昨年5月に新型コロナが5類に移行し、以前ほどとまではいかなくとも、取引先との会食や社内飲み会が復活している。今こそ鈍ったスキルを取り戻せ! 迷える社会人のリアルなお悩みをふたりの飲み会マスターにぶつけてみた!
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■<社内飲み会編>店選びで重視するポイントは?
ストレス発散だけでなく、情報交換をしたり人脈を広げるのにも有効な社内飲み会。学生時代から面倒な幹事を率先して引き受け、〝幹事マスター〟の異名を持つ映画ライターのチェ・ブンブンさんにアドバイスをもらった。
Q 社内飲みの幹事を任されました。気をつけるべきポイントは?(26歳・メーカー)
A 席を気軽に移動できるレイアウトの店を予約することですね。交流が生まれやすいですし、話題が尽きてマンネリ化してしまうテーブルを減らすためにも、動線確保は大切です。
立食式ならビュッフェ台をいくつか設置して行き来しやすいようにしましょう。着席型なら立ち上がりにくい掘りごたつは避ける。幹事が盛り上げなくても、参加者が活発に交流できる設計をするのがポイントです。
Q 自分が幹事の飲み会で静寂が訪れるのが怖いです。飲み会を盛り上げる方法は?(30歳・医療関係)
A 定期的に席替えすると解決できます。
どの飲み会も、最初の30分は乾杯だったり料理が来たりで間が持つんですよね。1時間後くらいが分かれ目で、盛り上がっている卓とそうでない卓がある。
ここで席替えが有効です。例えばテーブルがふたつあったら通路側の人たちを入れ替えればいい。なお、くじ引きを用意しておくと盛り上がるのでオススメです。
Q 同期の飲み会に参加して株を上げるにはどうすればいいですか?(28歳・IT)
A これも幹事を引き受けちゃうのが最も手っ取り早いでしょう。感謝されるのはもちろん、会話が苦手な人でも、幹事になると飲み会中に周りから話しかけてもらう機会が増えるからです。飲み会が苦手な人、内向的な人にこそ勧めたいですね。
Q 社内に仲良くなりたい人がいます。あまり近い関係性ではないのですが、どうしたら飲みに行けるでしょうか?(36歳・メーカー)
A これはけっこう難しいですね。特に異性の場合は注意。まずはその人がよく一緒に仕事をしている人とか、仲が良さそうな人と接触を試みる。そこでまずは3人以上でのランチに誘うことですね。
飲みだと、仕事が終わって疲れている中で時間とお金を割いてもらうことになるので、かなりハードルが高い。まずはランチという低いハードルから徐々にステップアップさせていく戦略がオススメです。
■後輩と飲むときの鉄板の話題は?
Q 上司や同僚からの飲み会の誘いを、角が立たないように断る方法はありますか?(32歳・IT)
A オススメの言い訳はダイエットか節約です。ただ、全然行かないというのはリスクになるので個人的にはオススメしません。特に会社の飲み会となると、どうしてもお酒が入るのでいない人の話になりがちで、悪口に発展しやすい。だから、行かないせいで自分の株が下がるケースがあるんです。
少し話がそれますが、社内飲みには大きく「情報収集」「フラグ立て」「政治」の3つの役割があります。情報収集は、ランチや業務時間中には出てこない、酒の力によって出てくる情報を仕入れること。フラグ立ては、進めたいと思っているプロジェクトなどを軽く打診し、相手の反応を見ることを指します。
人から持ちかけられることもあるので、やりたければ後日主体的に動く、やりたくなければ放置するといった動きが求められます。最後に、政治は最初に言ったとおり、飲み会に出ることで共通の敵にされることを回避する役割ですね。
これらの役割を考えると、下戸だったり人付き合いが苦手でも、行ったほうがメリットが大きいと思います。せめて重要なプロジェクトが終わったときや送別会など、大事なときだけは行って、そこではいろんな人に声をかけておきましょう。
Q 苦手な先輩の近くや、つまらない席になることがあります。自然に移動するにはどうすればいいですか?(27歳・金融)
A 移動するなら、お酒がなくなって交換するタイミングです。かつ、近くの人がトイレに行っているときに「〇〇さんに挨拶してきます」とひと言添えられたら自然。このタイミングを逃さないために、酒量をコントロールしておくことをお忘れなく。
そもそも、最初の座席選びの時点で命運が分かれます。個人的に最も選んではいけないのは壁際の端の席。一番移動しづらく、面白くない人に周りを固められたら最後です。ベストポジションは、幹事の向かい側。幹事と向かい合えば話を振ってもらえる可能性が高いからです。
さらに幹事はだいたい中央通路側にいるので、自分も中央付近に座ることになり、左右に形成されるグループの中から面白い話を選んで参加することが可能です。
ただ、ベストポジションだけになかなか座るのが難しい席だったりします。早く来すぎると奥へ詰めなきゃいけないですしね。不安だったら、できるだけ移動しやすい通路側を確保するのがベターです。
Q 後輩との飲み会では何を話せばいいですか?(38歳・広告)
A プライベートとパブリックを分ける若い世代に対しては、相手の趣味の話題もあまり盛り上がらない可能性があります。
無難な話題は、コロナ禍の過ごし方。彼らの学生生活はわれわれにとっては未知なわけです。当たり障りもないですし、掘り下げやすいと思います。
■<ビジネス会食編>コロナ禍で変わった会食の新常識
続いては、取引先にも上司にも気を使うがゆえ、多くのビジネスパーソンを悩ませる会食について。『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』(ダイヤモンド社)の著者・yuuuさんが答えてくれた。
