年明け早々、すでに会社に行くのが憂鬱で、特に人間関係がウザい、上司の顔をまた見なきゃいけないのか…という人も少なくないはず。

だが、不安を抱えながら上に立っているのは上司たちも同じ。そんな彼らをを支える精神的支柱ーーそれは、様々な時代に現れた英傑や偉人たちだ。伝記を読み込んだり、訓示に語録を引用したり、そのチョイスによって上司の扱い方も見えてくる。

【01 織田信長(おだのぶなが)】

■改革者イメージへの憧れを巧みに刺激せよ!

何かと織田信長の名前を出す上司は、“守旧勢力に真っ向から立ち向かう改革者”のイメージに憧れ、部下からもそう思われたい願望がある。

特に、現実はショボイ仕事しかしていない上司ほど風雲児、信長への憧れも強い。自分は会社で大胆な改革を実行している。なのに、改革者であるがゆえに認められず、妨害され続けている……などと大それたことを考えているのだ。

あなたはそんな上司に対して「わが社の諸問題について、○○さん(上司)以外は誰も解決する気がありません」「改革する覚悟をもって事に当たっているのは○○さんだけです」と期待を述べてあげよう。

ただし、あまり距離が近づきすぎるとささいなことで勘繰られ、しまいには「謀反か!?」と飛ばされたりするので距離感には要注意だ。

【02 ピーター・ドラッカー】

■ただの中間管理職でも“経営哲学”を熱く語らせる!

現代経営学の神様で「マネジメント」の概念を広めたピーター・ドラッカー。この経営学者に心酔する上司はすぐにわかる。なぜなら、口癖が「これはドラッカーも言っていることだけど……」だからだ。

その上司は、自分は論理的に考えているのに周りの人間は非論理的で、この会社は効率が悪いと感じている。ところが彼は社長ではなく、たまに自分でコピーなんかもとっている課長にすぎない。それなのに企業家目線で会社組織や経営哲学について批判しているのだ。

そんな上司の会社批判を聞いたら、すかさず「トップマネジメントの顧客に対するアプローチが間違っていますよね? わかっているのは課長だけですよ」と言ってあげよう。上司は、あなたを自分の理解者だと思い込み、折に触れて仕事上の意見を求めてくるだろう。

落合博満、スティーブ・ジョブズ

【03 落合博満(おちあいひろみつ)】

■わがままを「オレ流」と言い換えてあげよう

日本人初の1億円プレーヤーになり、選手として三冠王を3度、監督として中日を4度のリーグ優勝(うち1度は日本一)に導いた孤高の野球人。

そんな落合ファンの上司は、当然ながら「オレ流」にこだわっている。自分も会社で自説を曲げず、オレ流を貫いているせいで出世が遅れているなどと勝手に思っているのだ。

現実を見れば、落合の場合は周囲に流されず自分の才能を信じて努力した結果、デビューは遅れたが選手としても監督としても大成した。一方、あなたの上司の場合は単なるわがままなので、結果がついてこないのがつらいところだ。

とりあえずは上司のオレ流を「さすが、ブレませんね」と感嘆してみせれば万事スムーズ。度が過ぎて業務に支障が出た場合は、奥さんに言いつけて一喝してもらうといいだろう。

【04 スティーブ・ジョブズ】

■ささいなことでも斬新なイノベーション扱いする!

アップルコンピュータの創業者、スティーブ・ジョブズは「世界を変えたい」と思い続けた男だ。ペプシコーラからジョン・スカリーを引き抜くときに「このまま一生、砂糖水を売り続けたいか? それとも世界を変えたいか?」と名言を吐いたことはあまりにも有名。ジョブズ好きの上司もまた、心の中で「世界を変える男だと思われたい」と願っている。

だから、彼のしたことがコピー機の移動といったささいな仕事であっても「斬新なレイアウトだ!」「オフィスのイノベーションだ!」と驚嘆してあげよう。

また、朝礼で「一生、ただの営業マンか? それとも世界を変える営業マンになりたいか?」などと突拍子もない訓示を垂れても吹き出してはいけない。「○○さんの言葉には力がある」と褒めてあげれば上司は上機嫌だ。

西郷隆盛、マハトマ・ガンジー

【05 西郷隆盛(さいごうたかもり)】

■「おいどんは部下に慕われる大将」と思わせる!

