「冷たいソフトクリームの食感を、温かいソフトクリームで実現させたいね」(白石会長) 「冷たいソフトクリームの食感を、温かいソフトクリームで実現させたいね」(白石会長)

総務省の「家計調査」によると、日本でアイスクリームの年間消費量が最も多い地域は石川県だそうだ。その県都、金沢市で革命が起きていた! なんと温かいソフトクリーム、通称“ホットクリーム”が発明されたのだ!

開発したのは食品の研究、製造・販売を手がける「日本海藻(かいそう)食品研究所」。卵白と水あめ、凝固剤を独自にブレンド。暑い部屋の中でも溶けない、温かいソフトクリームが実現したという。

これはぜひ食ってみたい!ということで早速、金沢の研究所にお邪魔しました! すみませーん、“ホットクリーム”の味見をさせてくださ~い。

「そんな名前じゃないよ!」

突然、そう言い放ったのは、研究所の白石良藏会長だ。

「“ホットクリーム”と名づけたのは地元紙の記者で、僕はまだ名前を決めてない! 先月28日に『温かいソフトクリーム』を完成させたんだけど、ネタを嗅(か)ぎつけたその記者が勝手に記事にしちゃったんだ。まだ発表するつもりはなかったんだけどな~。昨日(1日)なんてマスコミや食品メーカーからの電話が鳴りっぱなし。アナウンサーの羽鳥慎一さんも何かの番組でやって来たから相手をしないといけないし。もう仕事にならないよ!(ニコニコ)」

ところで、なぜ温かいソフトクリームを作ろうと?

「きっかけは10年前。ソフトクリームで手がベタベタの子供がお母さんの服を汚し、叱られているシーンを目撃した。それで『溶けないソフトクリームがあれば、怒られないのに』と思い立ったんだ。

その3年後、『溶けにくいソフトクリーム』を開発。そして今年、絶対溶けない『温かいソフトクリーム』がやっと完成したってわけだよ」

白石会長によると、温かいソフトクリームの適温は60℃ほど。冷めた後もレンジなどで温めれば、形状を維持したまま温度も復活するという。

では、ついに試食! ちょうど60℃のソフトクリームを舐(な)めてみると……思ったほど熱くない。肝心の味はコクと塩気があってけっこうウマい! ただ、食感は微妙だ。ソフトクリームのペロッと舐めて舌先で溶ける、あの感じがない。クリームがフワッと軽いので、口内でコロコロし、舌と上アゴで挟むとジワッと溶ける。ソフトクリームの食感を期待していたので、少しガッカリ。

とはいえ、こんな食べ物を味わうのは初めて。売り出せばブームになるかも、と思いきや、「まだ販売の予定はないよ」(白石会長)とのこと。金沢の新名物になるのは、少し先になりそうだ。

(取材・文/河合桃子)