日常生活で利用している人も多いであろうパスケース。そんな中、株式会社ケンエレファントの「車両型パスケース」が注目を集めている。
車両を模したリアルな作りや、パスケースからSuicaのペンギンがのぞくカワイいデザインが受け、鉄道ファンはもちろん、若い女性にも人気を博している。SNSが発端となって話題になったが、なんと発売は2年前だとか。
一体なぜ今、そこまで火が着いたのか! この疑問を解決すべく、パスケースの制作を担当したホビー&ライセンス事業部、営業課の池ヶ谷聡史さんと制作課の伊藤裕さんに話を伺った。
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―今、御社のパスケースが話題になっていると伺ったのですが。
池ヶ谷 今年4月半ばのある日、ツイッターで話題になったようなのですが、その2、3日後から問い合わせがものすごく増えて、それまで十分にあった在庫もなくなり、通販サイトでは欠品が続いていました。
―まずツイッターで火が着いたんですね!
池ヶ谷 今は再生産も完了し、ご購入していただきやすい状態になっていると思います。今回、ツイッターで話題になった車両がベージュベースに赤でラインの入った国鉄特急色のクハ489-1だったからか、この商品のお問い合わせが多かったですね。
ちなみに、今までは「寝台特急北斗星」が人気だったと思います。今になってこんなに話題になるとは思いませんでした。
―思わぬところで、と。発売開始が2年前とのことですが、開発のきっかけは?
池ヶ谷 元々、ヘッドマークラバーコースターや食器など鉄道グッズを作っていました。他に新しいものを作りたいという話が出た時にお店の方から「電車の形のパスケースなんかいいんじゃない?」というアドバイスをいただきまして。話をしていくうちに、窓部分に穴を開けてSuicaのペンギンがそこから見えたらいいんじゃないか、というような話になったのがきっかけです。
―お店の方の声を参考にして作られたのも素敵ですね! 現在、車両型のパスケースは全部で10種類とのことですが、ラインナップはどのように決定を?
池ヶ谷 まず、2015年に発売した第1弾と2016年に発売した第2弾に分けられます。元々、子供が喜ぶような商品にしようと思ったので、第1弾は新幹線など子供に人気の車両を中心にラインナップを決めたのですが、「北斗星」や臨時寝台特急列車の「トワイライトエクスプレス」の通常運行がなくなるタイミングだったので、ラバーコースターでも特に人気の高かったこの2車両もラインナップに加えました。
第2弾ではどちらかといえば大人向けにしようかなと思い、通勤車両としても利用者が多い山手線や総武線、国鉄の489系電車、SLなどをラインナップしました。
特にこだわりのポイントは?
―ちなみに元々、鉄道にお詳しかったのですか…?
池ヶ谷 いや、特に詳しいということでもなかったですが、仕事を通して覚えて、興味を持ち始めたという感じでしょうか。
―鉄道って根強いファンが多数いる分野ですよね。そこに飛び込むのってすごく勇気がいることでは?
池ヶ谷 実際の現場ではいろんな人に話を聞いたりして、やりながら学ぶことが多いです。熱烈なファンの方も多いジャンルですので、間違いがないように細やかな部分まで確認しながら、ひとつひとつ時間をかけて作っています。
―色味やデザインなど、特にこだわりのポイントは?
伊藤 窓の大きさを見ていただくと、車両によって異なっているんです。できればすべての車両でSuicaペンギンの手がちょっと見えて、中から手を振っているイメージにしたかったのですが、実際の縮尺を基準としてデザインをしているので、ものによって見え方が少し違ったりするのもポイントですね。
―ものすごいこだわり! 今まで電車のカーテンとか気にしたことがなかったのですが、トワイライトエクスプレスのパスケースはレースのような形でカワイいなと思いました。
伊藤 これは食堂車なのでカーテンがレースになっているんです。窓の位置や全体的なバランスもありますが、車両によって、できるだけ特徴のある部分を使用しています。
―ええ! そんなところまで…。では、この12という数字にも何か意味が?
伊藤 これは車両番号です。制御車両なので、客車とはデザインが異なります。客車は金色のラインが真っ直ぐなのですが、12号車はこの金色のラインがカーブしています。また、行き先方向幕も入っているのでE7系新幹線とわかりやすいんです。
ちなみに、車両の選定もそうですが、色合わせもなかなか大変。実際の色味はアイボリーの車両でも、ラバーで表現すると薄汚れているように見えてしまうので、白に変更したりなんていうこともありました。
0系の新幹線や新旧の山手線も入れたい
―実際の車両を見に行かれたこともあるんですか?
伊藤 写真を見て作業することもありましたが、カメラを通すと実際の明るさと違ったりもするんですよね。見に行って、車体に色見本を当てたりしていると、変な人だなって思われているのかなと心配になることも…(笑)。
―確かに「なんか怪しい人?」という目で見られそうです(笑)。
伊藤 また、パスケースの機能として工夫した点もあります。ラバー生産の都合上、どうしても裏面がツルっとした質感になってしまうのですが、パスケースだと、実際にSuicaに触れる中側がツルっとした質感になります。
Suica自体も表現がツルッとした素材でできているので、Suicaとパスケースの内側がぴったりとくっついて出し入れがしにくくなってしまうんです。なので、内側になる部分につや消しのプリントをして、本来はツルっとしている内側をあえてマットにし、摩擦を減らしてラバーとSuicaがくっついてしまわないようにしています。
―使いやすさという点でも工夫をされているんですね! では最後に、今後新しい種類のパスケースの開発などもすでに検討されたりは…?
池ヶ谷 まだ、企画段階ではありますが、東北新幹線が今年35周年なので200系の新幹線や、新旧の山手線なんかも入れたいなと思っています。
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思わぬところで話題になったラバーパスケース。見た目はもちろん、使いやすさにまでこだわり抜いた商品が電車に乗る時間以外にも楽しさを提供してくれているようだ!
(取材・文/内田静穂[short cut])