今やすっかり市民権を得た、フリマサイト。家庭で出た不用品の売却などから手軽に始められることから、「フリマ転売」は副業の定番とされている。しかしそこには落とし穴も潜んでいる。
昨年、福岡県在住の40歳代の会社員男性が、副業とするネット販売で2020年までの7年間で得た約1億400万円について申告せず、一部で所得の隠しを図っていたとして、福岡国税局から重加算税を含め約2100万円を追徴課税された。
「ここまで大きな収入でなくても、税務署から申告漏れを指摘される可能性は十分にある」と指摘するのは、元国税調査官で税理士の松嶋洋氏だ。令和4年分の確定申告の期限が近づく今、インターネット上での取引における課税の仕組みについて、松嶋氏に解説してもらった。
* * *
衣服や家電、楽器など、家庭で出た不用品は原則「生活用動産」とされ、「不用品の売却=生活用動産の譲渡」として扱われます。資産の売却による利益は譲渡所得とされますが、生活用動産の譲渡は原則として非課税とされています。通勤や生活に使用するマイカーを売却した場合も、非課税となります。
しかし例外として、ひとつの値段が30万円を超える宝飾品などを売却する場合には、譲渡所得課税の対象になります。このため、ブランド物の宝飾品などを譲渡すると譲渡所得税がかかります。なお、譲渡所得には特別控除額が設けられており、総額50万円までは控除の対象になります。
■ネット取引こそ適正な申告を
一方、営利目的で継続した転売により得られた利益は、「雑所得」か「事業所得」とみなされます。同じフリマサイトで売買を行なっても、「不用品の売却」か「営利目的で継続している」かで所得の分類が異なるのです。
当然、雑所得や事業所得は課税対象になるため、利益が年間20万円を超えると確定申告の必要があります。不用品の売却か営利目的で継続的かどうか、その判断について明確な基準はありません。
昨今、盛んになっているフリマ転売には、国税も取り締まりに目を光らせています。このご時世になっても「ネット上の取引だから、不正が見えにくい」と思い込んでいる人をたまに見かけますが、これは大きな間違いです。基本的に、ネット上での不正は普通の税務調査よりバレやすい。なぜなら、インターネットの取引は記録がきちんと残るからです。
データの残りづらい現金商売の場合は、仮に不正を行なっていたとしても証拠がつかみづらいところがあり、地道な税務調査が必要になることはもちろん、証拠が明確にならないことが多いため、実務では推計も織り交ぜながら課税が行なわれることもあります。
しかし、フリマ転売などネットビジネスでは、サイトを運営する業者がすべてのデータを管理しているので、そのデータを確認すれば内容は確実に分かります。この時期になると、フリマ転売における不正のニュースをよく見かけますが、そのたびに「サイトの運営者を押さえれば、一発でバレるんだけどなあ」と思ってしまいます。
■「現金化しなければ大丈夫」は勘違い!
ひとつ注意点を挙げるとすれば、「口座に移して現金化しなければ大丈夫」と勘違いされている人は多いように感じます。多くのフリマサイトでは、アプリ内のデポジットで売買を完結させることができますよね。
しかし、これも大きな間違いで、現金で使えるものである限り、売り上げが立った時点で課税対象になります。要は、売上の見返りとして、換金性のあるものを貰えるかどうか、ということです。
このことは、現金でやり取りを行なわない物々交換も課税対象になるという例からもわかります。例えば、100円の価値があるAという品物と120円相当のBという品物を交換したとします。この際、差額の20円分については、課税対象になるのです。
知らなかったでは済まされません。「フリマ転売」を副業とするなら、ひととおりの税務知識を身に付けておくべきでしょう。
●松嶋洋
元国税調査官・税理士。2002年東京大学卒業。金融機関勤務を経て東京国税局に入局。2007年退官後は税理士として活動。税務調査対策のコンサルタントとして税理士向けセミナーの講師も務める。著書に『押せば意外に 税務署なんて怖くない』(かんき出版)など多数