社名の由来は、1926年にクラボウ(倉敷紡績)社長だった大原孫三郎氏がレーヨン生産のために設立したことから。配当利回りは2.7% 社名の由来は、1926年にクラボウ(倉敷紡績)社長だった大原孫三郎氏がレーヨン生産のために設立したことから。配当利回りは2.7%

『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!

今週の研究対象 
発電以外のヤシ殻利用(クラレ)

「マジックテープ」の登録商標を持つことでも知られる、繊維メーカーのクラレ。実はそのイメージを脱し、新たなドル箱事業を育てつつある。どんな新事業?

助手 前号で出た「ヤシの殻を巡って世界中で争奪戦が起きている」って話、投資のヒントになる気がするんです。もう少し教えてください。

坂本 あぁ、バイオマス発電の燃料として、パームヤシの殻が使われてるって話ね。バイオマス発電でつくった電気がカーボンニュートラルだとして企業に高く売れるようになった。それでヤシ殻の争奪戦になったわけ。

助手 パームヤシの殻って、従来はパーム油を採った後に残る産業廃棄物だったわけですよね。ゴミだったものが売れるとは夢のある話だなぁ。ヤシ殻を売って大儲けしてる企業に投資できませんかね?

坂本 残念ながら、ヤシ殻の販売が業績に直結する上場企業はないよ。ただ、ヤシ殻を使った製品で業績を伸ばせそうな企業はある。

助手 バイオマス発電以外にもヤシ殻の需要があるってことですか。

坂本 そう。高温で炭にするんです。

助手 この時代、炭ですか?

坂本 今だからこそです。現に、クラレは活性炭事業の営業利益が直近3年で3.4倍になっています。もはや同社成長の牽引役ですよ。

助手 ん? クラレって化学繊維のメーカーじゃなかったですか?

坂本 よく知ってるね。日本初の合成繊維「ビニロン」を生産したのが同社。ただ、時代の流れで合成繊維が下火になってきたのを受けて、その技術を応用した合成樹脂や化学品、フィルムや活性炭に手を広げてきました。活性炭は、繊維の生産時に高温で加工する技術を応用したものらしい。2018年にアメリカのメーカーを買収して、今では世界最大の活性炭メーカーでもあります。

助手 とはいえ活性炭なんて、何に使うんです?

坂本 もちろん空気や水の浄化ですよ。活性炭の微細な穴が、液体や気体の汚染物質を吸着する。

助手 意外性がないなぁ。本当に伸びてる事業ですか?

坂本 ええ。昨年、アメリカで水道水中のPFASについて厳格な基準が設けられたからね。PFASの除去に活性炭が使われるんです。

助手 PFAS?

坂本 発がん性の可能性が指摘されている有機フッ素化合物という物質のこと。アメリカの基準はプールの水20杯中に1滴のPFASが入っていても許されない厳格なもので、既存の浄水場の仕組みでは難しいから、新たに浄化処理が必要になる。そして、経済性を考えると活性炭での浄化が最適なんです。

助手 安いってことですか。

坂本 安いし、再利用できるから環境負荷も少ない。活性炭の有効期限は半年から2年ほどですが、熱処理することで再度利用できるようになるんです。もちろん、最初に納品するときも再処理するときも、クラレは儲かります。

助手 儲かるタイミングが何度もあるのはいいですね! ただ、入れ替え時に別のメーカーに切り替えられやすいってことにもなりませんか?

坂本 そこは大丈夫。水は口に入るものだから、浄化に使う活性炭も由来が重要です。だから、初回納入メーカーからの切り替えは起こりにくい。

助手 なるほど! 初回納入時にクラレが勝てるかが問題ですが......。

坂本 クラレは浄化槽やタンクなどの機器も製造しているから、発注側が一気通貫で任せられるのが強い。ほかのメーカーは小規模でクラレの優位は揺るがないと思う。株価も適正だし、長期で投資したい銘柄です。

今週の実験結果 
活性炭を用いた水の浄化事業が将来性十分です!

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坂本慎太郎

坂本慎太郎さかもと・しんたろう

こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
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