祖業はお弁当のフランチャイズ(FC)店で、1988年にラーメン店に転換。実はコメダ珈琲店のFC店舗も運営している 祖業はお弁当のフランチャイズ(FC)店で、1988年にラーメン店に転換。実はコメダ珈琲店のFC店舗も運営している

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
ラーメンの値上げ(丸千代山岡家)

ラーメンの値上げが止まらない。店舗の倒産も止まらず、業界としては曲がり角を迎えている。こうした変革のタイミングは、投資先を探す好機だ!

助手 先日、近くのラーメン屋に行ったら、ラーメンが950円でした。去年から3回目の値上げですよ。

坂本 このところ光熱費や材料費、それに人件費まで高騰してるからねぇ。去年はラーメン店の倒産が過去最多だった。値上げも仕方ないよ。

助手 このまま値上げが続くようだとラーメン屋からは足が遠のくなぁ。

坂本 無理もない。調査によると、多くの人が許容できるラーメンの価格は700円台らしいから。

助手 となると、ラーメン業界は冬の時代に突入するんですかね。

坂本 確かに絶好調とはいえない企業も多いね。東北・関東を中心にあっさり系のラーメンを出す幸楽苑はコロナ以降ずっと営業赤字で、今期やっと黒字になるかどうか。客離れを懸念して値上げが後手に回ったほか、人手不足で短縮した営業時間を元に戻し切れていないのも響いた。

助手 値上げに加えて営業時間の問題まで。ラーメン関連の上場企業はしばらく投資対象になりませんね。

坂本 いや。関東と北海道を中心に豚骨醤油ラーメンの山岡家を展開する丸千代山岡家は、投資対象になりますよ。同社は2021年から毎年のように値上げしても業績は好調。直近でも7月に一部商品で値上げしましたが、8月の既存店月次は客数が前年同月比120.7%、客単価も103.7%と客離れはまったく起きてません。

助手 何があっても通い続ける熱烈なファンが多いんですかね?

坂本 半分当たりで半分ハズレ。味にほれるファンも多いけど、同社の特徴は「来店せざるをえない客」を狙う出店戦略です。

助手 来店せざるをえない客?

坂本 そもそも、東京に住んでいて山岡家って見たことある?

助手 そういえば、ないなぁ。北関東あたりにドライブに行くと見かけるイメージです。

坂本 そう。山岡家は地方の幹線道路沿い、とりわけ、広い駐車場を確保できる立地だけを選んで出店してるんです。だから23区内には店舗がひとつもない。

助手 主な客層はドライバー?

坂本 さらに言えばトラックのドライバーだね。24時間・365日止まらない物流に従事するドライバーは、顧客として計算が立ちやすい。しかも通るルートはそう変わらないので、気に入ればリピートしてくれます。だから山岡家は広大な駐車場のほか、シャワー室を備えたお店まで造って、物流ドライバーから選ばれるようにしているんです。

助手 シャワー休憩もどうぞ、と。

坂本 ええ。コロナ後は24時間営業を続けている飲食店が少なくなったから、物流ドライバーはもちろん地元の人にとっても貴重なお店となって客数アップにつながっています。いわゆる残存者利益ってやつです。

助手 ピンチがチャンスに! でも、肝心の味はどうなんですか?

坂本 味という土台があるから値上げできるんですよ。山岡家は味のブレをなくすため、FC展開をせずに直営店のみ。豚骨を各店舗で3日間もかけて炊いています。上場しているラーメン屋でセントラルキッチンじゃないのは同社くらいですよ。

助手 こだわりの味だから、値上げに動じないファンがつくんですね。

坂本 さらに、生物学的に脂が多くて味の濃い食べ物は習慣化しやすいんだけど、豚骨スープはまさにドンピシャ。この点でも、あっさり味の幸楽苑あたりに比べて断然有利だね。関西や九州ではまだまだ出店余地があるし、長期投資が面白いかな。

今週の実験結果 
「来店せざるをえない客」を狙う戦略は、唯一無二のポジショニングです!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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