従業員に過酷な労働をさせることで問題になっているブラック企業。しかし、一方で、職場の人間関係を壊し会社に不利益を与えるブラック社員の存在も明らかになってきた。
特にこの時期は、新入社員や人事異動でやってくる“モンスター後輩”に気をつけたほうがいい。『あなたの隣のモンスター社員』(文春新書)の著者で社会保険労務士の石川弘子さんによると、セクハラ、パワハラといった微妙な問題だけでなく、労働時間や残業代について過度な主張をしてくるケースも珍しくないという。
例えば、自宅に仕事を持ち帰り、その作業時間を「労働時間」と見なしてほしいと請求してくるなんてこともある。しかし、労働時間とは基本的に「上司からの指揮命令下にあること」が条件。自分の裁量で仕事したり、休憩をとったり自由にできてしまう状態では労働時間とは見なされない。
それでもモンスター後輩はクレームを言ってくる。むしろ否定すると、その勢いはどんどん激しくなってしまうほどだ。ついにはネットやマスコミに会社の悪評を言いふらす…なんて宣言しだす人もいる。
では、こうしたモンスター後輩が自分の職場にやってきたら、どのような対策をとればいいのか? 石川氏が言う。
モンスターかもと思ったら冷静に
「私がこれまで見てきた多くのモンスター社員・後輩は嘘をついたり、自己中心的な行動をとったりして周囲に迷惑をかける人でした。そして感情的になりやすく攻撃的な性格でもありました。
そのため、彼らの発言や態度にカッとなって『うるせえ』『バカじゃねえの』などと言ってしまいがちですが、その発言だけを拾われ、後から『パワハラだ』と騒がれることがよく起きます。
後輩や同僚を“モンスター”かもと思ったら、あくまでも冷静に対処すること。また、『何月何日にこう言われた』『何月何日にこうされた』と相手の発言と行動をきちんと記録しておいてください。万が一、トラブルになった時はそうした記録がないと相手の主張がすべて通ってしまう場合があります。
また、あなたが上司だったら必要に応じて適宜、注意や処分を行なってください。それを怠ると、裁判などで『会社は問題行動と認識していなかった』と判断されることもあります」
実際、モンスター社員・後輩はルール作りがきちんとできていない職場で生まれることが多いという。
「『常識で考えろ』と言われても、常識の範囲は人によって違います。そうすると自分のルールを職場に押しつけるモンスター社員が生まれてくる。だから先に、例えば『会社でゲームをしてはいけない』『プライベートなメールはしない』『他人の体には触れない』など、仕事中のルールをはっきりと決めたほうがいいんです」
自分勝手な行動で職場に悪影響を与えるモンスター社員・後輩。もし出会ってしまったら、相手のペースに乗らずに冷静に対処することが必要だ。
(取材・文/村上隆保)