発表されたラインナップはマルゲリータ(税込780円)と照り焼きチキン(税込880円)の2種類(写真はセブンの商品ではなくイメージです) 発表されたラインナップはマルゲリータ(税込780円)と照り焼きチキン(税込880円)の2種類(写真はセブンの商品ではなくイメージです)
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「セブンイレブンの宅配ピザ事業」について。

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セブンイレブンが自社サービス「7NOW」を通じた宅配ピザ事業への参入を発表した。すべてを飲み込んできたコンビニは、ついにデリバリーピザの分野にも手を伸ばした。「7NOW」を知らない読者もいるだろう。配送料金は必要で、最低注文金額は税込1100円だが、朝から晩までコンビニ店内の商品を配送してくれる。

ピザもすでに試験導入されていたが、全国200店舗に拡大。ラインナップとして、マルゲリータ(税込780円)と照り焼きチキン(税込880円)が加わる。店舗のオーブンで焼くようだ。ピザ1枚では最低金額に届かないので2枚にするか、他商品をついで買いする必要がありそうだ。

ちなみに、すでにセブンが販売している「金のマルゲリータ 176g」は税込581円で異常にうまい。それを袋から出して焼くわけではないだろうが、単純計算で焼き賃が+200円くらいか。そもそも「7NOW」の知名度はさほど高くなく、ピザ事業のおかげで人びとに知られることにもなる。

ところで、私は独身のときはコンビニで夕食を購入する機会があった。ただ結婚後は妻や息子や私が夕食をつくるため、スーパーに行くことはあってもコンビニへ行く機会が減った。

しかしピザならば面白さもあって注文するかもしれない。つまり「ファミリー層+夕食」という空白地帯を埋める可能性がある。しかも大手ピザチェーンの価格帯とくらべてかなりお手頃だ。「7NOW」では配達してくれる店舗の商品在庫も検索できるから、生活用品や飲料もまとめて注文するだろう。

さらに日中は日中で、大手ピザチェーンだけでなく、ファストフードデリバリーの需要も取り込もうとしているはずだ。人口減少と高齢化が進む日本では、何もしなければコンビニ事業が頭打ちになるのは明白。業界全体の売上は微増しているものの、店舗数は減少しているからね。

配達員の人手が確保できるのか、とか、セブンで冷凍ピザを買って自宅で焼けばいいだろ、とか、どうせドーナツ販売のように撤退するでしょ(一部では再販売)、といった意見は当然あるだろう。

しかしセブンはすでに配送事業を行なっており、そこにピザが加わったと思えばいい。冷凍保管しておけばさほど廃棄も多くないだろう。

そもそも新しい事業の試みは失敗が当然。やってみて収益と利益につながらないのであれば、撤退すればいいだけの話だ。自宅で焼けばいいといっても、それが面倒なときに頼むわけでね。

さらにいえば、地方部で買い物難民が増える中、デリバリーサービスの充実は基本的に正しい戦略のはずだ。

私は佐賀県出身だが、実家に帰ったときに知人宅(東松浦郡)へ行くと、ウーバーイーツも出前館も使えない。都心部は多くの選択肢があるだろうが、地方では一定の需要が見込める。知人宅で酒を飲んで、食べ物ほしいね、となったとき、クルマを運転するわけにいかないし、出前もないし......と困り果てる。

このあたりは読者の居住地により感想が異なるだろう。なお私の会社はセブン&アイグループ本社の近くなのに、当稿執筆時点で宅配ピザの対象地域外だ。自宅も対象外だった。あとは味しだいか。セブンはキッサ(喫茶=コーヒー)に続いてピッツァも奪取なるか。

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坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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