『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象
信号機(京三製作所)
今回のテーマは信号機。当たり前のように街にあるけど、そういえばどこが造ってるんだ? 実はこれも、上場企業が手がけてるんです。ビジネスモデルや強みは?
助手 今週は出張で札幌に来ています。まさか、ひと晩で10㎝以上雪が積もるとは。今回、個人的には、雪国の信号を観察できたのが収穫でした。
坂本 雪が積もりにくいように、信号が縦に配置されてたり、前傾させたりしてるってヤツね。
助手 あ、ご存じでしたか。
坂本 もちろん。最近は信号もLEDになって、本体にヒーターを仕込んだものもある。従来の信号は白熱灯からの熱で雪が勝手に溶けたけど、LEDは省エネの代わりに発熱が少ないからね。
助手 信号も進化してるんですね。技術的には成熟していて、付加価値も低い製品ってイメージでした。
坂本 そんなことないよ。信号ってのは、街で見かける「信号機」のほか、交通管制システムや信号制御機、伝送装置なんかの複雑な組み合わせで成立する。大手の信号機メーカーは信号の仕組み全体を手がけているから技術力が高いし、それを横展開して世界中で稼いでますよ。
助手 かなり意外です。
坂本 例えば、京三製作所は自動列車停止装置や運行管理装置、信号保安装置などの輸出が好調です。特にインドでは電子連動装置が国鉄の900駅以上で導入されていて、今後の受注拡大も見込める。
助手 信号のメーカーが、鉄道関連までやってるんですか。
坂本 むしろ、大手信号会社は列車保安装置の開発から交通信号に手を広げたパターンが多いよ。保安装置も信号も、キモは正確で安定したシグナルを送る技術と、さまざまな装置と連携する技術で、共通点は多い。京三製作所も国産初の踏切警報機を開発したりと、戦前から鉄道関連に強かったんです。ちなみに同社は、1930年代にトヨタと共同で「京三号」という小型トラックを開発・量産した歴史もあって、技術力の高さには定評があります。
助手 自動車まで造ってたとは。当時としてはずいぶん野心的な挑戦だったんじゃないですか?
坂本 そうだろうね。投資先を選ぶ上で「社風」を検討することは、けっこう重要だと思うんですよ。フットワークが軽くて挑戦が許される社風なら、追い風が吹いている分野に進出して業績を拡大できるかもしれない。逆に、ピンチになったら素早く撤収して傷口を最小限にできる可能性がある。
助手 なるほど。京三製作所は歴史的には挑戦が許される社風っぽいですね。海外の鉄道関連以外で、追い風が吹いてる分野での展開は?
坂本 産業用の電源装置かな。信号で培った安定的な電源供給の技術を応用したものです。特に、半導体製造装置用の電源装置は激アツなはず。
助手 それはなぜ?
坂本 生成AIやデータセンター向けの高度な半導体の需要が高まっているのがひとつ。加えて、昨年はダブついていた汎用的な半導体の在庫もそろそろ払底する。となると当然、製造装置の市場も活況になります。そして京三製作所は、半導体製造装置向けの高周波電源を供給可能な、世界に数社しかないメーカーのひとつなんですよ。足元で受注残(納入してない受注)も積み上がっているようだし、期待できると思います。
助手 確かに最近、半導体関連の話題を聞かない日はないですもんね。
坂本 ええ。PERは7.5倍で、半導体関連と考えれば割安。業績に季節性があって、下期に大幅な上積みが見込める。十分投資できますよ。
今週の実験結果
知られざる半導体関連銘柄でもあるんです!