忙しい社会人の夜食に、学生の間食に…われわれの生活に密接している日清食品「カップヌードル」が今月で発売45周年を迎えた。
日々何げなく食べているカップヌードルだが、世に出るまでに実はいろんな裏話&苦労話が…!? ブランドマネジャー・藤野誠氏を直撃した!
(前編記事⇒『定番から変り種まで「カップヌードル」45周年クロニクル』)
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―「カップヌードル」誕生の経緯とは?
藤野 日清食品を創業した安藤百福は1958年に世界初の即席麺「チキンラーメン」を発明したんですが、これをアメリカに売り込みに行った際、アメリカ人が「チキンラーメン」を小さく割って紙コップに入れ、フォークで食べ始めたのを見て「世界中で食べてもらうためには、食習慣の壁を越えねば」と安藤が思ったのが最初ですね。
―最初から世界を視野に生み出されていたわけですね。
藤野 そうです。実はレギュラーの「カップヌードル」は醤油味ではないんですよ。世界中で親しまれるようにコンソメをベースにしつつ、洋風でありながらも日本人が抱くラーメンのイメージになるようにメンマの風味を加えてます。なので「カップヌードル」は醤油ではなく、あくまで“カップヌードル味”なんです。
―今まで膨大な種類の商品が出てますが、製品化の基準は?
藤野 実際のラーメンブームから世界の料理の流行まであらゆるものからヒントを得て、どうやったらカップヌードル流にアレンジできるかを考えるので、なんでも候補にはなります。ただ最終的に試食したトップ(社長)のゴーサインがないと出さないっていうのは創業者の時代から変わらないですね。
―今まで一番苦労したのは?
藤野 最近だと「パスタスタイル」シリーズです。通常のカップだと口径が小さくて箸やフォークで混ぜられないし、大きすぎると女性が片手で持てなくなってしまう。それに注ぎ口と湯切り部分のバランスなど、設計には本当に悩まされました。
長年の伝統を破ったトムヤムクンヌードル
―新フレーバー自体の開発はどうですか?
藤野 2年前に発売した「トムヤムクンヌードル」の開発は大変でした。「トムヤムペースト」という小袋を付けようという話になったんですが、レギュラーサイズはお湯を注ぐだけで食べられることが発売当時からの絶対条件。それでも、小袋を付けることで明らかに味と香りがよくなるので、長年の伝統を破ってでも商品化されました。
―常に変化が求められているということですね。
藤野 はい。容器も8年前に発泡スチロールから紙へと変更してますが、紙容器になれば通常、縁が紙コップのように丸くなってしまう。でも口をつけてスープを飲むときに、縁の形状が変わると味わいも変わるので、そこはひと手間をかけて従来と同じ四角くなるようにしてます。あと、持った感触も昔と違わないように、表面を発泡させていたり。こういう“変わらなさ”も大事なんです。
―ものすごいこだわり…これが「カップヌードル」!
(取材・文/武松佑季[A4studio])