4月22日にTポイントと統合し、会員数最大規模の巨大経済圏が爆誕したVポイント 4月22日にTポイントと統合し、会員数最大規模の巨大経済圏が爆誕したVポイント

熾烈な会員の奪い合いを繰り広げたポイント経済圏のキャンペーン攻勢は一服し、楽天、Ponta、d、PayPayと大手携帯キャリア勢が天下を4分する勢力図に落ち着いたように見えた。

そんな中、Tポイントが三井住友系のVポイントと手を組み、待ったをかけた! 巨大経済圏が生まれたいきさつと、上手な活用方法を識者に聞いた!

■「Tポイント」の名前が消滅

4月22日、三井住友FG(フィナンシャルグループ)のVポイントと、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が提供するTポイントが統合した。Tポイントは、20年以上の歴史を持つ日本初の共通ポイントだ。

一方のVポイントは三井住友FGが提供してきたポイントサービスだ。この統合により、アクティブユーザー8600万人にも及ぶ巨大な「新生Vポイント経済圏」が誕生する。

なぜ今、両者の統合が実現したのだろうか。ポイント情報サイト『ポイ探』運営者の菊地崇仁(たかひと)氏は次のように語る。

「端的に言えば、両者に足りなかったものを補うための統合です。Tポイントは、圧倒的な知名度と顧客基盤はあるけれどポイントを発行するための原資が不足していて、PayPayなどの後発組に押しのけられる形で存在感を失っていました」

ポイントサービスの運営企業に求められるものは、なんといっても加盟店への送客力。そのためには運営企業は身銭を切ってポイントを発行し、加盟店に顧客を流し込むための資金力が必要になる。

「一方、メガバンクが主体のVポイントは、資金力はあれど知名度がイマイチ。そこにTポイントの知名度と顧客基盤を取り込むことが今回の統合の狙いでしょう」

名前こそVポイントになったものの、Tポイントの象徴的な青と黄色のデザインは健在だ。

「お互いに理想的な相手と手を組んだといえますが、Tポイントの歴史をたどると、そもそもこの統合はT陣営が自ら招いてしまったものでもあります」

どういうことか? 

■共通ポイント20年史をひもとく

Tポイントが誕生したのは2003年10月。レンタルショップ大手・TSUTAYAのポイントサービスが発祥だ。

「それまでTSUTAYAではそれぞれの店舗が独自の会員証を発行し、各店舗でのみ利用できるポイントがたまる仕組みになっていました。その会員証をTSUTAYA全店で統一すると同時に、新日本石油(現ENEOS)とローソンでも利用できるようにしたのです」

Tポイントはもともとレンタルショップ・TSUTAYAのサービスだった。ちなみに、発起人の笠原和彦氏は現在楽天で楽天ポイント事業の指揮を執っている Tポイントはもともとレンタルショップ・TSUTAYAのサービスだった。ちなみに、発起人の笠原和彦氏は現在楽天で楽天ポイント事業の指揮を執っている

この斬新な仕組みは多くの企業を魅了した。その理由を、決済サービスに詳しいITジャーナリストの鈴木淳也氏はこう語る。

「ポイントを目当てにした消費者の集客効果はもちろんのこと、顧客データを活用するマーケティングにも期待が集まったからです」

07年11月にはファミリーマートがT陣営に参画。そのほかにもカメラのキタムラ、ウエルシア薬局、マルエツなど、さまざまな業種の企業がこの巨大な共通ポイント経済圏の一員となっていった。

「10年に三菱商事によってPontaポイントが始まりましたが、それでもTポイントの優位性は盤石でした。そんなT陣営が、さらに勢力を拡大するために打った一手がヤフーとの提携です」(鈴木氏)

12年6月、ヤフー独自のポイントをTポイントに統合することが発表されたのだ。

2012年、ヤフーはCCCと資本提携を発表。Tポイントがウェブの世界にも進出するきっかけとなったが、2022年に提携関係は解消された 2012年、ヤフーはCCCと資本提携を発表。Tポイントがウェブの世界にも進出するきっかけとなったが、2022年に提携関係は解消された

