酒離れの一方で、市場は右肩上がりに成長中の微アル&ノンアルビール30種類を飲み比べ! 酒離れの一方で、市場は右肩上がりに成長中の微アル&ノンアルビール30種類を飲み比べ!

健康志向の高まりなどから、低アルコールのビールが急増中。そこで専門家3人による試飲会をしてみると......価格と味が全然比例してないことが判明! 専門家によるベストの一本は、意外すぎるチョイスだった!

■すごいぞ、トップバリュ!

ノンアルコールビール市場が好調だ。サントリーによれば、2020年のノンアルコール飲料市場は約2313万ケース(大瓶換算で1ケース=633ml×20本)で対前年比103%。さらに21年は約2570万ケース(対前年比111%)と、市場規模は拡大の一途だ。

同様に、アルコール度数が低い「微アル」も盛り上がりを見せている。健康志向の若者を中心に海外で市場が拡大しており、日本でも0.5%の「ビアリー」(アサヒ)、0.7%の「ザ・ドラフティ」(サッポロ)などが登場している。

そこで、ノンアル&微アルのビール群から本当においしい商品を決めるべく、フードジャーナリスト・はんつ遠藤氏、ビアジャーナリスト・こぐねえ氏、クラフトビールのブルワー(醸造家)・千田恭弘氏の3人に飲み比べてもらった!

商品名を明かさずブラインドで試飲し、5段階で味を評価してもらった 商品名を明かさずブラインドで試飲し、5段階で味を評価してもらった

――皆さんにはすでに計30本を試飲・採点していただきました。栄えある1位に輝いたのは、意外にも全種の中で最も安い「ビアテイスト」(トップバリュ)でした。

千田 これは良かったですね。変な甘ったるさがなくて、酸味もしっかり利いている。

こぐねえ うん、ビールっぽい苦みもちゃんと表現されていました。

はんつ 同感です。酸味が爽やかで、後味もスッキリ。コスパの良さは断トツでしょう。これで86円はスゴい!

――満場一致ですね。一方、僅差でしたが、2位と3位にはアサヒビールの微アルビールが並びました。「ビアリー」の「香るクラフト」と「IPAスタイル」です。

こぐねえ 順位は前後しますが、3位の「IPAスタイル」は、まず香りが良かったです。柑橘(かんきつ)系のニュアンスがあって。

はんつ フルーティでしたよね。それに上品な味わいを感じました。

千田 そうですね。こういうペールエール、あるなあと思いながら飲みました。

こぐねえ 香りの良さは2位の「香るクラフト」も共通していて、好印象でした。

千田 個人的には少し甘さが立ちすぎているように感じましたけど、こういうのが好きな人は多いでしょうね。

はんつ 私はこれ、すごく気に入っているんです。泡もきめ細かくて、全体として上質な仕上がりに感じました。家に常備したいくらいですよ。

――続く4位にはクラフトビールの名門ブランドから、「常陸野(ひたちの)ネスト ノン・エール」が入りました。

こぐねえ 香りもいいし、しっかりと苦みもあって、これも良かったですねえ。

はんつ うまみもちゃんとあるし、ぐっと迫ってくる風味を感じました。ただ、価格は270円とやや値が張ります。

――5位も大手、キリンの「零ICHI(ゼロイチ)」です。

千田 これは僕、少し酸の立ち方が気になりました。全体のまとまりは決して悪くないんですけど、酸味が目立つので飲む人を選ぶかも。

はんつ 「一番搾り」と同様の製法を採用しているので、ビールっぽいニュアンスはちゃんと表現されているんですけどね。

■甘すぎるノンアルが多いのはなぜ?

――ランキングを見ると、大手ビールメーカーが上位に偏っている印象を受けます。

はんつ 例えばアサヒの「ドライゼロフリー」(8位)は、まろやかさの中にちゃんとコクがあって、個人的にすごく気に入りました。アルコールやカロリーはもちろん、人工甘味料もゼロでこのクオリティですから、こういう製品がもっと増えてほしいですね。

千田 僕も「ドライゼロフリー」は悪くないと感じました。ただ、この甘みをどうとらえるかで好みが分かれそう。

こぐねえ 僕はこれ、甘さのバランスはとてもいいと思ったんですよ。千田さんはイマイチでした?

千田 悪く言えば、麦汁にシロップを混ぜたような感じがして、少し気になったかも。

――皆さんの講評をお聞きしていると、甘みはひとつのポイントになりそうですね。試飲中、特に低評価のビールに対して「甘っ!」という悲鳴(?)が聞こえてくることもしばしばでしたが、これは設計上の特性なんですか?