類いまれな人望で明治維新の立役者となりながら、西南戦争で賊軍となり命を落とした西郷隆盛。西郷の生きざまに共感する上司は部下思いの親分肌に見られたいと考えているため、日頃からその思いに応えるといい。業務上のトラブルからプライベートの悩みまで、相談すれば親身になって助けてくれるはずだ。

ただし、人情家で包容力があるイメージの西郷隆盛だが、その一方で「人間なんてカネや権力、官位で動くやつがほとんどで、ホンモノの人物などほんのひと握りしかいない」という冷めた目も持ち合わせていた。

もし、こうした部分も備えた上司であれば、むしろ平凡な小人物と思われていたほうがラクかもしれない。ホンモノと見込まれると要求は厳しくなり、最後は城山でともに討ち死にする覚悟が必要になってしまう。

【06 マハトマ・ガンジー】

■自分にも部下にも厳しい高邁な精神に寄り添え!

「非暴力・不現服従」を貫き、インドの独立運動を指導したマハトマ・ガンジーは非の打ちどころのない偉人。そんな人物を敬愛する上司は、ガンジーの偉業と自分の業務があまりにもかけ離れているため巨大な自己矛盾を抱えている。

彼は、仕事は仕事としてきちんとこなすが、自分の生きがいは週末に参加しているボランティア活動だと思っているのだ。

ボランティアを続けるためにも仕事では結果を残したいと感じているため、職場では自分にも部下にも厳しい上司である可能性が高い。高邁(こうまい)な精神ゆえ取り入るのはかなり難しいが、あなたが週末のボランティア活動に同行すれば「博愛主義者だ」と思い込み、職場でも目をかけてくれるだろう。

ただし、やりすぎると「一緒に会社を辞めてNPOを立ち上げよう!」と誘われかねないが……。

本田宗一郎、チェ・ゲバラ

【07 本田宗一郎(ほんだそういちろう)】

■社内ベンチャーで理想のモノづくりを提案!

自分が乗りたいバイク、クルマを追い求め、小さな町工場を世界的メーカーに育て上げたカリスマ経営者、本田宗一郎。技術者として自ら油まみれで作業するなど徹底した現場主義でも知られる。

そんな宗一郎を夢見る上司は、好きなことや得意なことを生かして仕事をすべきという考えを心に秘めている。社業とは畑違いでも、音楽好きな上司には「理想のピアノを作りましょう!」、グルメな上司なら「世界が驚くワインを!」などとベンチャー事業を提案すれば、その場だけでも盛り上がるだろう。

また、実際はフロアが一緒なだけでも「いつも○○さんは現場にいてくれて心強いです」と喜ばせておくといい。上司も現場の状況を共有していることになるので、何かトラブルが起きたとき「聞いてないぞ!」という責任回避はできなくなる。

【08 チェ・ゲバラ】

■封印された理想論をアフター5に解き放て!

キューバ革命を成功させた後、新政府を盟友カストロに任せて再び革命に身を投じ、ボリビア山中で射殺された伝説の革命家。権力も命も捨てるストイックな生き方と行動力、しかもイケメンときては、あなたの上司がほれ込むのも当然だ。

実際の上司は中間管理職として経営陣には叱責され、部下からは突き上げられ、家庭ではサービスが足りないと責められる。そんな現実にもみくちゃにされながら、すべてを捨てて理想に走る自分を夢想して、つらい毎日を耐えているのだ。

そんな上司はアフター5に誘い、ラム酒でも飲みながら理想論を語ってもらうといい。一度火がつけば止まらなくなり、「社長も専務も、やつらはみんな資本主義の犬だ!」と脳内ドーパミンはMAXに。日付が変わる頃には、あなたを「同志よ!」と呼んでいることだろう。

(取材・文/桑原一久 山岡則夫[サラリーマン研究所])