1883年に大阪で創業。戦艦大和の艦長室のカーペットも同社が手がけた。配当利回りは2.78%ある 1883年に大阪で創業。戦艦大和の艦長室のカーペットも同社が手がけた。配当利回りは2.78%ある

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
国会議事堂の赤じゅうたん
(住江織物)

世の中のあらゆるものは、それを作っている企業がある。今回は、国会議事堂の赤じゅうたんを手がける上場企業をご紹介。同社が輸送機器業界から求められる訳とは!?

助手 岸田首相が秋に衆議院を解散して選挙になるのでは、って予測が出てきたみたいです。結果次第では政策が変更されたりして、追い風が吹く企業もあるんでは?

坂本 選挙結果を占いつつ、政策変更まで予想して投資するなんて難しいよ。個人投資家に分がある勝負じゃない。やめたほうがいいね。まぁ、選挙にちなんだ銘柄がないこともないけど。住江織物とか。

助手 織物会社が選挙に関係する?

坂本 国会と関係があるっていうのが正確かな。住江織物は国会議事堂の赤じゅうたんを作ってるんですよ。国会議事堂は昭和11年にできたんだけど、前身の帝国議会議事堂から、つまり明治時代から同社が赤じゅうたんを手がけています。

助手 すごいですけど、いまさらじゅうたんで儲かるんですかね?

坂本 いまだにじゅうたん一本やりで事業を展開しているわけじゃありませんよ。祖業はインテリア事業として残っているけど、輸送機器の内装材や産業資材なんかにも手を広げています。この3つの事業を組み合わせることで、技術を横展開しながらリスクの分散もできている。海外進出にも積極的だし、ちょっと面白い会社だと思います。

助手 なるほど。でも、織物って社名と輸送機器が全然結びつかないです。いったい何を作ってるんです?

坂本 輸送機器ってのは自動車とか鉄道のことです。例えば、電車やバスの座席に使われている「モケット」という布。毎日何人もの人が座るわけだから、求められる耐久性は尋常じゃない。高度な技術が必要な製品なんですが、住江織物は日本で初めてモケットを製造して以来、1世紀以上にわたって国内トップシェアの座を守っています。今や日本の鉄道の7割で同社の製品が使われているんです。

助手 ニッチトップってやつですね。ただ、市場が狭すぎて、あんまり儲からない気がします。

坂本 普通の自動車の内装材や外装材も手がけてるよ。近年の稼ぎ頭はこの分野。今後も有望だと思います。

助手 自動車の内装材で住江織物の技術が生かせるものっていうと、フロアカーペットとか座席の布とか?

坂本 もちろんそのあたりは得意分野だけど、同社の特徴は天井材やマット、トランクルームから、タイヤを収めるホイールハウスっていう空間の素材まで幅広く提案できることなんです。どれかひとつだけでなく、すべてをカバーしているメーカーはレアですよ。一気通貫で供給してくれるのは自動車メーカーにとっても便利だから、多くの国内自動車メーカーと取引関係にある。

助手 ホイールハウスって繊維じゃなさそうですけど、住江織物が供給できるんですか?

坂本 そう。インテリア事業で扱うタイルカーペットの裏側は樹脂だからね。いろんな素材の技術を持っているから応用範囲が広いんですよ。

助手 そういうことか!

坂本 注目は、このところ同社が生産を始めた合皮です。革素材はインパネやシフトノブなど、繊維素材よりも展開範囲が広い。しかも最近は外資系メーカーを中心に、SDGsの観点から本革でなく合皮を取り入れる例が増えているんです。EVや航空機では、少しでも航続距離を延ばすために軽い合皮の採用が一般的。これまで同社は外資メーカーとの取引が弱かったんですが、合皮への注力で状況が変わってきそうです。長期投資なら面白いと思うよ。

今週の実験結果 
本革から合皮へのシフトは、同社にとってチャンスです!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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