先月突如到来した、日本株のビッグウエーブ。この波に乗り遅れた人も多いのでは? そこで、経済動向を注視し続ける株メディアの編集長らが大集結。それぞれに、今からでも間に合う入魂の"隠し玉銘柄"を聞いたぞ!

■訪日観光客でにぎわううなぎ専門チェーン

"投資の神様"ことウォーレン・バフェットの総合商社株買い増しをきっかけに、世界の投資家がにわかに日本株に注目し始めた。年初から7月上旬までの間に日経平均は約30%上昇している。

ただし、ここにきて過熱気味とみられているのか、株価は直近2週間ぐずついている。もうオイシイ期間は過ぎてしまったのだろうか?

「そんなことはありません。約4000社の上場銘柄を精査すれば、まだまだ利益を狙える銘柄はあります」

そう断言するのは、日本の全上場企業の情報を網羅した『会社四季報』(東洋経済新報社)の"伝説の元編集長"として知られる山本隆行氏だ。

「米国で巨大ハイテク企業の株価が勢いよく上昇しており、日本でもその連想から大型株が市場を牽引(けんいん)しています。その陰で、時価総額の小さい中小企業にはまだ気づかれていないお宝銘柄がゴロゴロあります」(山本氏)

『会社四季報』元編集長・山本隆行。1959年生まれ。『会社四季報』、『四季報オンライン』編集長を歴任。著書に『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』(東洋経済新報社)『会社四季報』元編集長・山本隆行。1959年生まれ。『会社四季報』、『四季報オンライン』編集長を歴任。著書に『伝説の編集長が教える 会社四季報はココだけ見て得する株だけ買えばいい』(東洋経済新報社)

会員制の株式投資情報誌『株式ウイークリー』(東洋経済新報社)編集長の福井純氏も同調する。

「今を時めくAIや半導体関連で、割高な銘柄があるのは確か。とはいえ日経平均は過去の歴史に照らしても妥当な水準で、数年単位でじっくり保有できる『出遅れ優良銘柄』はまだ見つかります」

『株式ウイークリー』編集長・福井 純。1966年生まれ。会員制株式投資情報誌『株式ウイークリー』編集長兼『会社四季報オンライン』編集部長。日本テクニカルアナリスト協会理事でもある『株式ウイークリー』編集長・福井 純。1966年生まれ。会員制株式投資情報誌『株式ウイークリー』編集長兼『会社四季報オンライン』編集部長。日本テクニカルアナリスト協会理事でもある

中小型株に注目する山本・福井両氏に対して、大型株に熱い視線を注ぐのは、資産形成メディア『みんかぶ』編集長の鈴木聖也氏だ。

「日本株を買っている投資家の7割は海外勢といわれています。円安が進んでいるので、ドル建てで見た日本の株価はまだまだ安いのです」

『みんかぶ』編集長・鈴木聖也。1988年生まれ、群馬県出身。慶應義塾大学法学部卒。共同通信記者、経済誌『プレジデント』編集者・デスクを経て、2022年より資産形成メディア『みんかぶ』編集長に『みんかぶ』編集長・鈴木聖也。1988年生まれ、群馬県出身。慶應義塾大学法学部卒。共同通信記者、経済誌『プレジデント』編集者・デスクを経て、2022年より資産形成メディア『みんかぶ』編集長に

そのため、海外勢に買われる大型株の優勢は今後も継続するとみられている。

今回はこの3人に、個人的に注目している銘柄を聞いた。まずは山本氏から。

「昨年以降、1ドル=130~150円の円安がすっかり定着しました。コロナが明けて、安全で風光明媚(めいび)、料理がおいしい、そしてすべてが安い日本に世界から観光客が殺到しています。【円安・インバウンド】は息の長いテーマになるでしょう。そこで真っ先に注目すべきはG-FACTORYです」

外食店向けに物件や設備などのリースを手がける同社は、自社でもうなぎ専門チェーンの「名代(なだい) 宇奈(うな)とと」を展開する。

「全国チェーンですが特に東京・大阪に重点展開しており、訪日客の利用が絶えず絶好調。来年度まで3期連続の増収増益を見込む好調ぶりです」

訪日客の好反応を受けてか、名代 宇奈ととは東南アジアに店舗を拡大中。一風堂、丸亀製麺に続くグローバル日本食チェーンとなるか期待したいところだ。

インバウンドに注目するのは、福井氏も同様だ。

「ブランド品のリユース(中古販売)で国内トップのコメ兵(ひょう)ホールディングスがアツい。1月にオープンした銀座の旗艦店には、海外の富裕層がわれもわれもと詰めかけています。

