時刻表を制作する専用ソフトの画面。紙資料の情報をひとつひとつ拾ってデータ化。細かい部分が変わっていることもあるので、一度入力したらコピペ、というわけにはいかない 時刻表を制作する専用ソフトの画面。紙資料の情報をひとつひとつ拾ってデータ化。細かい部分が変わっていることもあるので、一度入力したらコピペ、というわけにはいかない

北海道新幹線が話題を集めた、今年のJRグループダイヤ改正。時刻表の編集部も、北海道新幹線の開業に伴ってページのレイアウトを変更したり大変だろうなと思ったら、大変なのは全く違う別のエリアだった!?

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鉄道ファンに欠かせない1冊といえば時刻表だ。旅行の計画はもちろん、撮影したい列車の時刻の確認、なんとなくペラペラめくっての妄想旅行…。見始めると、ついつい数時間は読み込んでしまうのがファンの性(さが)なのだ。最近はスマホで時刻を調べることも多いが、本数の多い新幹線や特急の時刻を一気に見れちゃう時刻表はやっぱり便利!

そんな時刻表を編集する、JTBパブリッシングの大内学編集長に今回のダイヤ改正について話を聞いた。

―今回の改正、目玉はやっぱり北海道新幹線ですよね。新幹線が開業すると、平行する在来線が第3セクターになったり、特急が廃止になったりするので、ページを構成するのが大変だったのでは?

大内 確かにそのエリアもいろいろありましたが、それよりも難解だったのが広島エリアです。

―広島って、新しい特急とかデビューしましたっけ?

大内 普通列車、快速列車の時刻が平日と土休日で随分と変わりました。今までは、1本の列車時刻を1行で表記していたのですが、ダイヤ改正号からは平日の時刻と、隣に土休日の時刻、2行使わないと表記できない列車が増えて、スペースが足りなくなりまして。

―ならページを増やせばよいのでは?

大内 時刻表は、そうはいかないんです。第三種郵便という制度をご存じですか?

―雑誌などを割安な料金で郵送できるシステムですよね。

大内 あの制度で料金の割引ができるのは重さ1kgまで。時刻表はすでに1000ページ以上あって、重さも毎号900g後半。簡単にページを増やせないんです。

―調べたら、1kgジャストの第三種郵便だと214円なのが、1kgを超えたら定形外郵便物となって一気に870円! 定期購読で買っている会社や鉄道ファンも多いでしょうし、この差は痛いですね。

大内 そこで山陽本線のページを、今までは岡山駅から小倉駅でひとつのブロックにしていたのを、土休日に大きく時間が変わる岡山駅から岩国駅と、さほど変わらない岩国駅から小倉駅に分割して、ページの増え幅を最小限にしました。それと、北海道では多くの線で普通列車が減ったので、石北本線のページを1ページにするなど、やりくりをしたのですが…。

―解決できなかった?

大内 はい。それでやむなく、長年掲載していた国際線の航空時刻表の掲載を終了しました。もともとJTB国際線時刻表を発行してますので。そうしたら、ずっと使ってくれているJTBの店舗から「どうしてなくしたんですか?」と問い合わせが。

―時刻表には重量との戦いなんてあったんですね。

大内 990g台でギリギリクリアすることも、しょっちゅうあります。

タモリさんの表紙が夢です!

 1000ページ以上ある列車時刻表を毎月すべて確認する大内編集長 1000ページ以上ある列車時刻表を毎月すべて確認する大内編集長

―プロボクサーに話を聞いているみたいです…。ところで、時刻表というのはどのように作られているのですか?

大内 ざっくり言いますと、毎月、JR各社から時刻に関する紙資料をもらって、そこに書かれた暗号のような文字をパソコンに打ち込みます。そしてどの位置にどの列車の時刻を並べるかを決め、間違いがないかを何重にもチェックして印刷していきます。

―あの、JRから「紙」の資料をもらうとのことですが、「メールでデータをもらう」でなく?

大内 はい。まず各社から列車の時刻は紙資料で届きます。それも専門用語がいろいろ一緒に書き込まれていて、一般の方には解読できないでしょうね。このデータを間違いのないよう読み解いて、時刻や運転日などの情報をパソコンに打ち込みます。

―打ち込みはエクセルとかで?

大内 いえ、時刻表編集の専用ソフトがあります。情報を打ち込むと、画面に列車が表示されて、それを見やすいように並べ替えます。

―そして、チェックを何重にもするって、すごく大がかりですね。

大内 数字をひとつ間違えるだけで、列車に乗れない人が続出して大変なことになるので、時刻表で数字のミスは絶対に許されません。そこで、自分が担当したページはもちろん、他の編集部員の担当ページも元の資料と照らし合わせて間違いがないか確認します。多くの人が確認することでミスが出ないよう心がけています。

―時刻表といえば、表紙は鉄道車両だと思うのですが、最近は表紙に松井玲奈(れな)さんを起用するなど、JTB時刻表が「勝負」に出ている感じがします。

大内 3年前に、編集部で「時刻表って雑誌だよね。ということは、今載せたいもの、その時に旬なものを載せるべき」という話になりまして。それからは“今”を感じさせるものを表紙や巻頭のカラーページで紹介しています。

松井さんの時は、彼女が鉄道好きだとSKE48好きの編集部員に聞いて、ダメ元でお願いしたところ、快諾していただきました。反響がとても大きく、「生まれて初めて時刻表を買ったよ」という声もありましたね 。 ―今後も芸能人が表紙に登場する可能性は?

大内 いろんな方に出ていただきたいですよね。いつかタモリさんに表紙に出ていただくのが夢です!

『週刊プレイボーイ』16号(4月4日発売)では大特集16Pで「春の鉄道ニュース祭り」を掲載。「祝 北海道新幹線開業!新函館北斗駅リポート」から「注目の観光列車ガイド」まで盛りだくさん! そちらもチェックしていただきたい。

(取材・文/渡辺雅史(リーゼント) 撮影/関根弘康)