「これから先は人口も減っていきますし、あらゆる意味で人の奪い合いになるので、マンション規模が大きいほうが問題を解決しやすいと思います」と語るのらえもん氏

マンション価格がバブル期を超えるなど、東京オリンピックを前に高騰が著しい住宅市場。

人生で一番高い買い物なだけに、「今買うべきか、それとも待つべきか」と悩んでいる人も多いのではないだろうか? 

そこで、『マンション購入を真剣に考えるブログ』の運営で知られ、このたび、『絶対に満足するマンション購入術 不動産のプロ達は大事なことを隠している!』を上梓(じょうし)した有名マンションブロガー、のらえもん氏に、ぶっちゃけどうするのが一番お得なのか聞いてみた。

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──新築マンション価格は正直、数年前に比べたらかなり高い?

のらえもん 肌感覚的には、この5年で2~4割くらい上がってますね。場所によってはもっと上がっている所もあります。同じ値段だと「ざっくりひと部屋分、部屋が狭くなっている」ということです。

──「東京オリンピック後は景気が悪化するから、マンション価格も下がるはず」との声も聞きますが、実際どうです?

のらえもん そのように考えている人はいっぱいいます。ですが、新築マンションの価格って、コストの積み上げによって決められるものであって、今は「土地原価も建築原価も高いから、安くしようがない」というのが現実。デベロッパーも赤字で売るわけにはいきませんから。

また、比較対象としてリーマン・ショック後の話を持ち出す人もいますが、確かに当時は一部の物件が安く売られていたものの、あれって潰れそうになったデベロッパーが現金化を急いでいたからなんです。

今は資金力のある大手が市場を寡占しているので、同じようなことが起きるとは考えにくい。ちなみに、今、仕入れている土地が新築として売られるのは3、4年後。そのため、今後はさらに上がる可能性もありえますよ。

──数年後にまだ値上がりしているとか恐怖です......。

のらえもん でも、それは新築物件だけの話。中古は変化が比較的穏やかです。売り主は基本的に個人ですし、離婚や相続で売り急ぐ人は一定数いるので、安く買うチャンスもあります。

景気が怪しくなって客が少なくなると、売り急ぎの物件から下がるでしょう。ただ基本的に、家って人生の節目に買うものであって、売り急いだ物件が出るのを待つのは、個人的にはナンセンスだと思いますね。

──人の離婚などに合わせて家を買うってことですもんね。一方、戸建てかマンションかも悩みがちなポイントです。

のらえもん マンションという住宅形態は、夫婦と子供ふたりくらいまでにフィットした商品です。それ以上の人数になれば当然、戸建てが第一選択肢になる。

ただ、都内でそれなりの場所に一戸建てを買おうと思うと、8000万円ほど支払っても上下移動が多い狭小の3階建てというケースも多く、悲しい買い物になるのが現実です。

そこに35年ずっと住み続けるならまだしも、相続や転勤、親の介護などで手放す可能性を考えると、換金性が悪くなります。だからこそ、この本では「売ったり貸したりすることを逆算してマイホームを購入しよう」と伝えているんです。

──確かに、「ローン残額より物件価値が高くなる物件を選ぶ」ことを繰り返し説かれています。では、売却の際に損しないため、心がけるポイントは?

のらえもん ひとつは人口が増えるエリアを狙うこと。今後の日本は全国的に人口が減少していきますが、東京の港区や中央区など増える地域もあるんです。人口増減の予想データは公開されているのでチェックしてみてください。

もうひとつは、大きなマンションを買うということ。今後、住宅価値を維持するには日頃の管理が重要なのです。500戸ある大規模マンションは5戸抜けてもさほど影響がない一方で、10戸のマンションだと1戸、2戸抜けただけでダメージが大きいんです。

これから先は人口も減っていきますし、あらゆる意味で人の奪い合いになるので、マンション規模が大きいほうが問題を解決しやすいと思います。

──となると、売却を視野に入れるとタワマンは現実的な選択肢になってきますよね。

のらえもん そうですね。加えて、タワマンは建物自体がシンボリックであるという長所もあります。眺望の良さ、豪華なロビー、広い車寄せなどは多くの人が共有できる価値ですし、選択する上で合理的な理由と言えます。

「売るときのことを考える」というと難しいかもしれませんが、買う側の目線で考えてみるとわかりやすいでしょう。自分が内見に行くとして、タワマンならまず最初に外観に「おっ」と驚く。

部屋に入って眺望の良さを味わった後、ラウンジやジムなどの共有施設を見て豪華さに驚く......。小規模のマンションだと、ただ部屋に案内されて値段を知らされるだけですけど、タワマンだと、生活感が出にくく、夢を見せやすいのです。

なお、タワマンは維持費が高いのですが、月1万円のコスト増なら10年間でトータル120万円。この金額より値下がりが小さくなれば得ということですし、実際、過去のデータを見ても損しにくいんですね。

──自分の好みかはさておき、「売りやすい」という点で考えると確かによさそうです。

のらえもん ただ、最近のタワマンは共用部がショボくなってきていて、ちょっとオススメしにくいところもあります。震災後に建てられたタワマンは、絆が重視された当時の空気感のせいか、共用部が充実した企画が多かった。ところが、最近はそんな余裕がなくなってきたのか専有部だけでなく共用部まで簡素化が進んでいます。

──最後に週プレ読者にオススメの物件を教えてください!

のらえもん マンションブロガー的には、晴海フラッグ一択。東京オリンピック・パラリンピックの選手村跡地を利用した大規模マンションなのですが、デベロッパーの土地の仕入れ値が坪9万円というありえない価格で仕入れたこともあって、建物や構造にとてもお金がかかっているんです。維持費は高いのですが、3LDKで5700万円台~と、最近の市場を考えると正直かなり破格の物件です。

もちろん人にはいろんな価値基準があるので、このマンションが響かない人もいると思います。近い棟でも勝どき駅から徒歩15分くらいとそれなりの距離があるので、それをいやがる人もいるでしょうしね。でも、マンションブロガーは建物そのものを愛しているので、どうしてもそこを重視しちゃうんです。

●のらえもん
マンションブロガー。湾岸タワーマンション在住。湾岸不動産総合ブログ『マンション購入を真剣に考えるブログ』を2011年9月より運営。著書に『本当に役立つマンション購入術 専門家は絶対に教えてくれない!』(廣済堂新書)、『住んでみなければ絶対にわからないタワーマンションほんとの話』(三交社)がある

■『絶対に満足するマンション購入術 不動産のプロ達は大事なことを隠している!』
(廣済堂新書 900円+税)
人生で一番高い買い物である「家」だが、このご時世、せっかく買った家を手放す可能性は誰にでもある。しかし、頼みの綱の不動産会社は簡単に信用できず、マンション価格も年々高騰し、買い時が難しくなっている状況に悩みを抱える人は多い。本書では、徹底的な「消費者目線」から嘘のない情報を誠実に発信する人気マンションブロガー、のらえもん氏がマンション購入&売却を徹底指南する!

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