パワーハラスメント――この言葉が世に出始めた頃は「俺が若い頃はそんなの普通だった」「最近の若いやつは…」と愚痴る上司がよくいたものだが、その後じわじわと普及し、今ではすっかり世間に浸透している。
では、パワハラの数は減ったのか?
意外にも、実際は違うようだ。厚生労働省の調査によると、2015年度に各地の労働局などに寄せられた「職場でのいじめ・嫌がらせ」に関する相談が過去最高を更新したというのだ。
パワハラというと、頭ごなしの叱責や理不尽な罵倒(ばとう)などがわかりやすい例だが、そんなの、まともな会社なら今どき一発アウトのはず。なのに、なぜ減っていないのだろう?
都内の専門商社に勤務する30代男性が証言する。
「うちの上司は常に連絡しないと気が済まない性分らしく、土日であっても、平気で仕事のメールや電話をしてくる。緊急の要件なら仕方ないですが、月曜になってからでも済むような内容がほとんど。返信しないと『なんで既読スルーなの?』と言ってくるし、電話に出ないと鬼着信。
部下の行動を監視していて、後ろからこっそりPCをのぞき見されるし、ほかの部署の先輩と打ち合わせをしていたら『仲いいんだな』ってなぜか機嫌が悪くなる。まるで束縛癖のある彼女みたいで疲れるんですよ」
休日に部下と会おうとする上司
大手広告代理店で営業を担当する20代男性は「休日に部下と会おうとする、おせっかいな上司がいる」と疲れた顔で打ち明ける。
「その上司は料理が趣味なんですけど、ひとり身で彼女もいないから休日に部下を家に呼ぶ。駅近くのスーパーで待ち合わせて、一緒に買い物をするところからスタート。料理は上司の担当で『おまえは座って待ってりゃいいよ。いつも頑張ってるからな』と言う。
でも、肝心の料理の腕は今ひとつ。僕が以前、『おいしいです』と言ってしまったばっかりに毎週、大してうまくもないチャーハンを山盛り食べさせられる。満腹でも『遠慮せず食べろよ』と言うし、『若者は揚げ物が好きだ』と思い込んでるから、から揚げもやたら出される。正直、心も胃袋もキツい」
過去最高の件数に増えているだけでなく、パワハラの中身もどんどんキツイものになっているようだ。そのバリエーションも世話を焼きたがる「兄貴型」であったり、部下の休日もお構いなしの「束縛型」であったりと様々なタイプの存在が証言されている。
プライベートのことまでズカズカ踏み込んでくる様子は、まるで「彼女」だ。
月曜発売の『週刊プレイボーイ』28号では、こうした“彼女面上司”が増えている背景を分析。彼らのパワハラに負けないためにも、是非そちらも参考にしていただきたい。
(取材・文/テクモトテク)