経営危機にあえぐシャープが迷走中だ。1218億円の資本金を99%減の1億円にし、経営再建を目指すとの方針を固めた直後に撤回。5億円への減資にとどめるなど混乱が続いている。

「ファイナンスアイ」財務コンサルタントの田中琢郎氏が言う。

「税法上、『中小企業』に分類される1億円にまで資本金を減らすことで、外形標準課税の適用免除などの恩恵が期待できたんです。ところが、宮沢洋一経済産業大臣の『違和感がある』との苦言を受け、5億円にとどめたと聞いています。でも、シャープが本気で再生を目指すのなら、どのような批判を受けても税の優遇を受けられる1億円への減資を貫くべきでした。批判の声が上がるとあっさり5億円にするのでは、再生への覚悟を感じられない。どうにもシャープは腰が定まっていない印象です」

ただ、田中氏によれば、そもそも1億円に減資してもメリットは少なかったという。

「減資といっても、資本金を取り崩してそれまでの累損赤字の穴埋めに充てるというだけで、財務諸表の『資本の部』の内実が変わるわけではない。大幅な減資により市場から信用を失うし、株価下落も免れない。総会を開いて株主に減資の承諾を得るコストもバカになりません。そんなデメリットを受け入れてまでも、減資に踏み切る必要性が本当にあったのか。今のシャープに必要なのは目先の財務戦略より、技術や商品力を改善し、稼ぐ力をつけることでしょう」

確かに、1億円への減資のニュースが流れた直後、シャープ株は200円を大きく割り込み、ストップ安となった。

生き残り策は打つ手なし?

結局、5億円への減資を行なうことにしたわけだが、果たして、生き残り策はあるのか? 経済ジャーナリストの須田慎一郎氏が予測する。

「大幅減資は大抵、直後の大幅増資とセットで行なわれる。資本金を取り崩して累損赤字をゼロにして、第三者からの増資や経営支援が受けやすくするためです。シャープの狙いは、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行から借りた2千億円の債務を株式化し、資本金を手厚くすること。シャープは2015年3月期で2千億円以上の赤字を計上しましたが、これなら当面の赤字は吸収できます」

とはいえ、大幅減資→債務の株式化というスキームで資本金を手厚くしてもシャープの未来は明るくないという。

「シャープの稼ぎ頭は液晶パネル。しかし、このビジネスは巨額の投資を継続する体力がないとダメ。2千億円ぽっちの資本金では、サムスンなどの巨大企業がしのぎを削るこの市場ではとても太刀打ちできません」(須田氏)

もはや、打つ手なし?

「ソニー、東芝、日立の液晶ディスプレイ事業を統合したジャパンディスプレイと提携して生き残るという道はあるでしょう。また、ブランド力が健在という点に着目すれば、台湾の鴻海(ホンハイ)といった有力企業にシャープ製品をOEM生産してもらい、アジア市場で売って稼ぐということも考えられる。つまり、ブランドを貸して生き残るというシナリオです」(須田氏)

シャープがブランド貸しで糊口(ここう)をしのぐ? もはや復活は期待できないのかーー。踏ん張ってほしい。

(取材・文/姜 誠)