2012年にテスラと共同開発したRAV4 EV

6月、7月とEV(電気自動車)にまつわる大きなニュースが世界中から飛び込んできた。

果たしてEVが次世代自動車の主流になるのか。自動車評論家、小沢コージが総力取材した!

* * *

いよいよ日本車勢のケツに火がついてきた。そう、世界のEV(電気自動車)開発大戦争が始まったのだ。きっかけは北米プレミアムEVメーカーのテスラだ。潮目が変わったと思ったのは今年6月に判明したトヨタによるテスラ株の全売却だ。「えっ、そもそもトヨタってテスラの株持ってたの?」って思った人も多かったようだが、トヨタは2010年5月にテスラ株の3.15%を購入。

当時、トヨタは儲けようと思って購入したわけではない。最初は友好ムードバリバリで、トヨタは不良債権化していたGM(ゼネラルモーターズ)との合弁工場、カリフォルニアのヌーミをテスラに安く買ってもらい、同時にEV開発で業務提携を行なうとも発表した。2012年には人気SUVにテスラのEVシステムを載せた約550万円の「RAV4EV」をカリフォルニア州で発売するほど仲が良く、まさに蜜月関係にあった。

というのも、当時のテスラは市販ロータスをベースにEV化した「ロードスター」が話題になっていたくらいで、海の物とも山の物ともわからない微妙な存在であった。そこで日米友好もあるし、援助しようじゃないかとなった。いわば、お世話になってる北米大マーケットのお坊ちゃまベンチャーが船出するので、お手並み拝見がてら世界のトヨタが「胸を貸しましょう」というノリだった。

ところが、その後である。2012年に800万円のプレミアムEVセダン「モデルS」を発売するとテスラは大化け。世界中で売れて、高級車の世界をガラリと変えてしまった。そして、2016年にはSUVのモデルXと合わせて日産の「リーフ」をしのぐ8万4000台弱のEVを生産! 今年4月にはテスラの時価総額が一瞬ではあったが、GMを超え、まさかの米自動車企業でトップに立った。だが、トヨタとテスラのEV開発は難航し、両社の協業は冷え込む。米のベンチャー企業と日本の大企業では考え方がだいぶ違ったようだ。

結局、EVの共同開発は進むことなく、2014年にはテスラがトヨタへのバッテリー供給を打ち切った。もはや共同開発が進む見込みがないため、トヨタは昨年末までにテスラ株を全部売って業務提携を解消。

もちろん、5000万ドル(約55億円)で購入したテスラの234万株が約10倍に跳ね上がり、売却益500億円規模というのもトヨタ的には大きいんだろうが…。

◆『週刊プレイボーイ』31号(7月15日発売)「世界EV大戦争が始まった」では、各メーカーの戦略を分析。そちらもお読みください。

(取材・文/小沢コージ 写真協力/トヨタ自動車)