室越龍之介むろこし・りゅうのすけ
ライター・リサーチャー。専攻は文化人類学。九州大学人間環境学府博士後期課程を単位取得退学後、在外公館やベンチャー企業の勤務を経て独立。個人ゼミ「le Tonneau」を主宰。経営者やコンサルタント向けに研修や勉強会を実施したりすることも。Podcast番組「どうせ死ぬ三人」を配信中。
ふるさと納税の締め切りは12月31日! 今年は10月に総務省の規制強化があり、おトクな返礼品がめっきり減ってしまった。しかし、じっくり探せばいい寄付先はまだまだある! 寄付枠を使い切ってない方、必読ですよ!!!
※情報は12月4日時点のもので、内容が変更になっている場合があります。
* * *
ふるさと納税の締め切りが迫っている。好きな自治体へ寄付を行なうことで返礼品をもらえる上、節税に近い効果が得られる制度で、今年の枠を使うには12月31日までに申し込みが必要だ。
★3ポイントでわかるふるさと納税レクチャー
・寄付した額から2000円を引いた額が所得税・住民税から控除されます。
・さらに、寄付した自治体から返礼品がもらえます。
・確定申告の手続きは(場合によっては)簡略化できます。
おトクなイメージの強い制度だが、年々そのうまみは消えつつあるという。金融リポーターの高井ひろえ氏が解説する。
「管轄省庁である総務省の引き締めが年々強まっています。というのも、高還元率をうたった返礼品の人気が過熱し、その返礼品を扱う自治体への寄付が偏っていることを問題視したんです」
今年10月、総務省は規制を強化。寄付の受領後に行なう書類の発送費用など、総務省が把握していなかった〝隠れ経費〟にも目をつけ、「返礼品は寄付額の3割以下」かつ「総経費と返礼品の総額が寄付額の5割以下」となるよう各自治体に要求。
その上、返礼品の基準も厳格化し、熟成肉や精米は原材料がその都道府県内で生産されたものに限るとした。
「計上すべき経費が膨らんだことで、値上げに踏み切る自治体も多く現れました。これに呼応したトレンドとしてふたつの動きが見られます。
ひとつ目は、おトクさではなく社会的意義を強調したもの。その好例に、クラウドファンディング型のプロジェクト支援があります」
ポータルサイトの『さとふる』では、2018年から22年にかけて事業数は約5倍、寄付額は約4倍に増加。具体的には利用者が減少する鉄道線の維持や、各地の景観整備などへの支援などが呼びかけられている。
もうひとつのトレンドは、体験型返礼品の拡大だ。
「これは寄付した地域のイベントに参加できるチケットなどを返礼品とするもので、温泉や化石発掘など家族で楽しめるものから禅の修行体験まで、ラインナップは多種多様です。『さとふる』によれば、今年9月時点で体験型の返礼品は、前年同月比で13倍に増えました。
体験チケットや旅行チケットは食品などと違って送料が安く抑えられるので、その分経費を圧縮できます。結果的に還元率も高くなる返礼品が多い傾向があります」
また、「現地型ふるさと納税」も普及し始めている。これは旅行先でQRコードを読み込んで寄付し、その場で使える電子商品券が受け取れるスタイルのふるさと納税だ。旅行需要の高まりとその手軽さが追い風となって、対応する自治体が増えている。
こうした新潮流の一方で、「往年の人気ジャンルである肉や魚、米などでも、おトクな返礼品は探せばまだある」と語るのは、ふるさと納税比較サイト『ふるさと納税ガイド』管理人の福田航太氏だ。
「確かに、総務省の規制が厳しくなったことにより、返礼品の還元率は寄付額の30%以内となりました。ところが、この算出基準は市場価格ではなく調達額なので、返礼品を安く仕入れた自治体を選べば高還元率の返礼品もまだまだあるのです。
