「公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団」の2016年3月の調査によると、日本のカーシェアリングの車両台数は1万9717台。
これは前年度から約20%増えているが、うち1万6千台がなんと「タイムズカープラス」の所有。参入後わずか8年で、もともと所有している約1万5千ヵ所のコインパーキングを拠点にすることで急成長した。
しかし、カーシェア業界で一番の老舗は15年の歴史を持つ「オリックスカーシェア」。グループ内でレンタカー事業を運営し、車の調達はお手のものだが、タイムズのような拠点がない。
ちなみに料金形態を比較すると、固定金額でシンプルなタイムズに比べ、オリックスはプランが多くわかりにくい印象。実際、両社のステーションに足を運んでみたが、タイムズは黄色いカーシェアの看板やのぼりがとにかく目立つのに対し、オリックスは一見、月極駐車場と見間違えるほど地味だった。経済評論家の加谷珪一氏はこう分析する。
「コインパーキングのタイムズの知名度は大きな武器ですが、この2社はカーシェアをまったく違う発想で運営していると思います。オリックスはレンタカー事業が強いので『車を貸す』発想。一方、タイムズは『ITを使ってサービスを提供している』という発想。それが両者の明暗を分けている最大の理由だと思います」
タイムズは駐車場の稼働状況をITでリアルタイムに管理できる「トニック」というシステムを利用。これによって運営側は駐車場ごとに適したマーケティングが実施でき、一方のユーザーもリアルタイムで空車情報が把握できる仕組みとなっている。タイムズではこれをそのままカーシェア事業に応用して成功した。
「オリックスに必要なのは、ITベースのサービス強化に尽きます。そのためにはネット業界と提携するなど抜本的改革が必要です」(加谷氏)
タイムズも「マツダレンタカー」とのM&Aにより、弱点だった車の確保を可能にした経緯がある。オリックスは資本が大きいので「いっそ楽天あたりと組むのもアリではないか」と加谷氏。これができれば大逆転も不可能ではない?
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(取材・文/井出尚志 渡辺雅史 高山 恵[リーゼント])