「リアルでもネットでも使える最強の共通ポイントが誕生するという、エポックメーキングな出来事でした。

しかし、今になって振り返ってみると、この提携がTポイントの分水嶺だったといえます。圧倒的なシェアを誇る共通ポイントの誕生に危機感を抱いた企業たちが、これ以降次々と共通ポイント事業に参入したからです」(菊地氏)

14年には楽天が、楽天スーパーポイント(現楽天ポイント)を実店舗でも使えるように変更。さらに翌年にはドコモも、自社サービス向けに提供していたドコモポイント(現dポイント)を共通ポイントに切り替えた。

「潤沢な資金力を背景に加盟店を増やしていった彼らの後塵を拝し、Tポイントは徐々に勢いを失っていったのです」(菊地氏)

Tポイント衰退のもうひとつの理由を鈴木氏はこう語る。

「せっかく得たデータを分析し、まともにマーケティングに活用できる企業がほとんどなかったのも大きいと思います。実際、Tポイントのデータが経営や商品開発に活用されて成功した事例は、私も聞いたことがありません」

Tポイントのイメージが強いファミリーマートだが、2019年に他ポイントとの相乗りを開始。ちなみに、初めてTポイントに加盟したコンビニはローソンだ Tポイントのイメージが強いファミリーマートだが、2019年に他ポイントとの相乗りを開始。ちなみに、初めてTポイントに加盟したコンビニはローソンだ

従って、加盟店にとって共通ポイントの魅力は実質的には集客力だけということになる。

「ただ、集客のためだけに加盟するのであれば、店舗としては複数の共通ポイントを導入したほうがメリットが大きいですよね。Tポイント全盛期の頃はひとつの店舗がひとつの共通ポイントだけに加盟する独占契約が当たり前だったのですが、それも崩れて"相乗り"が増えていきました」(菊地氏)

Tポイントにとどめを刺したのが、ヤフーの離脱である。22年3月をもって、ヤフーが運営するサービスとTポイントの連携が終了したのだ。同社は同年4月から、親会社であるソフトバンクが手がけるPayPay経済圏に取り込まれている。

■タッチ決済で還元率7%

かくして、ひとり取り残されたTポイントに手を差し伸べたのが、資金力が潤沢なV陣営だったわけだ。となれば、当分はユーザーを積極的に獲得しにいくはずで、われわれにとってはおトクな期間が続きそうだ。ここからは、新生Vポイントの賢いため方を菊地氏に教えてもらおう。

まず、新生Vポイントは何が変わるのか聞いた。

「Tポイントユーザー、Vポイントユーザーそれぞれにとって、対象の店舗が大幅に増えてよりたまりやすくなるのが最大の特徴です。

具体的には、引き続き加盟店でのTカードの提示、そして三井住友カードの利用でVポイントがたまります。ですから、Tカードを持ちつつ、三井住友カードで決済を行なうのが基本戦略になります」

要はそれぞれ従来の利用法を継続すればポイントがたまっていくわけだが、Tポイント加盟店で三井住友カード決済をすれば二重取りも可能だ。また、今までためたT・Vポイントは引き続き利用可能で、新Vポイントとして合算することもできる。

では、肝心の還元率は?

「基本還元率はTカード提示で0.5%、三井住友カードの利用で0.5%なので、合わせて1%です。正直、三井住友カードの利用だけでは他社クレカと比べると物足りない水準ですね。

ただしVポイントは対象のコンビニや飲食店で、スマホのタッチ決済を使えば7%還元を受けられます。これなら十分な還元率でしょう」

対象店舗にはセブン-イレブン、ローソン、マクドナルド、ガスト、すき家、サイゼリヤ、ドトールなど、身近なお店がそろっている。

「ですから、年会費無料の『三井住友カード(NL)』を発行し、対象店舗でタッチ決済を使って7%還元を受けるのがVポイントデビューの第一歩でしょうか」

なお、Tカードはアプリで発行できるし、三井住友カード(NL)はスマホに取り込むことが可能。財布を圧迫することはない。

では、もっとポイントをためたい場合は?