例えば今年だと、中国からの輸入規制でホタテを中心とした海産物のおトク度がアップしています」
さて、実際に寄付をするなら何から始めるべきか。
「まずは自身の寄付上限額をチェックしましょう。ふるさと納税の各ポータルサイトが提供するシミュレーターに収入や家族構成を入れればOKです」(高井氏)
上限額がわかったら、各種ポータルサイトを使って寄付しよう。年末には駆け込み寄付が殺到するため、人気の返礼品だと品切れになってしまうこともあるし、自治体によっては締め切りを前倒しで設定しているところも。早めの利用をオススメしたい。
忘れてはいけないのは、寄付後の手続きだ。
「寄付金控除の適用を受けるには、原則、自治体の発行する『寄付金受領証明書』を保管し、確定申告書と合わせて税務署に提出する必要があります。
ただ、確定申告が不要な給与所得者で、かつ寄付先が年間で5自治体以内の人なら、この手続きを簡略化できます。『ワンストップ特例制度』というもので、自治体から送られてくる簡単な申請書を送り返せば手続きが済むので、ぜひ利用してください」
ここからは、識者オススメの寄付先を紹介しよう。まずは福田氏イチオシの、高還元率の返礼品から。
「純粋にコスパを追求するなら、福岡県福智町の『「博多若杉」のもつ1㎏』がピカイチ。昭和56年創業の老舗で、1年で20万件の販売実績がある人気店でもある。私の独自の試算だと、流通価格で算出し直した還元率は90%を超えています」
根強い人気を誇る肉ジャンルから、もうひと品挙げるとしたら?
「実は今年、取り扱いをやめたり、あるいは寄付金額を値上げする自治体が相次ぎました。ひとつには10月の規制強化が原因で、これまでおトク感の強かった熟成牛や熟成豚の切り落としが大幅に減少したんです。
そんな中でも人気が高かったのは、岩手県花巻市の『厚切り牛タン塩味1㎏』。肉厚で、それでいて柔らかくジューシー。あるポータルサイトでは、レビュー件数ランキング全国5位を誇る返礼品です」(福田氏)
高井氏が激推しするのは、栃木県那須町の超人気パン店「ペニーレイン」のブルーベリーブレッドだ。
「私は那須に赴くとこのパン店に必ず寄るのですが、いつ行っても大行列。そんな大人気パン店の看板メニュー・ブルーベリーブレッドが並ばずに食べられるということで、パンが好きな方なら絶対に試していただきたい逸品です!」
一方で、はやりの体験型のイチオシは?
「鹿児島県指宿市の『指宿砂むし温泉体験ペアチケット』はオススメ。砂むし温泉は、砂浜から湧き出る温泉で温められた砂に体を埋める独特の入浴方法です。体験型ということもあって還元率が比較的高いですし、これからの寒い季節、砂蒸し風呂でじっくり温まって疲れを取るのもよいと思います」(高井氏)
食品や体験型以外でオススメなのは?
「キャンプや登山、釣りが趣味の私としては、アウトドア用品を推したいです。スノーピークやナンガといった国内ブランドの製品はふるさと納税で手に入れることができるのですが、その中でも『フライパン「ジュウ」&ハンドルセット』は通好みな逸品。キャンプ飯でもすごく映えるし、ホームパーティで出てきたら一目置かれるはず!」(高井氏)
年々改悪が続くふるさと納税。オイシイ使い道が残っているうちに、ガッツリ使い倒しておくべし!
●高井ひろえ
2017年にフィスコ入社。金融メディアや機関投資家への情報配信を行なう。2014年にミス首都大学東京グランプリ、ミスコン全国大会でスポンサー賞受賞。趣味は猟、ダイビング。
ライター・リサーチャー。専攻は文化人類学。九州大学人間環境学府博士後期課程を単位取得退学後、在外公館やベンチャー企業の勤務を経て独立。個人ゼミ「le Tonneau」を主宰。経営者やコンサルタント向けに研修や勉強会を実施したりすることも。Podcast番組「どうせ死ぬ三人」を配信中。