
今年で創業から10周年を迎えた日本の企業に世界から注目が集まっている。
その会社の名前は「ユーグレナ」(出雲充[いずも・みつる]社長)。大きさわずか0.05mmの「ミドリムシ」の培養技術で有名になったバイオベンチャー企業だ。
ミドリムシは約5億年前から地球上に存在するが、「ムシ」ではなく、ワカメや昆布のような藻の一種。ビタミンやミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類もの栄養素をそなえる他、バイオ燃料の精製にも活用できるという。
食糧問題やエネルギー問題を一気に解決する可能性を秘めた、まさに“夢の生物”なのだ。
すでに横浜市や全日空、いすゞ自動車など複数の企業や自治体と連携し、ミドリムシ燃料の実用化を進めているユーグレナ社。横浜市内の京浜臨海部地域に近く実証プラントを建設し、世界進出も視野に入れる。
今や日本の未来を担う企業となったが、ここまでのプロセスは決して順風満帆ではなかったという。
2005年の創業時には、いち早くミドリムシの可能性に注目したホリエモンこと堀江貴文氏の支援を受けていた。しかしその後のライブドア・ショックにより、ユーグレナ社も一瞬、路頭に迷うことになる。
そこで次にサポートを買ってでたのが、文筆家として知られる、元マイクロソフト社長の成毛眞(なるけ・まこと)氏。今度は成毛氏のサポートのもと、IPO(新規公開株)にして1千億円規模の価値を持つ企業にまで成長した。
2005年の創業時から注目していた、堀江氏に話を聞いた。
「(社長の)出雲さんと出会ったのは2005年、ユーグレナ社を設立する前のことです。単なる飲み会の席だったんですけど、女のコとかもいる前でひたすらミドリムシへの思いを熱弁していて、なんだか場違いな人がいるな、と感じたのが第一印象でした(笑)。投資関係者もその場に何人かいましたけど、出雲さんの話を興味を持って聞いていたのは僕だけだったんじゃないかな」
「他社がどれだけ頑張っても追いつけません」
現在、資本関係は解消されているそうだが、出雲社長とは今でもたまに顔を合わせる機会があるという。将来的に堀江氏が取り組む宇宙開発事業との連携もある?
「元々、うちがロケットを打ち上げる際には燃料を提供すると出雲さんから言われているんですよ。ミドリムシ由来の燃料が普通に使えるものだということは最初からわかっていたこと。世間もようやくミドリムシのことを理解し始めてきたようだし、(ユーグレナ社は)企業として順調に伸びていると思いますよ」
ユーグレナの現在の注目度は「想定内」と言わんばかり。実際、ユーグレナ社が見据える自社の未来像は実にダイナミックだ。出雲充社長がこう語る。
「それまで存在しなかった市場を生み出す企業には、他社がどれだけ頑張っても追いつけません。例えば日本では、旨味成分を発見して商品化した『味の素』然り、日本古来の醸造技術を用い、醤油のトップブランドとなった『キッコーマン』などです。
ユーグレナ社はまさしくそういう規模の企業になる可能性を秘めていると思っています。乳酸菌を商品化した『ヤクルト』にしても、今さらアメリカの企業が同じことをやろうとしても周回遅れで勝負にならないわけです」
そうした自社の展望になぞらえて、「日本経済の未来は明るいですよ」とまで言う出雲社長。
確かに、わずか0.05mmの藻の一種が地球を救い、日本経済を牽引していくのだとすれば、これほど痛快なことはないだろう。これからいっそう加速する、ミドリムシの大躍進に注目だ。
●では、ミドリムシのビジネス化実現がいかに困難だったか、この記事の全文は『週刊プレイボーイ』1・2号でお読みいただけます。
(取材/友清 哲)