Q コロナ禍が終わって初めて、取引先との会食のセッティングを任せられました。令和になってマナーも変わってそうだし、準備の段階からポイントがわかりません。(30歳・メーカー)
A 最近変わったことといえば、時間の前倒しです。18時開始20時解散なんてザラで、某大手商社は社外の会食でも22時に完全解散ルールを設けています。2次会に行く機会も減りました。相手の会社に時間のルールがあるかどうか、事前に確認しておきましょう。
幹事の立ち回りで最も重要なのは、事前に目的を上司とすり合わせておくことです。オススメは「会食選定基準書」を作成して、上司にOKをもらいに行くことです。
予算や目的、参加者の人数、希望エリア、希望料理ジャンル、お店の雰囲気、個室の有無、苦手な食べ物やアレルギーの有無などを記載します。これがあれば、幹事の仕事は8割終わったも同然です。
会食はトラブルが起きやすいんです。相手の嫌いなものやアレルギー食品が出てきたとか、予算オーバーとか。事前に上司に確認しておくことが自分のリスクヘッジとしても重要ですし、何より参加者全員にとって良い会食にするために重要なポイントです。
通常の業務をこなしつつ幹事の準備をするのは大変だし、嫌がる若手も多い。だけどうまくこなせれば評価されるし、むしろ割に合った役回りかなと思います。
Q 会食が始まってからも、幹事にできることってあるんですか?(28歳・医療関係)
A 幹事が必ずやるべきなのは予算管理。相手がそれなりの役職の方になってくると予算規模が上がり、そこそこいいお店を選びますよね。そうすると、どんなお酒を飲むかが要になります。
特にワインは要注意で、ボトルによって値段はピンキリ。飲み会の後半になってくると、自分の上司が予算を忘れて高いお酒を頼むことも。そこで重要なのが、お店を味方につけることです。スタッフさんにメニューを早めに下げてもらったり、予算内に収まるお酒だけを案内してもらうようにしましょう。
なお、私はビール2杯で限界を迎えるほどの下戸ですが、お店に事前に「アルコールを薄めてください」「ジンジャーハイをジンジャーエールに差し替えて提供してください」と伝えています。こうした工夫も、会食を成功に導くためには欠かせません。
■会食での爪痕の残し方
Q 会食中に商談を持ちかけて先方から嫌がられたことがあります。どこまでグイグイいっていいのでしょうか?(41歳・メーカー)
A 結論、ビジネスの話はしないほうがベターです。特にイエスかノーの判断を求めるのはNG。ビジネスの目的達成は会食の翌日以降が原則です。
会食中に何か結果を出したいのはわかりますし、私自身何度もやってしまいました。でも、お酒も入ってるし警戒されるしで、いいことがない。関係性をつくることに徹したほうが良いです。
Q 萎縮してしまい上手に話せません。上の世代の人たちにウケる話題はありますか?(24歳・金融)
A 若者らしい失敗談は鉄板です。内容は相手のキャラによりますが、お酒が大好きで昔ヤンチャしていたような人だったら、お酒の失敗談はウケがいいです。
真面目な人に対しては、ビジネス上のちょっとした失敗談くらいがいいでしょう。若い人が失敗談を話すと、上の世代はそれを上回る失敗談を披露したくてたまらなくなります。自分が面白い話をするのではなく、うまくマウントを取らせてあげるのがポイントです。
Q 会食では失敗を避けようとするあまり、自分の印象を残せずに終わります。上司や取引先からの評価を上げるコツはありますか?(30歳・広告)
A 前提として、予算マネジメントがしっかりしてる、気が使える、相手の話をちゃんと聞けるだけで十分です。若手だからといって面白いギャグや隠し芸でポイントを稼がなくても、無難に会を取りまとめているだけでかなり好印象なんです。
何かしら爪痕を残したいということであれば、会食は終盤になるとなぜか熱い仕事話をする時間帯が訪れます。ここで語れるビジネスに対する真摯な思いやエピソードを持っておくと、「こいつはアツくていいやつだ」と思われるのでオススメです。
あとテクニカルな部分では、プロフィールシートを事前に先方に送付しておくのもひとつの手です。「弊社から参加する人間について書いたので、ぜひ事前にお読みいただき、共通の話があったら振ってやってください」と添えて送っておく。
ここまでする人はあまりいないので、先方の印象に残ります。会食の序盤から会話が弾みやすいし、事前準備は面倒でもかえって得することが多いですよ。
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教えを実践して、飲み会をチャンスに変えよう!
●チェ・ブンブン
映画ライター。ブログ『チェ・ブンブンのティーマ』運営。記事の寄稿やイベントの登壇、配給会社でのコンサルティングなど映画業界で活躍の幅を広げる。映画関係者との会食も多く、そのほとんどで幹事を率先して行なうことから"幹事マスター"を自称する。noteで公開した『新社会人のための飲み会サバイバルガイド』では独自の切り口で飲み会を分析し注目を集めた。
●yuuu
会食専門家。新卒で大手広告代理店に入社。入社当時は"競合の回し者"と揶揄されるほどの落ちこぼれであったが、会食をきっかけに社内外の信頼を獲得。月に28回の会食をこなす中で身につけた体系的な会食ノウハウをまとめた著書『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』(ダイヤモンド社)は今年2月刊行以来大きな反響を呼んでいる。