「次のステップは、三井住友FG関連のサービスを多く利用して、特定の対象店舗の還元率を向上させることです。とはいえ簡単なものもあれば、SBI証券や住友生命、SMBCモビットの利用など、ハードルの高いものも多い。そこで、比較的ラクに達成できるものに絞って紹介します。

まずは『Olive』というサービス。これは銀行、クレジットカード、デビットカードなどを一括管理できるサービスです。三井住友銀行口座が必要な上、この口座から利用額が引き落とされるので、ある程度のお金を入れておく必要はあります。

ただメリットも大きく、Oliveアカウントの開設およびログインで1%、Olive利用者向けの選べる特典でさらに1%アップします。中級者にはぜひオススメしたいサービスですね」

三井住友FGが提供する「Olive」は、複数の金融サービスを一括管理できるサービス。特に、専用のクレカ「Oliveフレキシブルペイ」がおトクだと評判だ 三井住友FGが提供する「Olive」は、複数の金融サービスを一括管理できるサービス。特に、専用のクレカ「Oliveフレキシブルペイ」がおトクだと評判だ

なお、これとは別に、2親等以内の三井住友カード本会員を家族登録することで、ひとりごとに対象店舗での還元率がプラス1%される(上限5%)。パートナーや親が三井住友カードを持っているなら、こちらも比較的簡単にクリアできるだろう。

■ガチ勢ならプラチナカードを作れ!

さらに徹底的にポイ活をしたい上級者は、Oliveのプラチナカードを作って決済を一本化してしまうのがオススメだ。

「『Oliveフレキシブルペイ プラチナプリファード』の年会費は3万3000円。そう聞くと気後れする方も多いと思いますが、特典が盛りだくさんで、毎月まとまった額をクレカ決済している人なら簡単に元を取ることができます。

まず、このカードの基本還元率は1%と、メインカードにも十分です。さらに特典として、前年の利用額100万円ごとに1万ポイントをもらえる(上限4万ポイント)ので、ガッツリ使う方なら実質還元率は最大2%になります。

また、SBI証券での投信積み立てでポイントが5%付与されるのも大きい(ただし11月買いつけ分からは還元率がダウンする)。このほか、特約店での決済でも還元率が跳ね上がります。

例を挙げると、宿泊予約サイト『エクスペディア』では+14%、ふるさと納税サイト『さとふる』なら+4%など。Vポイント経済圏に重心を置く人なら発行して損はないでしょう」

どこまでポイ活をやり込むのかは各自にお任せするとして、たまったポイントの使い方も覚えておきたい。

「全国のVisa加盟店、Tポイント加盟店で使えますし、クレジットカードの支払いにも充当できるので、使い道に困ることはないでしょう。

ちなみに、極限までトクしたいなら、いわゆる"ウエル活"一択です。ドラッグストアのウエルシアは毎月20日に『お客様感謝デー』を開催しており、この日にVポイントで買い物をすれば1ポイント当たり1.5円分の買い物ができるのです。

ただ、Vポイントはお客様感謝デーの対象ポイントから8月20日をもって外れてしまうのでご注意ください」

統合に向けて「カウントダウン祭」と称したキャンペーンを行なっていたが、おトク度はイマイチだった。新生V誕生後の大盤振る舞いに期待したい! 統合に向けて「カウントダウン祭」と称したキャンペーンを行なっていたが、おトク度はイマイチだった。新生V誕生後の大盤振る舞いに期待したい!

ちなみに、新Vポイントの開始に伴っておトクなキャンペーンが開催される予定は?

「実は今のところ、目立ったキャンペーンは発表されていません。とはいえ、おそらく統合後に大きなものが控えているはず。カードの発行を済ませて、今後の発表を待つのがいいでしょう」

飽和状態ともいえる経済圏に突如殴り込みをかけた新Vポイント。ポイ活を始めるきっかけにしてみては?

*データは4月15日時点。本誌発売時には変更がある場合がございますので、各サイトなどでご確認ください