グアム空港の出国審査場に人の姿は少なく、日本行きの搭乗ゲート通路は閑散としている グアム空港の出国審査場に人の姿は少なく、日本行きの搭乗ゲート通路は閑散としている

半年以上にわたる急速な円安は国内だけではなく、海外にも深刻な影響を与えている。とりわけ象徴的な5つの現場をピックアップし、変化のタネを徹底取材した。【海外現地リポート「悪い円安」に泣いた人、笑った人~Part4】

円安が進み、海外旅行には気軽に行けなくなったが、そのあおりを受けているのが、国内経済の大部分を日本人観光客に依存していたグアムだ。島内で起き始めている異変とは?

■米軍関係者向けのビジネスに切り替える

円安で日本人の海外旅行需要は大幅に落ち込んでいる。とりわけ象徴的なのが、日本から近く、リーズナブルに遊びに行ける観光スポットとして人気を博していたグアムである。現地在住ライターの陣内真佐子氏は次のように語る。

「コロナ禍前の2019年は、年間の来島者数およそ166.6万人のうち、約40%に当たる約68万4000人が日本からの観光客でした。ところがこの急激な円安で、現在の客足は皆無に等しく、成田からのフライトに搭乗しているのはグアム在住者ばかり。日本人の姿はほとんど見られません」

陣内氏によれば、今秋のある日の日本-グアム間の航空券は798ドル(約11万3000円)と、コロナ禍前の2倍以上に高騰しているという。3万円台の格安ツアーが珍しくなかった頃がまるでウソのようだ。しかし、こうして日本からの旅行者が途絶えるのは、決して初めてではない。

「例えば01年のアメリカ同時多発テロや03年のSARS流行など、有事の際に飛行機が欠航して、街がゴーストタウン化したことはありました。しかしいずれの場合も、2~3年のうちに元に戻り、すぐに日本から団体客が街にあふれたのを覚えています。

それに比べると、今回のコロナ禍と円安の影響は段違いで、観光業再興のメドはまったく立っていない。観光客が戻る気配が皆無なので、日本人向けに観光ガイドをしていた知人たちも仕事を諦めて清掃業に就いたり、生活保護を受けたり、別の道を模索し始めているありさまです。中には、日本・韓国・台湾・米国本土など自分の母国に引き揚げる人もいますね」

なお、コロナ禍前の水準でいえば、グアムの経済の約7割は観光業が占めていた。これが蒸発したとなると、島民の生活には深刻な影響が及ぶ。

「特に、生活に困窮する高齢者が増えています。また、街の様子も変わりました。グアムの中心部にある大型免税店でも、いまだ13時から19時までの短縮営業が続けられており、街はまるでゴーストタウンです。

空港の免税店で働いている知人は『これまでは日本人が化粧品や酒、たばこなどのお土産を購入してくれていたけど、今グアムに多く来島する韓国人は商品を手に取り写真だけを撮って買わずに戻す人がほとんど。売り上げは落ちている』と言っていました」

ただ、グアムは新たな活路を見いだしつつある。それが、米軍相手のビジネスだ。というのも、近い将来、米軍関係施設の島に占める割合が現在の約33%から60%以上に増えることが決まっているのだ。

そのため、島内の観光事業者には軍関係者をターゲットに変えようともくろむ人も少なくないという。彼らにしてみれば、いつ戻ってくるかわからない日本人観光客を待ち続けるよりも、常駐する軍人相手の商売のほうが手堅いわけだ。

安・近・短の三拍子がそろった常夏のリゾート、グアムからは、静かに日本人向けの商売が消えつつあるのだ。