日野秀規ひの・ひでき
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
X【@kujiraya_fp】
この円安を逆にチャンスに変えることはできないだろうか? そこで提案したいのが、円安で儲かる企業への投資である。株式投資のバイブル『会社四季報』の伝説の元編集長・山本隆行氏に、注目すべきポイントを聞いた。
「キーとなるのは、輸出企業が業績予想の際に想定する為替レートです。というのも、1ドル140円という、現実と乖離した前提で予想を出している会社も散見されるからです。となると、その会社は決算時に上方修正を発表する可能性が高いですよね」
一般に、上方修正があると株価は上がりやすい。つまり、狙い目ということだ。では、なぜ控えめな想定為替レートの会社が多いのか?
「もちろん一番の原因は、設定した時点から大いに円安が進んだからでしょう。それに、そもそも企業は円高寄りの予想を出しがちです。想定より円安になる分には利益が上振れ、株価の上昇につながるのですが、円高になるとその逆の動きになりますからね」
では、具体例を伺おう。
「あのナイキやアディダスとスポーツシューズで真っ向勝負しているアシックスは、今、欧米やアジアで高価格帯の商品をヒットさせています。5月10日に第1四半期決算を発表しましたが、進捗率は驚きの62.4%でした」
同社は12月決算なので、これは昨年末に立てた今年度の経常利益予想の6割強を、最初のたった3ヵ月で達成してしまったことになる。
「同社の想定為替レートは1ドル140円。それが現状で15円以上の円安に振れているわけですからね。急激に円高に戻ることがない限り、今後も快調な業績が続きそうです。
そしてもうひとつ、今、投資するなら確認しておきたいポイントがあります。それは一般的な3月決算でなく、12月決算を採用した企業を選ぶことです」
5月上旬に第1四半期決算を発表した12月決算の企業は、1年という長丁場のレースではまだ第1コーナーを回ったところ。この時点で進捗率が跳ねている企業を狙い撃ちすれば、株価が上がる前に仕込むことができるというわけだ。
「そこで、海外売上高が高い12月決算の企業の中で、高進捗率をマークしている企業を調べました。発電機やチェーンソーなど、緑地や農林、建設といった屋外作業で用いられる機械メーカーのやまびこは、第1四半期の進捗率が49.2%をマークしています。特に経済好調のアメリカで高シェアなのは心強いですね」
同社も想定為替レートを1ドル140円としている。PER(株価収益率。株価を1株当たり利益で割って求めた指標で、高いほど割高)は8.7倍と株価はまだまだ割安でありながら、この10年で株価を2倍以上、1株当たりの配当額を約3.7倍に伸ばしている。値上がり益と配当の両方を狙える、非常に魅力的な銘柄だ。
また、直接海外で販売する以外にも、円安メリットを強く受けている企業があると山本氏は言う。
「今や日々のニュースで、インバウンドというワードを目にしない日はないでしょう。中でも海外富裕層の散財ニーズを取り込める企業が伸びています。その代表格が三越伊勢丹ホールディングスです」
新宿伊勢丹と日本橋三越という、日本を代表する二大百貨店を擁する同社は、コロナ禍における大打撃を乗り越え上場来高値を更新中。利益率がコロナ前の約5倍という超優良企業に生まれ変わった。
紹介した3社を含む、山本氏激推しの10銘柄を表にまとめた。円安を逆手に取るためのヒントにしてほしい。
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
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