銀座店で扱う商品の平均単価はなんと約100万円ともいわれています。安く仕入れたものが飛ぶように売れるわけですから、利益率の高さは推して知るべしです」

常時200人の検品態勢を整え、さらに鑑定にAI導入を進めるなど、効率化を伴った拡大は業界の雄ならでは。上海出店に加え、シンガポールなどほかの海外拠点拡大進出も検討しており、10年単位の長期で持ち続けたい銘柄だ。

続けて福井氏にホットなテーマを聞くと、世界一の半導体メーカー・TSMCの進出に沸く【熊本】を挙げてくれた。

「アップル社オリジナルのCPUや、ChatGPTなどの生成AIを支えるエヌビディアの半導体を受託製造するなど、世界経済の屋台骨といえる企業が来てくれたわけです。地元地銀の試算によると、工場建設や関連会社の売り上げ、住宅や小売り・サービスなどを含めて2年間で1兆8000億円もの経済効果が見込まれています」

2020年の数値ではあるが、熊本県の県内総生産額は約6兆円。単純計算でその2割弱に当たる巨大特需を受ける銘柄とは?

「熊本地盤で、河川の護岸ブロックなどのコンクリート製品を手がけるヤマックスに注目です。TSMCの工場建設に加え、付随して盛り上がる建設需要を取り込んで、今年度だけでなく、来年度以降も増収増益が見込めそうです」(福井氏)

九州は昨年に続き、この7月も豪雨に見舞われた。河川護岸の増強ニーズは今後も絶えることはないだろう。

■株メディア編集長らのとっておき銘柄は!?

鈴木氏には、改めて今後の投資環境を整理してもらった上で、狙い目を聞いた。

「ゼロコロナ政策をとった中国は、ここへきて経済の出遅れが目につきます。欧米のような財政支出や金融緩和をしなかった結果、不動産バブル崩壊の瀬戸際に立ち、ついにはデフレ突入がささやかれる始末です。

そして、ウクライナの戦争はまだまだ終わりが見えません。欧米では高金利が経済の腰を折る懸念があり、いわば消去法で、日本株は世界の投資家の目に『安全資産』と映っているのです」

これは、国内勢とは資金量のケタが違う海外投資家から継続的にマネーが入ってくることを意味する。となれば目をつけたいのは、長期投資に向く銘柄だ。鈴木氏が注目するのは、6%もの高配当を誇る隠れた増収増益銘柄の日本たばこ産業(JT)

「同社は21年に配当を減らし、16期連続増配が途絶えたことで株価が急落したのですが、その時期も増収増益は続いていました。昨年には業績がジャンプアップし増配に復帰。安定感があり、長く持てる銘柄です」

成長産業とみられていないたばこの製造・販売はライバルの参入がなく、その分利益率は高い。加熱式たばこの育成や食品分野への多角化にも熱心で、「同社の稼ぐ力には今後も期待できる」と鈴木氏は強調する。

「たばこはニーズが景気に左右されない点が強み。今後も手堅い増収増益が見込める同社をうまく仕込めればお宝になるはずです」

最後に、3人のとっておき銘柄をひとつずつ挙げてもらった。山本氏は、来年にスタートする新NISA関連でアイカ工業に着目する。

「キッチンの壁などに使われるメラミン化粧板の製造で国内トップの企業で、成長途上にある中国やベトナムで大増産を進めている点が高く評価できます。25年間減配がない上に、14年連続増配というのは立派なことです」

NISAでは配当も非課税になるため、増配し続ける銘柄を狙う投資家も多いはず。とすると、連続増配銘柄を今のうちに仕込んでおけば配当をもらい続けられる上に、今後物色が進めば株価の上昇も狙える公算が高い。

福井氏は大化け期待銘柄としてサスメドを挙げた。

「不眠症の療養アプリ開発で注目を集めています。現状は赤字経営ですが、アプリが保険適用されれば、提携している塩野義製薬を通じて大規模展開されることが決定済み。世界的にも不眠は永遠のテーマで、うまくいけば急成長が期待できるでしょう」

同社は腎臓病や耳鳴りなどの治療用アプリも開発を進めている。今なら約16万円の投資で、未来の10倍株を買えるかもしれない。

鈴木氏は、オトコがなかなか知りえない成長株を教えてくれた。

「ドラッグストアの女性用ヘアケア商品棚で、今ひときわ目立つ場所に置かれているのが『BOTANIST(ボタニスト)』。販売元のI-ne(アイエヌイー)は創立16年の新興企業ですが、花王など名だたる老舗メーカーを抑えてヘアケア分野でトップシェアを取っている。今後のさらなる成長を期待しています」

このほかの注目銘柄は表にまとめた。あなたはどれでひと儲けする?