忘年会・新年会などの飲み会で、気をつけたい言動をチェック! 忘年会・新年会などの飲み会で、気をつけたい言動をチェック!

この年末や年明けは4年ぶりに忘年会や新年会をする会社も多いだろう。久しぶりだからと羽目を外して飲んでいると、調子に乗ってパワハラ発言をしてしまうこともあるかもしれない。

そこで、改めて飲み会で気をつけたい言動をまとめてみた。この特集でしっかり予習をして、忘年会・新年会を楽しもう!

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■一度断られたら、それ以上酒を勧めない

プロ野球の楽天イーグルスや宝塚歌劇団、日本大学、ビッグモーターなど、2023年は〝パワハラ〟に関するニュースが多かった。

多くの一般企業では、何がパワハラになるか周知されているはずだから普段は起こりにくいだろう。しかし、飲み会などでお酒が入って、ちょっと気が緩んだときに「パワハラじゃない?」と思われる言動が出てしまうときがある。

そこでハラスメント対策専門家の山藤祐子(ざんとう・ゆうこ)さんに、忘年会や新年会などで犯しやすいパワハラについて聞いた。

――まず、忘年会や新年会は業務の一部なんでしょうか?

山藤 会社の忘年会や新年会は、業務ではないにしても上司の指揮命令がその場で発生しているので〝職場〟と見なされます。ですから、嫌がらせが起きたらパワハラと判断されてもおかしくない状況です。

――早速ですが、「今度の忘年会には絶対出ろよ!」と言うのはパワハラになる?

山藤 単に「参加しないとダメだぞ!」だけではパワハラになりません。ただし、「忘年会に出ないと、今の仕事から外すぞ」みたいなことを繰り返し言っていたらパワハラになる可能性は高いです。

パワハラは、発言の一部を切り取って判断するわけではなく、何度も執拗(しつよう)に繰り返していることもポイントのひとつになります。

――では、「新人なんだから忘年会の幹事をやれ!」と言うのは?

山藤 必要性があるかどうかです。例えば「社員の顔を覚えるため」や逆に「顔を覚えてもらうため」であったり、顧客との食事会を設定しなければいけない仕事の場合は「お店を知る」という経験にもなります。そうなると業務上の必要性がありますからパワハラとは言いにくい。

でも、「合コンを設定しろ」など、業務に関係ないことを頼むとアウトじゃないでしょうか。

――そもそもなんですが、酔っていてもパワハラは成立するんですか?

山藤 します。酔っていたから人を殴っても許されるということはありませんよね。「酔っていて忘れた」という場合でも、事実関係をヒアリングして、例えば2、3人が「確かに『バカ野郎』と言っていました」「手で頬を殴っていました」と証言すればパワハラになりえます。

――じゃあ、「まあ、飲めよ」とお酒を勧めるのは?

山藤 例えば「グラスが空いてるけど、もっと飲む?」と聞くのはいいんですが、飲みたくない相手に「飲め!」と命令するのは業務上の必要相当性がないのでダメです。また、「一気飲みしろ!」もパワハラになりうる可能性が高いです。

――遅れてきた人に「駆けつけ3杯っていうじゃないか」と3杯くらい飲ませるのは?

山藤 パワハラと言われる可能性は高いです。本人が喜んで「わかりました。自分、飲みまーす!」と言っているのならいいんですけど、「遅れてきたから3杯飲め!」というのは問題行為になります。

飲酒を強要してはダメ! 飲酒を強要してはダメ!

――では、ソフトドリンクを頼んだ人に「最初の一杯くらい酒を飲めよ」は?

山藤 「一杯くらい飲めよ」と言って、「いや、ちょっとすみません」「明日、早いんで」と断られたら「わかった。じゃあ、今度飲もうな」などと引くのがいいと思います。それを「何言ってんだ。忘年会なんだから飲め!」などと執拗に言うとパワハラに近づいていきます。

「食べること」は業務ではない! 「食べること」は業務ではない!

――ほかにも料理が余っていて、「若いんだから、食え!」と言う人もいると思いますが。

山藤 「おまえは体が大きいんだから食べろ」と言う人もいますが、食べるのは仕事じゃないですよね。やはり執拗に強要するとパワハラになる可能性が出てきます。

――じゃあ、鍋などで「おまえ、取り分けをやれ!」と部下に言うのは?

