4月に発売開始されたコンパクトSUV、2代目ヴェゼルが、月間目標台数の6倍と絶好調! なぜこんなに人気? おなじみ自動車ジャーナリストの小沢コージが大人気のヤリスクロスなどと比較し、人気の秘密と実力をガッシガシ解説。
■新型ヴェゼルは、ニトリ大作戦に出た!
小沢 ホンダファンに朗報だぜ! コンパクトSUVの2代目ヴェゼルが発売1ヵ月で受注3万2000台と大爆発! ぶっちゃけ、昨年末にマイチェンしたときのN-BOXよりも売れている! N-BOXに続くホンダの新しい屋台骨誕生でしょう。本来、エース級に売れないとマズい4代目フィットがイマイチなだけに、ヴェゼルの爆売れでホンダも安堵(あんど)したはず。
――そもそもヴェゼルはどんなクルマなんスか?
小沢 初代ヴェゼルは2013年末に登場すると、瞬く間に人気大爆発! 14年から3年連続、そして19年も国内SUV販売でぶっちぎりのトップに立った。世界累計は384万台で、まさにホンダの戦略車。それだけに絶対に失敗が許されないクルマでもある。ところが、2代目は過去に例がない大胆戦略を取ってきた。コイツはホンダの"ニトリ大作戦"よ!
――えっ、どういうこと?
小沢 2代目ヴェゼルの開発エンジニアも「今回は特に力を入れた」と話していたが、まず驚いたのは自らの掟(おきて)を破ったデザインよ。ホンダは初代が売れたら2代目は必ず正常進化路線がお約束なの。2代目フィットも、2代目オデッセイもそうだった。
ところが2代目ヴェゼルは、初代とはまったく異なるクオリティとデザインで勝負に出た。横の抑揚をあえて抑えたストレート基調で、それでいて彫りの深いデザインがスゴい。
――ちなみにネットでは、そのデザインについて、「フロントマスクはマツダ、リアはトヨタのSUVに激似」「コレはヴェゼルじゃなく、CX-ハリアーだ!」などと揶揄(やゆ)されています。
小沢 それは日本人がデザインを2次元でとらえるクセがあるからなんだよ! 立体で見ると全然違って超オシャレ。最近のホンダデザインのなかでは間違いなく秀逸でクール!
――なるほど。で、ニトリ大作戦って結局なんなんスか?
小沢 2代目ヴェゼルの車内の広さとインテリアのクオリティはマジでスゴいワケ。それでいて価格は約228万円スタートと超お買い得! まさに"お値段以上"なんだってば!
――なぜ、そんな価格を実現できたんスか?
小沢 骨格は初代のキャリーオーバーで上手にコストを下げ、同時にボディ剛性は上げて性能を良くした。さらにリアシートは広くなり、身長176㎝のオザワが座っても膝前に握りこぶしが3つ入る。
それでいてラゲッジ容量は390Lをキープしているからハンパない! 上級グレードは革風素材のプライムスムースを上手に使い、上質に仕上がっている。シートクッションもフランス車並みに柔らかい。
――走りは?
小沢 ハイブリッドはフィット譲りの2モーター式で加速はほぼ100%電動。電動風味が今まで以上に強く、特に発進はEVっぽくて気持ちいい。つけ加えると燃費も良好で、WLTCモードで25㎞。実燃費も20㎞前後を誇る。
――ズバリ聞きますが、現在、日本で一番売れているコンパクトSUVであるヤリスクロスと2代目ヴェゼル買うならどっち?
小沢 両方! というのも、確かに売れ筋の価格はかぶるけど、厳密に定義すると、ヤリスクロスは全長4.1m台のSUVで、ヴェゼルよりチト小さいんだよ。
――同じコンパクトSUVでも比較対象にはならないと?
小沢 いや、どちらも1.5Lのガソリンと1.5Lのハイブリッドが選べる5人乗りSUVで、ラゲッジ容量はどちらも390Lで差がない。大きな違いはリアシートの広さとクオリティ。
オザワがヤリスクロスに乗ると膝前に握りこぶしがひとつ程度。だから大人2名で乗るならヤリスクロス、家族5名で乗るならヴェゼルって感じ。あるいは大勢で長距離を走る人にもヴェゼルがオススメ。後席の居住性が全然違うからね。
――インテリアはどうです?
小沢 インテリアのクオリティもヴェゼルのほうが上。ヤリスクロスは少々やぼったく、ヴェゼルのほうがオシャレ度は高いね。リアシートのフカフカ度もヴェゼルの勝ち。
――エンジンは?
小沢 正直、ヤリスクロスはガソリンもハイブリッドも1.5Lの3気筒だが、ヴェゼルは1.5Lの4気筒エンジンを搭載しているから静かだよ。
――2代目ヴェゼルは全部がスゴいと?
小沢 ただし、ヤリスクロスは全長が4.1m台で、ヴェゼルは4.3m台だから取り回しを考えるとヤリスクロス。あと顔の迫力で考えたらヤリスクロスだ。宇宙人みたいでインパクトは大!
――コスパは?
小沢 ヤリスクロス。だって200万円切りのモデルでも先進安全のトヨタセーフティセンスが標準装備なのはスゴい!
――ほかに2代目ヴェゼルのライバルはいない?
小沢 オザワの独断と偏見だが、日産のキックスとマツダのMX-30も、2代目ヴェゼルの購入を検討するならぜひ比較するべし!
●小沢コージ
自動車ジャーナリスト。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのCARグルメ』(毎週土曜17時50分~)。YouTubeチャンネル『KozziTV』。著書に共著『最高の顧客が集まるブランド戦略』(幻冬舎)など。日本&世界カー・オブ・ザ・イヤー選考委員