業界が注目する“THE スゴ腕プランナー”眞鍋海里(まなべ・かいり)氏。その素顔はとっても親近感の湧くお兄さんでした。 業界が注目する“THE スゴ腕プランナー”眞鍋海里(まなべ・かいり)氏。その素顔はとっても親近感の湧くお兄さんでした。

「これはヤバい」「夜中は絶見ない方がいい」と、ネット上で大きな話題となった動画「【閲覧注意】雪道コワイ」。国内だけでなく海外のネットユーザーも大注目で現在、YouTube上での再生回数は940万回を突破している。

未視聴の方はまず心して視聴してほしい。

【閲覧注意】雪道コワイ http://youtu.be/jGFWEoCGhi8 【https://www.youtube.com/watch?v=jGFWEoCGhi8

暗い雪道を走っていくと……ギャース! 誰もが悲鳴を上げざるを得ないホラー展開が待ち構えている文字通り「閲覧注意」のこの動画。実は、車のタイヤを取り扱う株式会社オートウェイのWeb CMなのだ。

このWeb CMの仕掛け人となったのが、福岡の広告会社「BBDO J WEST」コンテンツプランナーの眞鍋海里(まなべ・かいり)。眞鍋氏はこれまでもADFESTシルバー、モバイル広告賞グランプリ、広告電通賞クロスメディア部門最優秀賞など広告業界の名だたる賞を数多く受賞してきた“THE スゴ腕プランナー”で、いま業界が最も注目している若手クリエイターといっても過言ではない存在だ。クソッ、かっこいいぜ!

そんな超イケているクリエイターの眞鍋氏だが、ひとつだけナゾがある。

東京が中心と言われる広告業界でどうして九州・福岡で仕事を続けているのか、という点だ。正直、彼ほどの“実績”があれば、東京でもバリバリやっていけるはず。そこで我々取材班は眞鍋氏が拠点とする福岡まで飛び、その真意を直撃してみた。

テレ東の大ファンで、姿勢が単純に好き

「一体どんなイケイケクリエイターが出てくるのだろう…」と、若干緊張しながら取材場所に指定されたオフィスを訪ねると…。

ギャース! まさかのV字両手頬杖ポーズで本人降臨キターッ!! …って、肩で風切る系の鼻につくヤツを想定していたら、めちゃくちゃ親近感湧く感じのお兄さんじゃないですか!

眞鍋氏の生まれは宮崎県。鹿児島大学で宇宙理論を学ぶも、あまりの難しさに入学直後に挫折。大学卒業後、レコード屋のバイトをしながらバンド活動に熱を入れていたものの、それも途中でドロップアウト。

その後、「何かカッコよさげだから」(本人談)という、とってもシンプルな理由でクリエイターの道を志し、現在所属する福岡の会社に就職した異色すぎる経歴を持つ。

―ズバリお伺いします! 広告系だとどうしても東京が中心の業界ですが、眞鍋さんはどうして福岡で広告クリエイターを続けているんでしょうか? 

眞鍋 う~ん、逆に今のところ福岡を出る理由がないんですよねぇ。福岡って、仕事するにも生活するにも、何もかもがちょうどいいんですよ。田舎者にとっては適度に都会でアウェイ感はないし、僕の地元の宮崎みたいに文化的に遅れているわけでもないし。

―文化的に遅れてるって、いくら地元でも宮崎の人が怒りますよ(苦笑)。でも、その“アウェイ感”って、具体的にどういうことでしょうか?

眞鍋 言葉で表すのは難しいですけど「(知的好奇心的に)気持ち悪い」んですよね。東京ってあまりにも情報が溢(あふ)れすぎてて…。僕、性格上、自分が“把握できない”ことがあると気持ち悪くなっちゃう。東京では毎日いろんなイベントがあったり、面白そうなコトがあちこちで起こってますよね?

