「チャオパニック」「カスタネ」「チコ」「ディスコート」「3COINS」などのブランドを保有する巨大アパレル・雑貨販売企業だ 「チャオパニック」「カスタネ」「チコ」「ディスコート」「3COINS」などのブランドを保有する巨大アパレル・雑貨販売企業だ

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
円高で儲かる企業②
パルグループホールディングス

前回は円高が追い風となるニトリを取り上げたが、海外で製造して輸入し販売する企業はほかにもいっぱいある。前回の家具に続き、今回は衣料を手がけるパルグループに注目だ!

助手 前回、これからは円高傾向が続くかもって話になりましたよね。

坂本 ええ。日銀が7月に利上げを決めた一方、米国では景気後退懸念がくすぶって利下げが意識されているからね。日米の金利差が縮小すれば円高になると考えるのが自然です。

助手 その流れが続くなら、前回検討したニトリ以外にも、円高がプラスに働く企業を探しておきたいです。

坂本 それならニトリと同じような特徴を持つ企業を探せばいい。

助手 確か、同社は流行の家具をいち早く低コストで店頭に並べるために、企画・製造から小売りまでを一貫して手がける製造小売業(SPA)なのが特徴でしたね。

坂本 そのとおり。つまり、海外の工場で製造して輸入するから円高が追い風になる。加えて、円安でも業績を伸ばしていたことにも注目したい。逆風下で利益を出すための工夫が、円高時に利益を増幅させるからね。例えばニトリは1ドル160円の超円安でも利益を出せる商品を開発していた。一転円高になれば、かなり利幅の大きい商品になるはずです。

助手 そのふたつの観点から所長が注目している円高追い風銘柄って?

坂本 パルグループホールディングスに注目しています。

助手 どんな事業か気になります!

坂本 同社にはふたつの事業がある。まず、若い女性向けのアパレルブランドを50近く抱える衣料事業。取扱商品の約8割はSPAで自社企画・海外製造したものだから、円高は追い風になります。

助手 えっ、ブランドを50も? なんか非効率な経営をしてそう。

坂本 いやいや。アパレルはトレンドを読み切るのが難しい。いろんなブランドを持っていれば、どれかはトレンドにヒットして業績の安定につながるからね。実際、第1四半期はカジュアル系ブランドの不調をタウン系ブランドが補完しました。

助手 あえてたくさんのブランドを持ってるんですか。面白いですね。

坂本 そう。パルグループはアパレル業界の中ではユニークな経営が光る企業なんですよ。例えば、アパレル業界の中では早くからEC化とSNSマーケティングに注力していました。SNSで店員個人の発信を推奨してインフルエンサー化させ、ファンをECに誘導すれば顧客の囲い込みになるからね。今や同社の衣料品のEC比率は4割超えで、一般的なアパレルの2割と比べると圧倒的です。この調子でEC化が進めば在庫管理や需要予測が容易になるから、利幅はさらに広がるんじゃないかな。

助手 円高以外の面からも期待できそうですね。ふたつ目の事業は?

坂本 300円から1000円くらいの雑貨を取りそろえた「3COINS」などの雑貨事業です。売り上げの4割を占めるまでになっています。

助手 確かに最近、どんどん店舗が増えてますよね。安いのにデザイン性の高い雑貨が多いのはアパレルの会社が経営してるからだったのか。

坂本 同事業は毎年2桁の割合で売り上げを伸ばしているんですが、円安が重しとなって利益は思ったように伸びていなかった。そこで少しでも輸入コストをカットしようと、商社を通さない「直接貿易」の割合を増やしているんです。円高になれば、このコストカットと商品原価の低下が二重に効いてくる。
 
しかも、同社は日本でもっぱら店舗展開してるのがミソ。円高で海外での売り上げが目減りするようなこともないから、恩恵を目いっぱい享受できるはずです。

今週の実験結果 
海外店舗がほとんどない分、円高の恩恵を大幅に享受できそうです!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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