通勤時間帯や帰宅時間帯に全席指定を増発した京王ライナー

客をたくさん乗せないと儲からないが、乗せすぎると密になる。ウィズコロナ時代で、そんなジレンマを抱える鉄道やバス。一方、密が避けられるとして注目の自転車。乗り物業界の現状は?

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JR東日本が来春のダイヤ改正より終電の時間を早めることを発表。コロナ時代に対応した動きがクローズアップされている鉄道業界。そんななか、ひと足早く動きだしたのが京王電鉄だ。

10月30日にダイヤを改正。終電の繰り上げこそ行なわれなかったが、朝の通勤時間帯や夜の帰宅時間帯に全席指定の「京王ライナー」を増発。ラッシュの時間帯に密を避けて移動できる電車の増発は時代に合った動きといえるだろう。

乗りものライターの恵 知仁(めぐみ・ともひと)氏も各社の動きに注目する。

「JR西日本は特急に割安で乗車できる『J-WESTチケットレス』のサービスを開始。特急を利用しやすくして分散乗車を図っています。東海道新幹線では非接触でチケットが買える『エクスプレス予約』や『スマートEX』の利用を促進しています」

京王ライナーは、新宿-京王八王子を結ぶ電車と、新宿-橋本を結ぶ電車の2種類がある。今回のダイヤ改正で18時台、19時台の電車を増発、深夜0時台の電車の運行は取りやめとなった

格安だけど密なイメージのある夜行バスにも新しい動きが。

「全席個室の『ドリームスリーパー東京大阪号』が割引キャンペーンを実施。密を避けた個室移動を前面に押し出しています」(恵氏)

東京の池袋・新宿と大阪の梅田・難波を結ぶ個室バスの定員はわずか11名。12月15日までのキャンペーン期間は、新幹線のぞみ号の指定席よりも安い価格で東京-大阪間の移動が可能だ

通勤手段で注目されている自転車の状況はどうか。NPO法人自転車活用推進研究会の理事・疋田 智(ひきた・さとし)氏に現状を聞いた。

「3月ぐらいからコロナの影響もあって大手販売店の売り上げが増加。ただ、自転車の部品は中国で作っているものが多いので、現在は商品が入ってこないという状況です。私の周りでも『2、3ヵ月待ちだよ』という人がけっこういます」

そこで、都内ではシェアサイクルの利用が進んでいるという。

コンビニの前にあるシェアサイクルのポート。スマホのアプリを操作して手続きを取れば、置いてある自転車を利用することができる

「4、5年前、利用する人は欧米系の観光客ばかりでしたが、今は貸し出しポートや自転車の台数が増えて、利用者の増加を実感しています。もともと東京オリンピックに合わせて整備を進めてきたので、今が一番利用しやすい状況だと思います。電動アシストタイプですし、坂が多い東京では、今後注目される乗り物になるかもしれませんね」

これからは座れる電車でターミナル駅へ行き、そこからシェアサイクルで会社へ向かう。出社しなければならない日は、こんな通勤風景が当たり前になるかもしれない。