政府や経済学者は「賃上げと値上げの好循環で経済復活だ!」と言うが、現実問題としてまだまだ多くの人の懐事情は厳しい。そして30年続いたデフレで花開いた日本独自の「激安ビジネス」も、物価高という逆風に立ち向かっている。各業態の現場でその苦境と奮闘をガッツリ取材してきました! 【激安ビジネスの仁義なきサバイバルバトル】第三弾は食べ放題チェーン編!
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大阪市や神戸市の中心部に4店舗を構える「298(にくや)」は、7年前に1号店をオープンして以来、焼き肉食べ放題1000円、アルコール飲み放題1000円、さらにカレー、ご飯、生キャベツ、キムチ、スパサラが無料という大サービスを維持している。
運営会社・ホロンの営業本部長、安田嘉幸氏はこう話す。
「ごちそうの焼き肉を日常食に引きずり降ろし、気兼ねなくおなかいっぱい食べていただきたい。飲み放題につく生ビールは発泡酒ではなくアサヒスーパードライにこだわり、焼き肉には白ご飯とキムチ、箸休めのサラダは必須でしょ、ということで5種の無料サービス品をつけました」
「弊社で扱う牛肉は米国産が主で、時期によっては豪州産などもありますが、この1年で仕入れ値が1.5倍に上がりました。円安や原油高に伴う輸送費アップに加え、コスト削減のために牛肉のグレードを落とす飲食店が増え、価格が高騰しているんです。
そこで、やむなく食べ放題の制限時間を90分から70分に短くしましたが、現状では70分でも厳しい。ゴールデンウイーク明けからは60分とさせていただきます。また、食べ放題はハラミやカルビ、バラなどの盛り合わせで提供していましたが、一番安価で肉質が硬いバラの比率を高めざるをえなくなりました」
同店は和牛焼き肉食べ放題(100分3636円)など、利幅が大きい高価格帯のコースを導入することで1000円コースの存続を図っている。だが、焼き肉の需要の最盛期となる夏に、もう一段仕入れ値が上がる可能性が高いという。
「実際に値上げとなれば、いよいよ1000円コースは維持できなくなるかもしれません。それでもお値打ち感のある価格にはこだわりたいと思っています」