日野秀規ひの・ひでき
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
X【@kujiraya_fp】
新NISAが1月1日から始まった。これは株式や投資信託などで得られた利益(配当や売却益)に本来かかる20.315%の税金が引かれないおトクな制度だ。新設される成長投資枠では国内株式や投資信託、不動産投資信託などが購入できる上、昨年までは最大で600万~800万円だった限度枠が今年から1800万円に拡大。
仮に1800万円を投資し、年率5%のリターンで運用すれば、10年後には約2932万円、つまり1000万円以上も増え、本来ならかかる200万円以上の税金も非課税となる。将来に向けて資産をつくりたい人はぜひ利用したい制度だ。
とはいえ、投資先の選択肢は無数にあるし、値動きをこまめにチェックするのは面倒くさい。そこで、個人の資産形成や株式投資を知り尽くした識者ふたりに、3段階のリスク別で「一度買ったら10年放置してOK」な投資先を教えてもらった。
まずは超低リスクな候補から見ていこう。大手証券会社出身で、資産形成アドバイスに実績のあるFP法人シグマ所属の山本洋平氏は、安定運用に大事なのは「分散投資」だと強調する。
「個人が投資できる資産には株、債券、金などがあります。お金を増やす力が最も大きいのは株ですが、その半面、不景気や企業の不祥事などで大きく下落するリスクがつきもの。
そこで複数の銘柄を買ったり、株と値動きのパターンが異なるほかの資産と組み合わせたりすることで、全体の値動きをマイルドにしながら着実に利益を狙う方法が分散投資です」
自力でさまざまな資産に分散投資することも可能だが、手間もお金もかかる上、投資する銘柄や資産の割合を吟味する必要がある。そこで、プロにお任せで運用できる投資信託を使ってみてはというのが山本氏の提案だ。
「2008年に起こったリーマン・ショックでは、世界の株式に投資するファンドが60%も下落しました。これが大きなストレスとなり、長期保有できずに投資をやめてしまう人もいると思います。
そんなとき、運用会社が経済情勢の変化や株式市場の見通しに基づいて投資銘柄や資産を管理してくれる投資信託なら、ショックを和らげる運用をしてくれるでしょう」
山本氏のオススメはふたつのお任せ型投資信託だ。安全運用の「ピクテ・アセット・アロケーション・ファンド(1年決算型)」に投資資金の7割を、積極運用の「ピクテ・ゴールデン・リスクプレミアム・ファンド」に3割を割り当てる。
過去3年の運用結果を基に山本氏が行なった推計によると、毎年の運用成績はおおむね-2%~+8%の間に収まり、資産は緩やかに増えていくという。慣れてきたら、株式に投資するファンドを追加して、よりリターンを狙う運用もアリだ。
新NISAの開始にあたり、配当への非課税メリットを生かした高配当株への投資に注目が集まっている。そこで、配当額が大きいだけでなく、将来にわたって配当が減らなさそうな銘柄を、株式アナリストの大川智宏氏に選んでもらった。
「10年売らなくていい銘柄を選ぶには、景気の変動に左右されないことが最も重要です。携帯会社などの通信系、食品スーパーなどの小売、医薬品といった国内の消費関連銘柄は業績の安定性が高いので望ましく、株価もじわじわ上昇していくことが見込めます。
さらに配当の安定性を確保するために、過去の増配実績に加えて、利益の安定性や借金の少なさなど、配当支払い能力を厳しく査定しました」
ピックアップしてもらったのは6銘柄(表参照)。この中でも特に有望な銘柄はどれか。
「KDDIはauブランドで知られる携帯会社です。景気変動の影響が少なく、抜群の安定性と収益性を誇ります。今年度で連続増配が22期目となり、3%超の高配当利回りも魅力的です」
そしてもう1社、スキャンダルに揺れるあの業界で輝く優良株があるという。
「ユー・エス・エスは中古車オークションの運営大手で、こちらも今年で24期連続の増配を発表。物価上昇の時代に安価な中古車市場の魅力度は高く、息の長い成長が見込まれます」
自己資本(返済の必要がない資金や資産)が豊富でほぼ無借金経営の同社は、将来の配当支払いも盤石と大川氏は太鼓判を押している。
ところで、中には「儲けても税金がかからないんだし、イチかバチかで一獲千金を狙いたい」という人もいるはず。そこで、超高騰を狙える銘柄について、引き続き大川氏に解説してもらおう。
「銘柄のテーマや先見性、業績の成長力を厳しく査定しました。AIに代表されるハイテク銘柄はもちろん良いですが、最新技術をあくまでもツールとして使い、社会の問題を解決する企業には計り知れない伸びしろがあります。イチオシは、人材採用や販促活動の支援をオンラインで提供し、破竹の勢いで伸びているポートです」
求人情報サイト『キャリアパーク!』や就活支援サイト『就活会議』などが人材・企業双方の支持を集め、毎年3割ペースの高速増収増益を見込む。それでも株価はPER(株価収益率)で見れば割安な上、今年度の業績も会社の計画を上回り好調に推移している。
人手不足による人材難が続く中、同社のサービスはますます求められていくだろう。見つからないうちに仕込むのが得策だ。
「もうひとつ、すでに知られた成長銘柄ではありますが、MonotaRO(モノタロウ)は外せません。工場・工事用資材の通販を手がけ、5期先まで毎期10%以上の増収増益、さらに増配が予想されています。規格外の成長力で、今後世界の景気後退が来たとしても盤石です」
10年後に元手がド~ンと増えていることを祈って、いざ投資!
*情報はいずれも12月18日時点
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
X【@kujiraya_fp】