東京・丸の内の「KITTE」にあるアマノフーズのアンテナショップ。常時100種類以上のFD食品がそろい連日盛況だ!

熱湯を注いでサッと混ぜれば、すぐ食べられる! そんな手軽さでレトルト食品のポジションを脅かしつつあるのがフリーズドライ(FD)食品。

ちょっと前までFD食品といえば、スーパーやコンビニに味噌汁が1種類置いてあるかどうかだった。しかし今は、スープやシチューなどの汁モノをはじめ、カレーにおかゆに親子丼などのご飯モノまで種類も豊富。東京・丸の内の商業施設「KITTE」にはFD食品の専門店まで登場しているのだ。

一体、いつの間に? フードジャーナリストの、はんつ遠藤氏が解説する。

「注目を集めるようになったのは3・11の東日本大震災以降です。あの頃に防災グッズにスポットが当たり、賞味期限の長いFD食品の需要が伸びました。FDはカラカラに乾燥させているのでとても軽く、持ち運びに便利。保存食にも最適なのです」

FD食品の特長はそれだけではない。野菜などは切った瞬間から鮮度や栄養が徐々に失われていくが、調理後すぐに冷凍し乾燥させるFD食品は、素材そのものの色や風味、栄養などをほとんど損なわないという。

ちなみにFDの研究は約50年前、医療用としてスタートしたとか。目的は血液成分やワクチンなどの保存。それだけでもFDが成分を変化させずに保存する高度な技術であることがわかる。

「ただ、レトルト食品の人気も負けてませんよ!」と、はんつ遠藤氏。“お手軽クック界”の王者として長年、独身男の胃袋を満たしてきただけに種類の豊富さ、味の安定感、価格のこなれ感ではFD食品の何歩も先を行く。そう、栄養も大事だが値段や味はもっと大事なのだ!

そこで、FD食品はレトルト食品にどこまで迫っているのか? 本誌編集とライターが試食してみた。チョイスしたのはFD業界最注目のアマノフーズの商品。対するレトルト食品は、なるべく公平になるように味と価格帯が似た商品を選んだ。

本誌担当が食べ比べた結果は?

【本誌担当が食べ比べてみた!】

■「アマノフーズ 香るチキンカレー」約320円 vs 「新宿中村屋 インドカリー」約320円【評価】FDはビショビショカレー。レトルトの勝ち!(ライターI)大きな具がしっかり入っているレトルトが上(ライターW)大きめ具材に存在感あるレトルトが優勢!(編集T)

■「アマノフーズ 小さめどんぶり親子丼の素」約250円 vs 「大塚食品 銀座ろくさん亭まかない炙り親子丼」約250円【評価】味は断然FD。ただ、量が少ないのが難(ライターI)レトルトは薄味。だしのきいたFDはうまい(ライターW)卵の完成度の高さと味のうまさでFDに軍配!(編集T)

■「アマノフーズ おかゆ紅鮭」約200円 vs 「味の素 紅鮭がゆ」約200円【評価】よりサケ感があるのはレトルト。FDは量が少ない(ライターI)FDは量にやや不満アリ。味は引き分け(ライターW)味は互角もサケの再現度ではレトルトがリード(編集T)

FD食品の便利さは想像以上

それぞれの寸評は以上だが、味以前に、熱湯をかけて数秒で食べられるFD食品の便利さは想像以上のもの。お湯を沸騰させてから3~5分の温めが必要なレトルト食品(電子レンジでの温めも可能)や同じく待つことを強いられるカップラーメンなどと比較しても上ではないだろうか。

また、見た目も申し分ない。FDとレトルトを皿に盛って並べたとき、見分けがつく人は少ないだろう。

ただ、圧倒的に差を感じたのはカレー。注いだ熱湯はわずか150ミリリットルだが、それでも水分量が多く、通常のカレーというよりスープカレーといった感じ。湯量で調整できるのかもしれないが、カレー独特のトロ味を再現するのは困難なのかもしれない。

というわけで、総合的に判断して、現状ではレトルト食品に軍配を上げたい。しかし、FD食品の今後の可能性には期待大だ。

(取材/井出尚志、渡辺雅史、高山 恵[リーゼント] 鈴木晴美)