今年4月に80歳で亡くなった「東池袋 大勝軒」の創業者、山岸一雄氏の弟子の間で内紛が勃発、波紋を呼んでいる。 

約60人の弟子で構成される互助組織「大勝軒のれん会」(のれん会)から7月末、16人が脱退。同会に所属していなかった弟子たちとも合流し、31店舗で8月に「大勝軒味と心を守る会」(守る会)を立ち上げたのだ。

「守る会」の代表のひとりである「お茶の水、大勝軒」店主の田内川(たうちがわ)真介氏(38歳)は、「2代目を山岸さんの後継者として認めるわけにはいかない。我々こそが本流」と話しているという。

2代目とは、現在の「東池袋 大勝軒」本店の店主である飯野敏彦氏(47歳)のこと。山岸氏と血の繋がりはないが、生前の氏から直々に2代目に指名され、「のれん会」の頂点に立つ人物でもある。

“つけ麺の父”の弟子たちの間で、一体何が起こっているのか? 生前の山岸氏と深い親交があった業界関係者A氏に「のれん会」の内部事情から語っていただこう。

「『のれん会』の中枢は、飯野氏や山岸氏の親族や長く本店で働いた弟子からなります。対して、分裂した『守る会』一派は山岸氏のみを崇拝する原理主義的な人々で、以前から中枢部とは折り合いが悪かった。それでも山岸氏の目の黒いうちは、表向きには結束していたのですが…」

それがなぜ分裂を?

「どこが主導権を握るかの権力闘争ですよ。例えば、メディアが大勝軒を取材するとなれば、どうしても本店に集中する。すると、他の店は『たまにはウチに来るよう、紹介してくれてもいいじゃないか』と不満がたまります。メディア露出は、客足に大きく影響しますからね」(A氏)

「守る会」を結成してもメリットはない

となれば、矛先はどうしても本店と「のれん会」を取り仕切る飯野氏に向かう。

「田内川氏にすれば、山岸氏との血縁もなく、自分と大きく年も違わない飯野氏を会のトップにいただくのが面白くなかったのでしょう。『なんであいつが2代目ヅラして、おいしいところを全部持っていくんだ』というわけです。一方で、飯野氏は純粋というか子供みたいなところがあって、リーダーシップや器の大きさがあるタイプではない。

だから山岸氏と比べればどうしても人望に欠け、組織を束ねきれずに今回の造反劇を招いた面もありそうです」(A氏)

だが、そうだとしても、飯野氏が山岸氏から本店を託された正統な後継者であることは紛れもない事実。

「『守る会』が飯野氏を認めないというのなら、山岸氏の考えを認めないのと同じ。それは田内川氏らの主義に反することなのではないでしょうか」(A氏)

しかも、「守る会」を結成することで彼らが得られるメリットなど何もないのだ。

「一時的にラーメン好きやメディアの注目が集まったとしても長続きはしないでしょう。さらに『守る会』も近い将来、内部で考え方の違いが出てきて再分裂するのは必至。結局、今回の騒動は各地の大勝軒系の店全体のイメージを悪化させただけです。それでなくても象徴的存在だった山岸氏の死で、大勝軒のブランド力低下が少しずつ始まっているというのに」(A氏)

草葉の陰で、つけ麺の父が泣いてるぞ!