)、利用によってnanacoやWAONのポイントがたまる点などサービス面では非常に似ている。だが、セブン銀行の収益が212億円なのに対し、イオンのそれは100億円と倍の差があり、セブンの勝利。

というわけで、本誌判定では2勝1敗1分けでセブン&アイの勝利。この、似て非なる両者について平野氏はこう語る。

「両者のどこが違うかは『?』です。これだけすべてがそろっていると、利用する側から見れば差がわからない。ただ、セブン&アイは事業の中核がコンビニのフランチャイズ展開ですからロイヤリティが入ってくる。この仕組みは、経営リスクをフランチャイザーに分散できるので本体のセブン&アイはローリスクハイリターンです。

しかし大型店が多く、直営ですから不採算店舗は大きな痛手となるイオングループは買収を繰り返してきましたが、立て直しできないと逆に赤字が膨れます」

専門家の目から見ても結果は同じようだ。イオンの勝利はダイエーの立て直しがカギになりそうだ。

(取材・文/井出尚志、渡辺雅史、高山 恵[リーゼント] 鈴木晴美)

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