山藤 「私、そういうの苦手なんです」と言っている人にやらせる必要はないと思います。でも、たまたま鍋の前にいた人に「やってくれ」と言うのはパワハラとは考えにくいです。誰かがやらなければいけないわけですから。

■プライベートなことは飲み会でも聞かない

――「おい、ちょっとこっちに来い!」と部下を呼ぶ上司もいますが。

山藤 もちろん、それだけではパワハラにはなりません。また、逆に部下のそばに行く場合もあるでしょう。ただ、問題になりやすいのは男性の上司が女性の部下を隣に座らせて、肩や背中を触ってしまう場合。部下が「やめてください」と言ってるのに続けていたらセクハラになります。

――男性の部下だったら、肩を組んだり、背中や頭を軽く叩いても大丈夫ですか?

山藤 それが複数回になってくるとセクハラやパワハラになる可能性は高くなります。それに酔ってくると本人は軽く叩いているつもりでも、意外と痛かったりするので、叩くのは良くないと思います。

自慢話やお説教は嫌がられる! 自慢話やお説教は嫌がられる!

――お説教するのは?

山藤 お説教はパワハラにはならないと思います。ただ、「人前での威圧的な叱責(しっせき)はパワハラの要因のひとつ」です。みんなが飲んでいるところで、業務上必要のないことを威圧的に怒っているとパワハラになる可能性はあります。

――では、「こいつは、昔、こんなバカなことをしたんだぞ」と過去の失敗をばらすのは?

山藤 みんなの前で失敗談を話すのは、パワハラにはなりにくいと思います。ただ、その話が職場にふさわしいかというと、ふさわしくはないでしょうね。別に言わなくてもいいことですから。

――酔ってくるとありがちなのは「彼女いるのか?」「性体験はどれくらいだ?」という話ですが......。

山藤 それは仕事にまったく関係ありませんし、性的な経験を聞くのはすごくプライベートなことです。男同士だとしてもセクハラになりえます。

――じゃあ、「休日は何してる?」とか聞かないほうがいいですか?

山藤 プライベートなことを執拗に聞くのはダメです。「休日何してるの?」と聞いて、「いろいろです」と言われたら、それは答えたくないという意思表示。「そうなんだ」と、もう聞かないことです。

逆に「サッカーやってんすよ」と言うのであれば、話を広げてあげればいいと思います。基本的に、忘年会や新年会は〝職場〟ですから、プライベートな話は控えたほうがいいでしょう。

あと宗教の話や政治の話。「今、戦争をやっているけど、どっちの味方だ?」など思想的なことは職場で話す必要のないことだと思います。それから、「親の職業」や「住んでいる場所」も聞かないというのが、今の共通認識だと思います。

はぐらかされたらそれ以上聞かない! はぐらかされたらそれ以上聞かない!

――仕事に関する話で「おまえは、俺とアイツ(ライバル)とどっち派だ?」と聞いているシーンを目にしますが。

山藤 それだけだとパワハラにはなりにくいです。「そんなこと言えません」とはぐらかされる場合もありますから。

――でも、「その言い方はアイツのほうじゃないか」という流れになりますよね。

山藤 それで、その後に仕事から外したり、必要な情報を与えないのであれば、パワハラの要因のひとつになりえます。「どっち派だ」と聞いただけではちょっと難しいですね。

――あと、最近は少なくなってきたと思いますが、「何か芸をやれ!」は?

山藤 今、「芸をやれ!」と強要する上司はほとんどいないと思いますが、「売り上げが悪かったから、コスチュームを着ろ」と言われた事例はパワハラになっています。ただ、本人が「芸をやりたい」と望んだ場合は別ですよ。

――「2次会に行こうぜ!」と強引に誘うのは、やはりパワハラですか?

山藤 「行こうよ」と誘うだけではパワハラにはなりません。「行かなきゃどうなるかわかってんだろうな」になるとパワハラの可能性が高くなります。実際にパワハラ認定になった判例もあります。

――あと、終電がなくなりそうなのになかなか帰してくれないという状況もあると思いますが......。

山藤 「帰れる雰囲気じゃなかった」という話をよく聞きますが、雰囲気でパワハラやセクハラは決まらないんです。それは個人の感じ方だからです。「この人は泥棒だと思います」で泥棒とは決められませんよね。どういう事実があったかが大事なんです。

よく「相手がそう思ったらセクハラだ」と思い込んでいる人がいますが、客観的事実が重要です。ですから、雰囲気で帰る帰らないを決めず、大人なんですから、終電の時間になったら帰ってください。

――はい。

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4年ぶりに忘年会・新年会をやる会社も多いだろう。パワハラになりそうな言動は控えて、楽しく盛り上がろう!