日本がメダルラッシュに沸く中、上場企業には"増配ラッシュ"が訪れている。2025年3月期に支払われる予定の配当金の総額は4年連続で過去最高を更新する上、増配予定の企業も約4割とこれまた過去最多なのだ。

配当株投資のベストセラーを書いたふたりの個人投資家に、その手法と注目銘柄を聞いた!

■投資タイミングを気にしなくてOK!

増配株投資は個人の資産形成に最適だと語るのは、『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』(クロスメディア・パブリッシング)の著者・配当太郎氏だ。

「長期目線で配当額の増大を狙う手法なので、個人投資家にこそピッタリです。少ない自己資金で始めても、地道に継続すれば将来的には毎年数百万円単位の配当をもらえる可能性もあります」

日経平均採用銘柄の平均配当利回りは7月末時点で1.8%ほど。これで本当に数百万円の配当金が得られるの?

「配当額が毎年増えていく増配株投資なら、最初こそ利回りが低くても、どんどん向上していきます。例えば、通信大手のNTTは増配を繰り返して直近10年で配当金が3倍になっていますから、もし保有していたら利回りも3倍になっていたわけですね。こういう銘柄に新NISAを使って投資すれば、課税されることなく配当を受け取れますよ」

買いのタイミングや運用時のポイントは?

「増配株投資は、決めた銘柄をコツコツと買い増し続けることが重要。あまりタイミングを計る必要はありません。むしろ、安定的な増配銘柄を安値で買おうとすると、いつまでたっても買えない可能性も。株価が極端に割高になっていない限り、淡々と買っていく方針でいいでしょう。

運用にあたっては配当金額を毎年10~15%くらい増やすイメージで投資額を調整するのがオススメです。そう言うとハードルが高く思えますが、増配だけで配当金が10%増えることもザラなので、そういう場合は自己資金を追加しなくて済むのも増配株投資の利点です」

銘柄はどう選べば?

「先のNTTのように、潰れそうもない企業を選ぶのが私の手法です。具体的には、参入障壁が高いビジネスであること、業界1位か2位の企業、市場シェア3割を超える企業、継続的に収益が得られるストック型ビジネスを展開する企業などがいいでしょう。もう少し吟味するなら、1株当たり利益が毎年順調に伸びている企業がベターです。

また、必ずしも毎年増配している必要はなく、多少の減配や据え置きの年を挟んでいても長期的に増配傾向であれば投資対象になります。業績に余裕がないのに無理に増配する企業よりも、配当を冷静にコントロールする企業のほうが信頼できますからね」

■配当利回り3.5%がひとつの基準

同じ配当株投資家でも、銘柄の選び方は十人十色。次に教えてくれたのは『ほったらかしで年間2000万円入ってくる超★高配当株投資入門』(ダイヤモンド社)の著者で、株式投資歴40年で8億円の資産を築いたかんち氏だ。

「私の場合は、買う時点で配当利回り(年間配当額を株価で割った数値)が4%を超える高配当株を狙っています。ところが、直近の株高で4%超の銘柄が減ってきました。

そこで、現在では高配当株の基準を配当利回り3.5%に変更しつつ、それでも良い銘柄が見つからなければ、増配基調で3.0%程度の銘柄にも投資するというスタンスです。現状の配当利回りが高くなくても、数年待てば3.5%や4.0%になる増配株を狙うわけです」

銘柄選びのコツは?

「今は有名な大企業よりも、若干マイナーで時価総額が小さい、小型株と呼ばれる企業群のほうが割安な傾向にある。私はそれらも含めて幅広く投資先を選んでいます。

投資にあたっては長期的に増配傾向にあるという事実のほかに、増収増益基調であることが必須です」

購入タイミングについては、配当太郎氏同様、「下落を待つのではなく、少しずつ買い進めるのがいい」としつつ、こう付け加えた。

「とはいえ、買うタイミングは投資成績を左右する重要な要素。厳選した銘柄であれば、個別要因で株価が下がったところでは積極的に投資したいですね。例えば、新たに株を発行して資金を調達する公募増資が発表されたとき。

短期的には既存株主の利益が減ってしまうため株価は下落することが多いのですが、実は長期的には財務が健全になることで企業にとってプラスも見込める。長期投資するなら買い場なんです。

このように工夫しながら増配株を積み上げれば、将来的には"自分年金"と呼べるような収入源が出来上がるはずですよ」

両氏が選ぶ注目企業を表にまとめた。持つだけでどんどんお金が増える増配ラッシュ、乗らない手はない!

●配当太郎氏
投資家。保有銘柄の9割は増配銘柄が占める。Xのフォロワーは18万人超。著書『新NISAで始める!年間240万円の配当金が入ってくる究極の株式投資』は6刷4.6万部

●かんち氏
専業投資家。元消防士で、49歳のときに早期退職。生活費のすべてを株の配当金と株主優待で賄う。著書『ほったらかしで年間2000万円入ってくる超★高配当株投資入門』は4刷4万部