昔懐かしのオート三輪を彷彿とさせる電気三輪自動車「エレクトライク」 昔懐かしのオート三輪を彷彿とさせる電気三輪自動車「エレクトライク」

今年6月8日、国土交通省が国内16番目となる自動車メーカーに型式認定(新型の自動車などの生産・販売を行うための認定)を行なったと発表して話題になった。

その会社とは、神奈川県川崎市のベンチャー企業「日本エレクトライク」だ。

主力商品は、昔懐かしのオート三輪を彷彿(ほうふつ)とさせる電気三輪自動車「エレクトライク」。一体、どのような自動車なのか?

川崎市の本社を訪れると、なんと、代表取締役の松波登氏が直々にお出迎え。

「いや~、社員10人ばかりで人手がなくて(笑)」

そんな松波社長に案内された工場内には、噂のエレクトライクが数台並んでいる。

―基本的な質問で恐縮ですが、“型式認定”というのは、どんな企業でも取得できるものなんですか?

「はい。ただし、当然、簡単にはいきません(笑)。もともとエレクトライクは、郵便配達員さんなど業務用に乗ってもらうことを想定して開発を始め、実際に日本郵便にも採用してくれないかと打診していたものなんです。ところが、『型式認定を取得していないクルマなんて使えない』と門前払い。

そこからスタッフ一丸となって、型式認定に向けて性能基準のチェックをする毎日となりました。本当に気が遠くなるほどの時間と労力がかかりましたね。一番大変だったのは、まあ当たり前のことなんですが、量産しても品質を保てる安全な車であるということを示すこと。このチェックは本当に厳しいものでした」

―松波社長は60歳だった2008年に日本エレクトライクを設立。どうして還暦を迎えてから、電気三輪自動車の開発・製造という壮大なチャレンジを始めたのですか?

「私は高校時代、自動車部に所属し、ダイハツのオート三輪『ミゼット』をイジったりしていたんです。大学入学後はラリーにハマってドライバーをしていました。社会人になってからは父親の会社を引き継ぎ、クルマとは無関係の精密機械の製造・販売をしていたのですが、結局、クルマの仕事がしたくて、後方を映像で確認できるリアビューモニターを開発し、販売していましたね。大ヒットには至りませんでしたが…」

 シャーシ加工の作業もすべて小さな工場内で行なう シャーシ加工の作業もすべて小さな工場内で行なう

想像以上の運転性能!

 集配業務を主な用途に想定。 車体後部のアレンジも可能だ 集配業務を主な用途に想定。 車体後部のアレンジも可能だ

―根っからのクルマ好き!

「はい。それで、05年に川崎市が公募していたビジネスオーディションに、世界一安全で環境にやさしい電気三輪自動車を産学連携で開発するビジネスプランを応募したところ、起業家大賞を受賞しまして、電気三輪自動車を試作することになりました。あまり資金はなかったのですが、意外と評判がよく、08年の当社の起業につながったわけです」

―では、エレクトライクのウリを教えてください!

「今までの三輪自動車は前輪が一輪でハンドル操作するため、車体が不安定になりがちでした。でも、エレクトライクはふたつの後輪にひとつずつ電気モーターを搭載し、ハンドル角度をセンサーで感知して、右に曲がる際は左側の後輪のトルクを上げ、右側のトルクを抜くといった左右後輪の回転数を電子制御することで安全性能を格段に高めているのです」

―シンプルな見た目と違って、かなりのハイテク!

「最高時速は49キロ。家庭用コンセントで充電でき、一度の充電でそれぞれ30kmと60km走れる2タイプを用意しました。このクラスの電気自動車は100万円を切らないと普及は難しいと思っていたので、型式認定により助成金を取得できるようになり、なんとか実質100万円で販売できるようになりました」

なるほど。ということで、いよいよ試乗させてもらうことに…。ひとり乗りのバイクみたいなバーハンドルを採用し、そのハンドルにアクセルがあり、足元のブレーキペダルを踏みながらイグニッションキーを回すとモーターがスタートするという仕組み。

アクセルを少しずつ回しながらブレーキを緩めると、スーッと静かに動き始めた! 強めに回すとスムーズに速度が上がっていく。記者が昔、ピザ配達のバイトをしていた頃に乗っていた三輪スクーターと比べて、カーブでのもたつきがなく、スムーズに曲がれる。想像以上の運転性能だ!

「現在、国際特許を申請中なので、将来的には東南アジアに電気三輪自動車の技術供与が行なえればとも考えています。東南アジアでは現在200万台以上もの自動三輪車が使用されているんですが、排気ガスによる大気汚染が問題になっています。だから、少しずつ電気三輪自動車と入れ替えることで、アジアの空をきれいにしていきたいんですよね」

60代の起業家の夢は、アジアに広がっているのだ。

(取材・文/牛嶋健、昌谷大介[A4studio])