景気後退と物価上昇が同時進行する「スタグフレーション」が現実味を帯びてきた。刻一刻と物価が上がるなか、手をこまねいていてはマズい。今すぐ収入を増やせる副業は何か?
そこで従来定番とされていた、手軽に始められる副業をおさらいしよう。収入がダウンしたものから効率のいい稼ぎ方が激変したものまで、最新事情を追った!
■フードデリバリーは報酬が激減
最初は2019年頃に一世を風靡(ふうび)したフードデリバリー配達員について。業界事情に詳しいフリーライターの小林ていじ氏が話す。
「東京では一時10近くの事業者が乱立していたデリバリー業界ですが、やがて市場が飽和しました。『foodpanda(フード・パンダ)』や『DiDi Food(ディディ・フード)』が撤退したのは記憶に新しいところです。
結果的に、『Uber Eats』のひとり勝ち状態となっている。そのUber Eatsが行なったのが報酬体系の変更。以前は配達距離に応じた報酬が支払われていましたが、今は基本的に1件300円均一です。業界トップによる実質賃下げの動きに『menu(メニュー)』などの同業他社も追従し、今は全体的に報酬が下落しています」
配達員の稼働率も悪化しているようだ。イラストレーターの傍ら、Uber Eatsをはじめ、複数のデリバリーサービスの配達員をかけ持つ20代の男性がため息をつく。
「私は20年5月以降、東京・池袋エリアを拠点としていますが、コロナ禍ではランチタイムや夕食時に配達のリクエストが集中し、その時間だけ地蔵(路上でのリクエスト待ち)をしていれば1時間ちょっとで5、6件の配達をこなし、2500円ほど稼ぐことができました。
しかし、飲食店が通常営業に戻るとリクエストはまばらになり、効率的に稼ぐことが難しくなった。今は11時から20時まで一日地蔵しても報酬は8000円前後。配達員の参入が増えて競争も激化したので、そろそろやめようかと思っています」
一方で、依然として効率的に稼いでいる配達員もいる。東京都足立区内の商店街でラーメン店を経営する50代の男性、Sさんの話。
「店で仕込みをしながら、リクエストが鳴ったら手を止めて自転車で配達に行くというスタイルです。ピックアップする飲食店は近隣だし、配達先も往復10分くらいの場所が中心。収入としては一日2000円足らずですが、月収5万の副収入は大きい。体を動かせるし、お店のTシャツを着て配達しているので宣伝にもなっています」
フードデリバリー配達員に参入する魅力は薄れているようだが、Sさんのように「ながら副業」としてやるならアリかもしれない。
続いては、15年頃から流行したクラウドソーシング。最近の傾向を「クラウドワークス」の広報に聞いた。
「ステイホームによりYouTubeなどの動画コンテンツの視聴時間が伸びたことで、動画編集関連の案件は増えています。一方で、消費者の情報収集手段もテキストメディアから動画メディアへと移行したことで、記事ライティングの需要は減少傾向にあります」
クラウドワークス経由で動画編集の仕事を受注している30代の会社員、Kさんの声。
「平日は早朝1時間程度、土日は子供が昼寝している間を作業時間に充てて、30時間の稼働時間で月2万円程度の副収入を稼いでいます。案件としてはビジネス系YouTubeチャンネルの動画編集が多く、5本ほどのシリーズ単位で発注してもらうこともしばしば。基本的には楽しんで作業をしてて、今後は動画編集を本業にできればと思っています」(Kさん)
■優良な民泊物件がちらほら売りに
『メルカリ』をはじめとするフリマアプリも手軽にデビューできる副業といわれていたが、こちらは?
過去5年のメルカリ利用歴で、これまでに100万円以上のへそくりをためたという都内在住の30代の主婦が明かす。
「以前は、小学校で使う雑巾や、夏休みの自由研究用の松ぼっくりやドングリを売って小銭を稼いでいましたが、今や出品者が多くて買い手がつきません。また、ステイホームをきっかけとした断捨離ブームで、健康器具やエスプレッソマシン、楽器類などの"買ったけど意外と使わなかった"系の商品は供給過多になっています。
今注目しているのは外国製の高性能ライトや小型ガスバーナーなどといったキャンプ用品。ユーザーが少ない別のフリマアプリで安く仕入れた商品をメルカリに出品し、利ザヤを稼いでいます」
一方、フリマを利用した海外転売で副収入を得ているのは、不動産会社勤務の40代男性、E氏だ。
「越境ECである『eBay(イーベイ)』ではドラゴンボールやガンダムといった往年のアニメのフィギュアやトイ、Tシャツだったり、さらにはブライスドール、初音ミク関連グッズなどが高額で落札されることがたびたびあります。今は海外転売は円安メリットもありますし、デビューするのにピッタリなタイミングかと。
ただ、それなりの目利きも必要です。初心者にオススメなのはレゴ。日本限定の商品は海外で需要があるんです。新商品が出たタイミングで値下げされた商品が狙い目ですね」(E氏)
ただ、自宅の不用品を売るだけでは大きく稼ぐことはできず、出品する商品や利用するサイトに工夫が必要なようだ。
最後は、コロナ前のインバウンドブームで会社員のサイドビジネスとして注目された民泊経営。都内に2軒の民泊物件を持つ、50代の会社員のO氏が語る。
「この2年間は悲惨でした。自主隔離期間中の人に貸し出したりしてしのいでいましたが、収益は19年に比べ9割減。現在も当時の4割程度です。収益性がかつての水準に戻るのは、外国人観光客が自由に入国できるようになり、首都圏のホテルが不足気味になってからでしょう。私はローンで物件を購入しているので、毎月の返済が大変ですよ」
ただ、O氏はくじけてはいない。
「今、優良な民泊物件が安値で売りに出ています。以前は山手線沿線で民泊物件を仕込むことはほぼムリでしたが、今なら狙える。訪日観光客はいつか必ず戻ってくるので、銀行が追加融資してくれるなら買いたいくらいです」
逆境こそチャンス。これはピークを過ぎた副業すべてに言えることかもしれない。