当時、違法だった白タク営業であるライドシェアがなし崩し的に開始されると、タクシー運転手さんたちの怒りが爆発! ストライキ&公道をタクシーで封鎖する事態も中国全国で勃発 当時、違法だった白タク営業であるライドシェアがなし崩し的に開始されると、タクシー運転手さんたちの怒りが爆発! ストライキ&公道をタクシーで封鎖する事態も中国全国で勃発

ここ最近、岸田文雄首相が急激にアピールし始めているライドシェア。世界的にはUberが有名ですが、実は中国でも同時期からサービスが開始され市民からは大好評。そんな中国ライドシェア事情を紹介ですっ!!

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■ライドシェア先進国のデメリットとは?

近年、ターミナル駅のタクシー待ちの大行列は飲み会後の定番風景。さらに地方だとアプリから配車しても待ち時間が30分オーバーだったりと、日常生活にジワジワと効いてきているタクシー不足の問題。

その打開策として岸田政権が推し進めるのがライドシェアの解禁だ。ユーザーがアプリから配車して、一般ドライバーが自家用車でタクシー業務を行なえるライドシェアは、定番の交通インフラとして海外では浸透している。

そして、中国ではすでにライドシェアが日常の足として定着しているという。中国発のライドシェア事情を、中国の経済・ITに精通するジャーナリストの高口康太さんに解説してもらいます!

――中国はいつからライドシェアを開始したのですか?

高口 2012年からアプリのタクシー配車サービスが開始され、本格的なライドシェアは2014年にスタート。これは世界的に知られるUberと同時期になります。

――それは十分にライドシェア先進国。どのような経緯で採用されたのでしょうか?

高口 もともと中国では人口に対してのタクシー台数が不足しており、流しの車両に乗車するのも困難なほどでした。さらに、運転手はマナーが悪く、料金メーターの改竄(かいざん)などは当たり前。車両台数が足りないことで、圧倒的な殿様商売を続けていた業界でした。

習近平政権は打開策として、当時勢いづいてきた自国開発のアプリやGPSなどのIT技術との相性が良いライドシェアを認めたのです。

ライドシェア解禁前、腕っぷしの強い人材のそろっているタクシー会社は、白タクを発見すると、運転手もろともボッコボコにするのが中国のスタンダードだった ライドシェア解禁前、腕っぷしの強い人材のそろっているタクシー会社は、白タクを発見すると、運転手もろともボッコボコにするのが中国のスタンダードだった

――これにタクシー業界からの反発は? すでに日本でも業界団体は「全力で解禁を阻止する!」と穏やかじゃないムードですけど......。

高口 もちろん、中国でも猛反発です。それこそタクシー運転手がストライキを起こし、車両で道路封鎖を行なうほどでした。

ただ、多くの市民はライドシェアに大賛成で、それに後押しされて習近平政権はライドシェアを導入。そもそも当時の中国では〝白タク行為〟として違法でしたが、それを押し切ってライドシェアを採用したことで習近平政権への評価が高まりました。

そして白タク行為に関する法整備を整えたのは、サービス開始後の16年になってからです。

――これで中国のタクシー業界は完全消滅ですか?

高口 いえ。中国のライドシェアはタクシー業界とも提携され、既存のタクシーを配車することも可能で共存状態です。ライドシェアの普及により、タクシーのサービスが大幅に向上したことも一般市民からはメリットとして受け入れられています。

――では、中国ライドシェアのサービス内容とは?

高口 最大手となるのは日本でもタクシーの配車サービスを行なっている「DiDi」になります。料金は時間帯により変動しますが、例えばA地点からB地点までの移動なら事前に料金が決定し、ぼったくりは皆無です。全体的に通常のタクシーよりやや高いくらいの料金です。GPSの精度が高く、日本の配車アプリにありがちな〝道の対面にいます〟ということもありません。

面白いのが【チップ制度】です。混雑時は、ドライバーに追加でチップを支払うようアプリからユーザーに促されます。休憩中のドライバーがチップ目当てで一斉に車を出し混雑を緩和します。普通に謝礼の意味でチップを支払うこともできます。もちろん、出前サービスと同じく【評価】もあり、評価の高いドライバーの配車依頼が多くなります。

中国のライドシェア「DiDi」は2018年より日本でもサービスを開始。しかし、中国版とはまったくの別物で、同業他社アプリである「GO」のような「タクシーを配車するアプリ」となっている 中国のライドシェア「DiDi」は2018年より日本でもサービスを開始。しかし、中国版とはまったくの別物で、同業他社アプリである「GO」のような「タクシーを配車するアプリ」となっている

――ライドシェアは〝安全性〟に関する議論も多いですよね。

高口 車内の状況は常に防犯カメラで撮影されています。私は中国取材でドライバーと「習近平、実際どーなの?」という話をするのですが、最近ではカメラを指さしながら〝無理!〟ってジェスチャーをされますね(笑)。

高齢者向けに、スマホにワンタッチでその場所に配車される【高齢者モード】も実装されています。これは、恐ろしく精度の高い中国製GPSならではの機能でしょう。また、ドライバーには車両・人身保険制度があり、これは1日から加入することが可能です。

日本では議論がスタートしたばかりのライドシェア。先行する中国ではすでに自動運転車両による実証実験がスタートしている。DiDiは2030年までに100万台の自動運転車両導入計画を発表しており、多くのライドシェアドライバーが廃業に追い込まれることが既定路線となっている 日本では議論がスタートしたばかりのライドシェア。先行する中国ではすでに自動運転車両による実証実験がスタートしている。DiDiは2030年までに100万台の自動運転車両導入計画を発表しており、多くのライドシェアドライバーが廃業に追い込まれることが既定路線となっている

――デメリットが見当たらない感じですけど?

高口 最大のデメリットはライドシェアのドライバーに〝未来がない〟ということです。中国のライドシェアには【専業】【副業】の2種類があります。現在、【専業】はドライバー数が増えすぎ、さらに車両・燃料・保険料なども発生し、その日暮らしに近い状態となっています。

一方、DiDiのような事業者は人件費削減のため、自動運転車両の導入を急ピッチで進めており、【副業】も今後は稼げなくなるのが明白です。

そもそもライドシェアは燃料費の安い【EV】と【自動運転】のセットで大きな収益の生まれるビジネスなので、ドライバーには未来がありません。なので、最近では出前、宅配、ライドシェアなどギグワーク【専業従事者】の貧困エッセイ集がヒットするほどです。

――岸田政権には【EV】【自動運転】のセットでのライドシェア議論もお願いします!

ライドシェア、出前、宅配などは、スマホと車両があれば誰でも手軽に始められるのが魅力のギグワークだったが、その日暮らしを強いられる人間が多く、彼らの日常をつづったエッセイ集が中国で人気となっている ライドシェア、出前、宅配などは、スマホと車両があれば誰でも手軽に始められるのが魅力のギグワークだったが、その日暮らしを強いられる人間が多く、彼らの日常をつづったエッセイ集が中国で人気となっている