千田 そうだと思います。ビールは本来、酵母に糖を食べてもらってアルコールを発酵させています。各社が実際はどうしているのかはわかりませんが、もしそこでアルコールを出さないよう発酵を抑えているなら、糖が過剰に残ってしまうことはあるのかもしれません。

イサナブルーイング・千田恭弘氏 イサナブルーイング・千田恭弘氏

こぐねえ その甘みのバランスをどうとらえるかで、評価がだいぶ分かれた印象はありますよね。「ヒューガルデン ゼロ」(13位)はリンゴジュースみたいでしたし。

はんつ フルーツ感の表現は悪くなかったんですけどね。ただ、ビールとして飲めるかというと、ちょっと別物のような気も......。

千田 そうなんです。バランスは必ずしも悪くないからこのランクにとどまっているのでしょうけど、とにかく甘い。

フードジャーナリスト・はんつ遠藤氏 フードジャーナリスト・はんつ遠藤氏

――変わったところでは、「よなよなエール」などで知られるヤッホーブルーイングの新商品「正気のサタン」が、そのヒューガルデンと同率13位につけています。こちらは同社の人気ビール「インドの青鬼」のおよそ2倍のホップを使用しているとか。

千田 ところがホップはそこまで感じなかったんですよね。それでも甘すぎず、バランスが素晴らしくて個人的に評価の高い一本ではありましたが。

こぐねえ アメリカのクラフトビールっぽい香りは少し感じましたけどね。今にして思えば、それはホップの量に由来するのかもしれません。

ビアジャーナリスト・こぐねえ氏 ビアジャーナリスト・こぐねえ氏

――バランスでいうと、伊勢角屋(いせかどや)麦酒の「Minimal C(ミニマル・シー)」の評価はずぬけていますね。

こちらは普通のIPAと同等の設計で造られたローアルビールで、度数も2%あります。メーカー小売価格も759円と高価で、ほかの製品とは一線を画すものだったため番外編と位置づけましたが、飲んでみていかがでしたか?

千田 これはおいしかったですよ! ローアルなのに通常のビールに比肩する味。この分野が目指すべきはまさにここだと思います。

はんつ 私も評価的にはこれが断トツ。すべての要素が高いところでまとまっている印象を受けました。

■日本メーカーの今後の発展に期待!

――見方を変えると、やはり一定のアルコールを伴わなければ、なかなかビールの品質には追いつけない一面があらためて浮き彫りになったともいえそうです。

こぐねえ ただ、今後必ず技術革新は起きると思うんですよ。第三のビールも最初は全然おいしくなかったけど、最近はちゃんとレベルアップしていますからね。各メーカーのこれからに期待したいところです。

ヤッホーブルーイングさんにしても、以前はアルコール飲料にこだわっていたのが、ファンからの強い要望で「正気のサタン」の開発に踏み切った経緯があると聞きます。ノンアル、微アル市場にはニーズが十分あるわけで、今後この分野はどんどん成熟していくはずです。

千田 米国ブラバスブルーイングの「ホッピーレッド」(28位)は、アメリカのノンアルビール専門ブルワリーの製品ということで期待していたんですけど、ふたを開けてみればかなり微妙でしたよね(笑)。

ほかにもいくつか海外のノンアルビールがありましたが、価格が総じて高い一方で味はイマイチなものが多かった。これに比べれば日本のメーカーは総じて技術が高いですから、期待できると思います。

――では最後に、ノンアル&微アルビールをより楽しむコツがあれば教えてください!

こぐねえ 温度を下げて飲めば甘みは抑えられますから、キンキンに冷やして飲むのもいいと思います。

はんつ また、ものによっては自分でちょっとライムやオレンジを搾ってみたりして、お手製のビアカクテルにして味わうのもありかもしれません。

――安くて体にも優しい低アルビール。読者の皆さんもお気に入りの一本を見つけてみてください!

●イサナブルーイング・千田恭弘(ちだ・やすひろ)
東京都昭島市のクラフトブルワリー兼レストラン「イサナブルーイング」代表。コーヒーやダシ、トマトなどを用いた一風変わったレシピのビールを多く造る

●フードジャーナリスト・はんつ遠藤(えんどう)
海外旅行雑誌のライターを経て独立。全国の飲食店を取材し、足を運んだ店は1万軒を超える。『東京やきとり革命!』(ポプラ社)など著書も多数

●ビアジャーナリスト・こぐねえ(木暮 亮)
日本ビアジャーナリスト協会所属。飲んだ日本のビールは4000種類以上。ノンアル、微アルにも造詣が深い。Podcastで、『ビールに恋するRadio』を配信中