―まぁ、たしかにそうかもしれないですけど…。

眞鍋 それらが、自分が知らないうちに過ぎ去っていくわけですよね!? ね!? それがもう気持ち悪い(バッサリ)。その点、福岡って街自体もコンパクトだし、周囲の情報も自分が処理できるレベルの量で、サイズ感的にちょうどいいんですよねぇ。

―な、なるほど。でも眞鍋さんの仕事的には、東京にいた方が“大きな仕事”ができると思うのですが?

眞鍋 たしかに対東京で考えると、福岡の広告会社とでは予算感とか技術的な情報力でかなわない部分はあります。でも、低予算で東京を上回るモノが作れたら気持ちいいじゃないですか。

―テレビ東京的な「発想で勝負」みたいなアレですかね。

眞鍋 そうそう! 僕、テレ東の大ファンなんですけど、テレ東みたいに企画やアイディアで他を超えていく姿勢が単純に好きで。ハードルを飛び越えられるアイディアを出すっていうのが、プランナーとしての腕の見せ所のような気がしているんです。現にオートウェイのCM動画とかもそうですけど。

あと、そもそもですが、福岡でもデカい仕事は問題なくできると思ってます。コンテンツビジネスに東京もクソもないですからね。面白いって言ってもらえるものを作るのに場所は関係ないんじゃないでしょうか。

福岡が大好きなのに栄えてほしくない…?

――たしかにそうですね。ちなみに最近、福岡には『妖怪ウォッチ』のレベルファイブも拠点にしていたり、東京などから移住してくる若手のクリエイターも増えているそうですが、そういった流れの背景には何があると思いますか?

眞鍋 これは僕個人の見解なんですが、福岡の人って面白いものに対して異常にノリがいいんです。山笠(博多祇園山笠=毎年7月に開催される700年以上の伝統を誇る福岡市博多区の祭り)とかも、みんな1週間くらい働かなくなりますからね(笑)。

そうだからかもしれないですが、新しいことを始める時「なんか面白そうだし、とりあえずやってみるか」っていう精神の人が多い。福岡にそういった環境があるからか、他所からやってきた人も何かを始めやすいっていうのはあるんじゃないでしょうか。福岡人自体、新しいもの好きですし。

――あと、福岡市が行政主導でクリエイター移住を促進するような政策を実施しているのもあるかもしれないですね。

眞鍋 ええ。正直、福岡でクリエイティブな仕事するのって今、すっごいアリだと思うんです。特に福岡の広告業界なんかはいい意味で「狭い」から、他所から新しくやってきた人がちょっと面白いことをしただけで目立てる。業界としても福岡は若手不足ですから、東京あたりでくすぶっている若いクリエイターがこっちに来たらチャンスを掴めるんじゃないでしょうか。

――では若手クリエイターの皆さん、福岡へいらっしゃいと?

眞鍋 そう言いたいところですが、ホンネではあまり来てほしくないかも…(苦笑)。そんな人がいっぱい来たら、福岡が栄えちゃうでしょ。

――えっ、福岡が大好きなのに栄えてほしくないんですか?

眞鍋 そうなんですよぉ。この福岡のちょうどいいサイズ感を崩されたくないんですよね。福岡って今のサイズ感がちょうどベストだと思うんで。うん、住めばわかると思いますけど。あ、でも来ちゃだめですよ!!(真顔)

■プロフィール 眞鍋海里(まなべ・かいり) コンテンツプランナー。1982年、宮崎市生まれ。Webプロダクションを経て、08年外資系広告会社BBDO J WESTに入社。主な仕事にAUTOWAYの「【閲覧注意】雪道コワイ」「【放送事故】生配信中に…いきなりBAN」「ラバー」、福岡市「カワイイ区」、スニッカーズ「世界同時催眠」など。受賞歴にADFESTシルバー、モバイル広告賞グランプリ、広告電通賞クロスメディア部門最優秀賞他。

(取材・文/週プレNEWS編集部)