三菱商事系の食品卸大手。2011年に三菱商事傘下4社の経営統合を機に現社名へ変更。売上高は業界2位 三菱商事系の食品卸大手。2011年に三菱商事傘下4社の経営統合を機に現社名へ変更。売上高は業界2位

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
食品の値上げ
(三菱食品)

4月は食品の値上げが相次いだ。消費者目線では痛いところだが、投資家目線で考えれば、業界の収益構造が改善したともいえる。今回は全国の食品の物流を担う、専門商社をピックアップ!

助手 週末、投資のヒント探しのために近所のスーパーに行きまして。この春も食品は値上げが続いてるんですね。ざっと確認しただけでもハム類や冷凍食品、それに調味料とかが、けっこう値上がりしてました。

坂本 4月は多くの食品で一斉に値上げがあったんです。調査によると、約2800品目が平均23%も値上がりしたとか。円安で輸入コストが高止まりしているし、物流業界の残業規制「2024年問題」で輸送コストも上昇しているから仕方ないね。

助手 値上げ率の平均が23%! 春闘で賃上げ率が5%を超えたって盛り上がってましたけど、まったく追いついてないわけですね。これから生活が苦しくなりそうだなぁ。

坂本 投資家なら、儲けている企業を見つけて利益を出せばいい。私は三菱食品に期待しています。

助手 値上げで食品メーカーが儲かるって読みですね!

坂本 三菱食品は食品メーカーじゃなく食品の卸売り、つまり問屋ですよ。

助手 問屋って、小売店やメーカーがコスト削減に動いたら、真っ先に切られそうですけど。メーカーと小売りが直接やりとりすればコストが省けて値上げもせずに済むんじゃ?

坂本 いやいや。食品卸が切られる恐れはないよ。例えば、ひとつかふたつの看板商品に頼ってるような中小メーカーの商品が全国で広く手に入るのは、食品卸の流通網のおかげ。中小企業は全国対応の物流網を構築できないからね。コンビニの棚に弁当や総菜がいつも並んでるのだって、管理の難しいチルド品を一日何回も配送してくれる食品卸あってのこと。大手小売企業にとっても、なくてはならない存在なんです。

助手 なるほど。でも投資先として積極的に注目する理由って?

坂本 まず、卸売業はインフレで儲かるんですよ。小売りへの卸売金額に一定の料率をかけて利益を受け取るから。メーカーの値上げで1ケースあたりの単価が上がれば、単価に対する利益の絶対額も増えるわけ。

助手 値上げで食品が売れなくなる心配はないんですか?

坂本 日々の食事をやめるわけにはいかないでしょ。だから食品は値上げしても数量が減りづらいんですよ。

助手 確かに! 

坂本 加えてコロナ以降、密になりがちな特売を取りやめる小売店が増えたのもポイント。配送量に極端な偏りがなくなって負担が減り、利益の押し上げにつながっています。

助手 業界全体に追い風が吹いてる中で、三菱食品を選ぶ理由って?

坂本 同社は全国展開している数少ない食品卸で、取り扱いカテゴリーは加工食品から低温食品、酒類に菓子まで幅広い。この規模の大きさが、今後さらなる追い風になるからです。

助手 どういうことです?

坂本 例えば、2024年問題でメーカーや小売りは自社配送を縮小するはず。でも総菜などのいわゆる日配品は管理や配達スケジュールの調整にノウハウが必要で、普通の物流業者じゃ対応できない。そこで幅広い食品流通のノウハウと多数の物流拠点を持つ三菱食品の出番になるわけ。

助手 なるほど。

坂本 さらに、取り扱い商品の広さと全国展開により同社は年間12億件の出荷データを持っている。それをメーカーや小売りのマーケティング用に提供する構想があるなど、成長戦略に事欠かないのもいい。近時、利益の伸びが加速しているし、新たな成長段階に入ったとみます。長期目線で投資すると面白いと思います。

今週の実験結果 
三菱食品の利益を押し上げる意外な要因。それは「特売の減少」です

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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