「吉野家」は、夕方17時になると、軒先に“吉呑み”と書かれた赤いちょうちんがつるされる。ファミレスは、時間を問わずアルコールの提供をしていて、24時間営業の店が多いのも強みだろう 「吉野家」は、夕方17時になると、軒先に“吉呑み”と書かれた赤いちょうちんがつるされる。ファミレスは、時間を問わずアルコールの提供をしていて、24時間営業の店が多いのも強みだろう

おひとりさまでも気軽に入れる男子の癒やしスポットーー今後、ちょい飲みはトレンドから定番化していくのか!?

ファミレスやファストフードなどの外食チェーン店で軽く酒を楽しむ「ちょい飲み」が活況だ。居酒屋のように席料も発生せず、生ビール1杯の相場も300円ほど。手軽さを武器に、従来その役割を果たしていた居酒屋業界を脅かす存在となっている。

「ちょい飲みは、実は昔からあった立ち飲みの延長、あるいは飲食の業態多様化、二毛作、三毛作のようなものです。それが若い世代向けに工夫して成功している。ちょい飲み市場は今後もどんどん参入・拡大していき、競合店が増えていくはず」(経済評論家・平野和之氏)

現在、シーンを牽引(けんいん)するのは、牛丼チェーンの「吉野家」。2階スペースなどを利用して、17時以降だけ飲み屋にした新形態を“吉呑み”と名づけて実験的に始めたところ好評で、利益率も好調。約20種ある、つまみの値段を100~400円に設定し、牛丼を食べるように気軽にひとりで飲めるスタイルが人気となった。来年までに吉呑み対応店を30店舗まで増やし、将来的には400店まで展開することも視野に入れているという。

だが、そんな“吉呑み”の急成長を脅かす勢いなのが「ファミレス業界」。なかでも値段が抑えめの「サイゼリヤ」「ガスト」は、若者を中心に飲み屋として定着。特に「サイゼリヤ」ではグラスワインがなんと100円! ほかにも「バーミヤン」では、焼酎のボトルキープという独自サービスを展開するなど、それぞれ“ちょい飲み”にはかなり力を入れている。ファミレスにはたいていドリンクバーがあり、安価で長居ができる安心感も、“吉呑み”にはない強みだ。

スタバにお馴染みバーガーチェーンまで参戦!

新たに参入する別業界も増えている。例えば、ハンバーガーチェーン店では「フレッシュネスバーガー」が17時以降にフライドポテトとプレミアムモルツの「ビールセット」(510円)を提供中。「ケンタッキーフライドチキン」でも、店舗限定で17時以降にプレミアムモルツ(600円)を販売している。

また、カフェの代表格「スターバックス コーヒー」までも、店舗限定でアルコールの提供を開始した。すでに海外では“スタバ飲み”が定着しているそうで、日本でも流行るのは時間の問題か?

このように“ちょい飲み”市場は今度も居酒屋業界の衰退に拍車をかけ、どんどん活性化しそうな勢い。この流れはいつまで続くのか。

「消費者にとってはうれしいことでも、参入する企業にとって、この流れはあまりうれしくないと思います。このままでは飽和状態になるのは確実ですから。ファミレスや吉呑みも今は好調ですが、過当競争に陥り、顧客を奪い合う価格戦争に陥る前に今後はお客をつなぎ止める工夫をする必要があるでしょう」(平野氏)

今のところ、ビールの価格を下げることでお得感を出す手法がメインのちょい飲み市場。価格競争の最後のあだ花かもしれない。

(取材・文/井出尚志、渡辺雅史、高山 恵[リーゼント] 鈴木晴美)

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