ホンダが新型NSXの受注を開始する。

NSXといえば、1990年に販売されたツーシーターのスポーツカーだ。モータージャーナリストの佐野弘宗(さの・ひろむね)氏が当時の状況について解説する。

「日本がバブルで沸いていた頃、トヨタはベンツをつくりたい、日産はポルシェを追い越したい、ホンダはフェラーリを目指したいと夢見ていたんです。そんななかでつくり出されたのが、トヨタの『初代レクサスLS』、日産の『スカイラインGT-R』、ホンダの『NSX』でした。

NSXは最初、ミドルクラスのおしゃれなスポーツカーとして開発していたんですが、時代の雰囲気や他社のライバル車が性能を上げていったこともあり、ホンダもエスカレートして排気量3000㏄のV6エンジンで約800万円というフェラーリ並みのスーパーカーをつくった。

それが注目を浴びて、販売当初は大人気になりました。しかしバブルがはじけると買う人が少なくなり、購入を考えていた人も『800万円も出してホンダの車を買うんだったらポルシェを買ったほうがいい』ということで、人気が下がっていったんですね」

ではなぜ、ホンダは再びNSXをつくろうとしているのか。

本当はみんなそういう商売をしたい

「今ヒットしている軽自動車などは、10銭単位の計算をして、原価に対して何%上乗せして売るというようなシビアな状況なんです。でも、ベンツやポルシェ、フェラーリ、ロールス・ロイスなどはブランドの力で売れるので、原価の何倍もの値段でも売れる。本当はみんなそういう商売をしたいんです。

それに、2000年代になってから世界的に新しい富裕層が増えてきた。今、世界の車の需要は二極化していて、例えば日本では軽自動車が売れていて、欧米でもコンパクトカーにシフトしています。

一方で、中国、インド、中東諸国の経済成長は著しく、数は多くないもののロールス・ロイスのような一台1千万円以上の車の需要が伸びているんです。そこで、自動車メーカーはそこに参入し始めている。2005年に販売を終了したホンダNSXが再びつくられることになったのも、そうした流れのひとつです」

今年からF1に復帰したホンダが、その勢いを見せるための復活かと思っていたが本音はどうも違うらしい。NSXは日本ではなく、新富裕国でこそ再ブレイクしそうだ。

(取材/村上隆保 取材協力/熊谷あづさ)

■週刊プレイボーイ5号(1月19日発売)「明菜、松坂、VAIO、ツチノコ……2015年、再ブレイクするのはこのヒト&モノだ!」より